Hondaの安全運転普及活動最前線

交通事故死者ゼロへ Hondaの安全運転普及活動最前線

交通事故ゼロの社会を目指して、Hondaは「人の能力」「モビリティの性能」「交通エコシステム」という3つの要素を進化、組み合わせることで安全を実現させようとしています。そのひとつに、1960年代に白バイ隊員に向けて始まった安全運転普及活動があり、現在は企業向け研修や一般ユーザー向けスクールなど、幅広い層を対象に参加体験型の安全教育を実施しています。Hondaの「安全運転」への理念を最前線で届けている交通教育センターレインボー埼玉に、その活動に込めた思いを聞きました。

運転を変える安全教育は人から人へ安全の手渡し

「交通教育センターレインボー埼玉のインストラクターは、Hondaのインストラクター資格の認定を受けるのに加え、レインボー独自のインストラクタースキルを備えています」

指導能力の向上のために随時研修を行い、交通安全教育のエキスパートと呼べる人材育成を進める理由を、交通教育センターレインボー埼玉の鈴木所長はこう語ります。

「安全教育というのは、やはり人から人へ、情熱も含めて伝え渡していかないと、成立しないんですよ。口だけで『スピードを出すと危ない』と言っても、その人の運転は変わりません。インストラクターは受講者に『この人の言うことなら納得できる』と思ってもらえるようなスキルと人格を備えていないと、上辺の交通安全教育だけで終わってしまうのです」

2019年から現職を務める鈴木所長自身も、長年、インストラクターとして活躍してきました。1988年の入社当時から、Hondaの安全運転普及本部と連携したさまざまな取り組みに尽力。いまや申込みは抽選方式というほど人気のライディングスクール「HMS(Honda モーターサイクリスト スクール)」の受講内容の改良や、Hondaのインストラクター認定制度の審査基準の設定にも携わってきました。

「いまでは『抽選がなかなか当たらなくて参加できない』というお声をいただくHMSですが、私が現場で担当していた当初は、定員に満たないのが当たり前だったんです。90年代半ばに、HMSの受講者数を倍増させようという安全運転普及本部の方針を受けて、現場のインストラクターたちで工夫しながら、堅苦しさをなくし、楽しみながら学べる内容をつくっていきました。企業向けの研修も同様で、もっと伝わりやすい内容を、もっと安全への意識が高まる内容をと、プログラムをどんどんアップデートしていく意識でずっと取り組んでいましたね。その後も、それまで書面化されていなかったレインボーでのインストラクター育成内容をマニュアル化したり、Hondaのインストラクター認定制度の成立にも関わったりと、技術と知識において、一定以上のレベルを満たしたインスクラクターを育成できる仕組みづくりにも取り組んできました」

交通教育センターレインボー独自の「スーパーインストラクター」認定制度

現在、Hondaの安全運転普及本部が認定するインストラクター資格は「アシスタントインストラクター」、「インストラクター」の2段階。実技と知識の試験で、それぞれに設けられた基準ラインの合格者のみが認定されます。さらにレインボーでは、「スーパーインストラクター」を目指す独自の認定制度を設定。運転スキル、指導スキル、仕事の質を、他者評価も交えてより厳しく評価する測定テストを年に2回実施し、10段階の評価基準から、つねに自身の現在の指導レベルを可視化できる環境を整えています。

最も難しい「スーパーインストラクター」のスキル検定1級ともなると、二輪ユーザーには例えばおなじみの「1本橋」の通過タイムは、120秒以上であることがクリア基準。大型自動二輪免許取得時の合格タイムが10秒以上であることを考えると、この一例からも、スーパーインストラクター1級のスキルの高さがうかがえるのではないでしょうか。

「100名以上いる全国の交通教育センターレインボーの社員の中でも、2023年度の1級到達者は4名だけ。じつは私も、インストラクター現役時代は1級レベルだったんですよ(笑)。1級レベルはかなりの難関ですが、我が社ではステップアップ研修や、インストラクター養成研修を継続して実施することで、社員全員のスキルアップ向上を後押ししています。こうした評価軸を定めることは、インストラクターのモチベーション向上にもなりますし、冒頭で申し上げたような、指導者として必要なスキルや人格の成長にもつなげられると考えています」

人と人との関わりから伝える交通安全教育を大切にしていきたい、という鈴木所長の思いは、Hondaの交通安全普及活動の理念ともつながります。

「Hondaの安全運転普及本部が発足した頃に、ある新聞広告を出したんです(※1971年3月、Hondaは全社を挙げて安全運転の普及に取り組む姿勢を社会に伝えるために、全国の主要新聞に掲載した全面広告のこと)。そこには、アポロ13号が奇跡の生還を果たしたときにNASAのコントロールルームを指揮していたルーニイさんと、本田宗一郎さんの対話が掲載されていたのですが、アポロ13号帰還の成功は、機械による自動制御に任せるのではなく、13号の飛行士たちと日常から親しくしていて、彼らをよく理解するルーニイさんたちが要所要所をコントロールしたことが大きかったらしいんですね。そのエピソードから、『機械が進んでも、人間が基本なのです』という宗一郎さんの考えを紹介し、『使う人とつくる人との間で温かい心が触れ合うことを基本姿勢として、今後の企業活動を実践する』というHondaの企業姿勢を示す広告だったのですが、その姿勢と精神は我々も引き継ぎ、大事にしているものです。それに、人に教えることによって、インストラクターが生徒さんに育てられていく面もあるんですよ。まず人と人のつながりがあって、初めて安全を伝えることができる。指導する側も日々成長していかなければいけないと思います」

自ら参加し、体験することで安全への意識が育つ

Hondaの安全運転普及活動は、「交通戦争」という言葉が生まれるほど、多発する交通事故が社会問題となっていた時代に始まりました。白バイ隊員への運転教育を土台にスタートした安全運転教育は、いまでは60年に迫る歴史を重ね、その教育内容も時代に合わせた進化をしています。

「安全教育がスタートした当初は、運転技能を上げることを中心とした教育でした。ですが、運転スキルだけでは安全運転は成立しないんですね。現在は、安全に走るために必要な技能を4段階に分けています(下表)。レベル1がまず運転スキル。レベル2が道路状況の把握・対応能力です。レベル3は運転する目的や、そのために選択する道路といった、運転に関わる生活面を考える力。そしてレベル4では、人生の目的や生きる力を高め、運転に大きく影響する感情コントロール能力の習得が必要です。この技能レベルは上位が下位を支配する関係性で、レベル1の運転スキルがどれだけ高くても、レベル2~4の能力が低いと安全には走れません」

さらには、特に若年層で増えている乗り物への興味がさほど高くないユーザーに向けた安全教育や、ハード面の進化を含めた車両のアップデートにも対応したカリキュラムなど、受講者に合わせて提供すべきプログラムも多様化しています。

「必要なレベルをどんなに知識として教え込んでも、受講者がその必要性を実感し、納得して学ばなければ成立しないのが、交通安全教育の難しさ。私個人としては、レベル3やレベル4のような運転心理のパートをどう伝え、どう身につけてもらうかが、今後はより重要になると考えています。人に安全を伝えるというのは難しい仕事ではありますが、例えばスクールや研修を1日担当したときに、受講された方が安全に対する意識を実感として受け入れて、決意を持って帰っていく姿を見ると、その都度、本当に良かったなと思うんですよ。何度もスクールに来ていただいた方が、レベルアップを実感して、しかも感謝してもらえたりすると、インストラクター冥利に尽きますしね。ただ、スクールに関しては、ときに受講者の方が望むものと、我々が提供したいものが違う場合もある(笑)。特にバイクのスクールだと、お客様は運転技術を習い、上手くなることがいちばんの目的だったりします。その場合、我々はもちろん技術も教えるんですけれど、最終的には、安全に走るための意識や知識、技術を掴んでもらえるカリキュラムを提供することを忘れてはいけないと、インストラクターにはつねづね言ってます。HMSは『Honda モータサイクリスト スクール』の略で、ライディングスクールではないんですよ。モーターサイクリストとして、運転技術も含めた安全への意識とスキルを磨き、長くバイクを楽しんでいただけるようなプログラムを提供することを大切にしています」

Hondaが掲げる「2050年にHondaの二輪車、四輪車が関与する交通死者ゼロにする」という目標に向け、交通教育センターの果たす役割はますます重要になるばかりです。

「我々の基本は、『人から人への手渡しの安全』と、『危険を安全に伝える』参加体験型の実践教育にあります。ただ知識を伝えるだけでは安全教育は伝わらないもの。講習を通じてちょっとヒヤっとする瞬間を体験してもらったり、自分の感情が動いたときに、意識の変化は訪れるのです。これからも交通教育センターレインボーはHondaの安全運転普及活動の実戦部隊として、より広く、より多くの方が自分の運転能力を理解し、安全な運転ができるよう、さまざまな体験を通じた実践的な安全教育をお届けしていきたいです」

交通教育センターレインボー埼玉
鈴木隆司所長

Topics海外での活動
企業・団体の交通安全への取り組み評価指標「FIA RoadSafety Index」において最高ランクの「3スター」を獲得

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