中心視と周辺視野

視覚と右直事故を考える 中心視と周辺視野

人間の視覚には中心視・有効視野・周辺視野というものがあり、実は、自分が思っているほどには周囲が見えていないことがわかっています。では、視覚は運転にどう影響するのでしょうか?

人間の眼は目の前の状況を意外なほど捉えられていない

人間の眼は目の前の状況を意外なほど捉えられていない

上の画像のシーンの場合、人間が細部まできちんと見ることができるのは、下の画像のように、一部に限られている。

人間の眼は目の前の状況を意外なほど捉えられていない

当たり前のことですが、我々は周囲の状況を把握するために、多くの情報を視覚から得ています。運転しているときも、対向車や歩行者がいるかどうか、他に危険はないか、眼で確認していますよね。ところが、人間の眼は、カタチや色などがハッキリ認識できる中心視の領域はごくわずかで、外側である周辺視野にいくほど、視力が下がっていきます。

また中心視ほどではありませんが、必要なものを識別できる有効視野は、注意が惹きつけられるものがあったり、走行速度が上がると狭くなってしまいます。

例えば右折待ちの際には通り過ぎる対向車、右折する進行方向に視線や注意を向けています(中心視で捉える)。逆に、対向車の後方にいるバイクの存在は周辺視野に入っているため、認識しづらいです。このとき、ドライバーにとってはバイクが周辺視野から有効視野に入ってくる、つまり突然現れることになり、いわゆる右直事故につながりかねません。

見えている範囲はとても狭いことを踏まえて、中心視で危険を見つけることが事故を回避するために重要になるのです。


文字まで判別できる中心視の範囲は極めて狭い

文字まで判別できる中心視の範囲は極めて狭い参考:SAFETY DRIVING 四輪テキスト(指導者用)

人間の視野は左右の眼を合わせると180度以上あります。 片眼の視野は鼻側に約60度、耳側に約100度、上方向に約60度、下方向に約70度と言われています。その中で、標識の文字を読むなど、モノのカタチや色などがキチンと認識できる範囲を中心視と言い、わずか1〜2度ほど。中心視のまわりの必要なものを識別できる範囲、有効視野は左右に35度ほど。その外側である周辺視野では、カタチや色などをハッキリと認識することはできません。また、有効視野は速度が上がったり、トラックなどの大きなモノに注意を惹きつけられると、狭くなってしまうことがわかっています。

右折シーンでドライバーに見えているもの、いないもの

右折待ちで対向車2台(クルマとバイク)が50mの間隔をあけて、60km/hで直進してくるシーン。
右折待ちドライバーはどこが見えて、どこが見えていないがゆえに、右直事故が起こってしまうのでしょうか?

やってくる対向車に焦点を当てる
当然、目前に迫る対向車を確認しています。
しかし、後方のバイクは認識できる視野に入っていません。ましてや、認識していても、バイクは車体が小さいため、より遠くにいるかのように見えてしまうのです。
やってくる対向車に焦点を当てる

ここから 0秒ここから 0秒やってくる対向車に焦点を当てる

対向車が通過、視線は進行方向に
対向車が通り過ぎるのに合わせて、視線は進行方向(右側)に移動してしまうため、左からやってくるバイクは中心視に入らず、認識できていない、もしくはまだ距離があるはずだと思い、注意が向けられていないことが多いのです。
対向車が通過、視線は進行方向に

1秒

突然視界にバイクが現れる!
60q/hで走行する場合、50m進むのに要する時間は約3秒。対向車が通過後、右折を開始しようとすると、その間に後方にいたバイクは目の前に迫ってきます。右折を焦らず、対向車を確実に中心視で捉えて下さい。バイクは車体が小さいので遠くにいるように見えてしまうため、想定よりも早く交差点に進入してくることも、頭に入れておきましょう。
突然視界にバイクが現れる!

ここまでが3秒間ここまでが3秒間突然視界にバイクが現れる

取材協力:鈴鹿サーキット 交通教育センター


右直事故を避けるための危険予測
中心視の使い方

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