有那さんインタビュー

あの人に聞く! クルマ&バイクライフ バイクに乗れば、
新しい自分に出会える予感がしました
有那さんインタビュー

ライダー歴6年目にして、3回目の日本一周中の有那さん。女優として活動しながら、全国をバイクで旅することに熱中している理由は、バイクを通じて、多くの人と楽しい気持ちを共有したい! という熱い思いにありました。

最初は大型二輪免許が
あることも知らなかった

 全国各地をバイクで旅する模様を発信するSNSが人気となり、現在の総フォロワー数は10万人を超える有那さん。「バイクに乗り始めてから人生が変わった」と感じているライダーは多いだろうが、26歳にして3回目の日本一周に挑戦中の有那さんも、バイクと出会ったことで人生が大きく変化したひとりだ。

 「バイクに乗る前は人とコミュニケーションを取るのが苦手な引きこもりで、人に頼ったり、甘えたりもできない性格だったんです。でもそんな現状を打破したい気持ちと、何か新しいことにチャレンジしたいという2つの気持ちをずっと持っていて。どうしたらそれを実現できるか考えた時に、バイクが思い浮かんだんですね。バイクって、ヘルメットを被ると1人の世界じゃないですか。そこが自分に向いてる気がしたし、バイクなら、自分の力で新しい道を切り開いていける気がしました」

 有那さんは大学時代から、白血病・難病に苦しむ方々や子供たちをサポートするボランティア活動を続けている。参加する活動団体は、急性骨髄性白血病で急逝した歌手・本田美奈子.さんの想いを受け継いで設立されたもので、その縁から、生前の本田さんの活動を遡ってファンになり、人生の指針ともいえる言葉に出会ったそうだ。

 「私は、本田美奈子.さんの『あなたはその命を輝かせるために、生まれてきたのだから』という言葉がすごく好きなんです。でもこの言葉に出会った時は、まだ自分の好きなものすらなくて。自分の命を輝かせるために、新しいことにチャレンジしてどんどん前に進んでいきたい。そのツールとして、バイクは最適だったんです」

 二輪免許を取得したのは、地元・京都の大学に通っていた20歳の頃だ。それから約6年。現在は日本中をバイクで旅するだけでなく、バイクイベントにゲスト出演したり、全日本ロードレース選手権に参戦中のチームにスタッフとして参加したりと、バイクによってまさに新しい世界が広がった。

 「私は京都出身なんですけど、観光地が多いので、バスとか公共の交通機関に乗るのが結構大変なんですね。なので、二輪という交通手段がわりと身近で、私も大学には原付で通っていました。でもその頃は本当に“移動の足”という感覚で、初めて“大型二輪”の存在を知ったのも、二輪免許を取ろうと思ってからなんですよ(笑)」

 クルマの免許もない状態からいきなりの大型二輪免許への挑戦だったが、特技のダンスで鍛えた身体能力の高さもあってか、教習時間を一度もオーバーすることなく自動車学校を卒業。無事に大型二輪免許を取得してすぐに購入したのが、初めての愛車であり、いまなお乗り続けているホンダのX4だ。

 「最初からX4にこだわって探したわけではなくて、せっかく大型バイクの免許を取ったのだし、“リッター超え”という言葉に憧れがあったんです(笑)。いろんなバイク屋さんを見た中で、足着きの良さや、またがった時の『なんか馴染むかも』って感覚が購入の決め手になりました。初めてX4で走った時のことですか? めちゃめちゃ覚えてます! 納車日にバイク屋さんに取りに行って、家に帰るには、駐車場に面した片道1車線の狭い道路を左折して、すぐの信号をまた左折だったんですよ。お店の人には『最初の左折でコケる人が多いんですよ』って言われるし、とにかくめっちゃ怖くて。そこから自宅まで10kmもなかったんですが、あの時の左折が、人生でいちばん覚えている左折かもしれません(笑)」

電子制御など最新技術が搭載されたスポーツバイクにも興味津々
愛車のX4は90年代のキャブレター仕様車なので、これまでインジェクション仕様の最新バイクに乗った経験がほとんどなかったとか。撮影したHonda Dream高槻では、電子制御など最新技術が搭載されたスポーツバイクにも興味津々。

ライダーとしていちばん
やってはいけないこと

 本州はもちろん、九州、北海道など全国津々浦々を共に走り、何度も日本一周に挑戦する相棒となったX4は、いまでは愛着を感じて手放せない存在となった。

 「がっつり長距離を走るようになったのは、ここ4年ぐらい。バイクに乗りはじめてから、自分の性格がどんどん前向きになって、日本中を走るようになりました。その中でも自分の価値観を変えられた経験があって、3年前だったかな? 初めて北海道に行った時に、オロロンラインを走ったんですよ。左は海、右は草原に挟まれた真っ直ぐな道が100km以上続く中を走ってた時に『世界って広いなぁ』と思ったんです。自分はちっぽけな存在で、世界はこんなに広い。人目が気になるとか、自分の悩みなんて全然大したことなくて、自由に自分らしい表現をすればいいじゃないかって思わされたのが、北海道でのバイク旅でした」

 そして、最初は自分の旅を記録するためになにげなく始めたSNSが、バイク旅が充実していくに従って、想像をはるかに超える人たちからの反響を得るようになった。すると有那さんの中に、自由に外に出られない環境にいる人たちに、自分のSNSを通じて何か笑顔につながるポジティブな気持ちを届けたい、という考えが芽生え始めたという。

 「私はボランティア活動を通じて、病院の無菌室から一歩も外に出られないこどもたちがたくさんいることを知りました。こどもたちに限らなくても、闘病中だったり、入院してたり、いろんな理由で思うように外に出られない人はたくさんいます。そういう人たちが、私のSNSを見て少しでも旅気分を味わったり、日本の美しい四季を感じたりしてもらえたらいいなって。実際、入院中の方から『一緒に旅してるような気分になりました』とSNSにコメントをいただくこともあるんです。〝人のために〟と言ったらなんだかえらそうだけど、自分が楽しんでいる姿を公開することで、その地域の良さや、日本の美しさを感じてもらえるきっかけになれたらいいな、と今は思っています」

 2021年に日本縦断したのを皮切りに、2022年には“全国制覇”を目指した日本一周で1万7240kmを完走。2023年には“47都道府県温泉めぐり”をテーマに掲げた日本一周を果たし、1万7612kmを完走した。そして今年から2025年にかけては、“全国のお祭りめぐり”をテーマにした日本一周に挑戦中だ。

 「旅のテーマを決めるのは、昔から目標を定めて達成することが好きだったから。温泉も、お祭りも、全国的に有名な観光地よりも、すごく良い場所なのに観光PRが苦手で、地元の人たち以外はあまり知らないような場所を探して行くようにしています。ネットの検索だけではわからないことも多いので、ルートや目的地の決定は、これまでの旅で親しくなった方たちやフォロワーさんからいただく情報が頼り。そうやって全国各地に実際にバイクで足を運んだから知ることができる、その土地ならではのグルメや地域文化が、私が感じるバイク旅の魅力であり、ここまでのめり込んだ理由でもあるので、今年はそうやって肌で感じた情報の発信をさらに充実させることが目標です」

 そしてもうひとつ、ツーリングをするうえで大切にしていることがある。それは「ちゃんと元気に家に帰る」こと。

 「だからこそ、自分が『危険だな』と感じた時はルートの途中でも絶対に止まることと、疲れたり、時間が足りなくなりそうな時は、迷わず予定を変更する勇気を持つようにしています。じつは私は以前、一緒に走っていた仲間が事故に遭って、不幸な別れ方をしてしまった経験があるんですね。バイクは生身で乗るものだし、どちらが悪いとか正しいとかは関係なく、事故で痛い目を見るのはライダー側であることがほとんどです。私も含めて、すべての人には家族や仲間、友人がいて、自分が無事に帰ることを待ってくれている。待ってくれてる人たちを悲しませることは、ライダーとして一番してはならないことだと思うし、自分も日頃から命を守る運転を心がけたいと思っています」

 SNSなどで自身が訪れたツーリングスポットを紹介するときは、必ず二輪駐車場の有無を明記するようにしているのも、安心してバイク旅を楽しむことができるように、という配慮からだという。

 「駐車場情報を知らないと、目的地付近でバイクを停められず、結局Uターンして戻るパターンが多くなるんですよ。どこにバイクを停められるかの情報を書くことで、ライダーが道に迷ってあせる事態をちょっとでも少なくできたら、って気持ちがあります」

新しいバイクにもいろいろ乗ってみたいです
「愛車に愛着はあるけど、新しいバイクにもいろいろ乗ってみたいです」と有那さん。とはいえ、いまいちばん気になるホンダ車はなにかを尋ねると、やはり旅バイクに最適のCB1300SBだとか。

日本中を走り続けて
伝えたいこと

 バイクで旅を続けることは、有那さんにとってもはやライフワークだ。加えて、全日本ロードレース選手権や鈴鹿8耐といった二輪レースの魅力を知ってからは、応援するライダーのチームを手伝いたいと飛び込みで交渉。スタッフに加わって少しでも役に立ちたいと、MFJ公認のピットクルーライセンスを取得した。さらにツーリングの合間には、旅の途中で出会った米農家さんとのご縁から始まった“米作り”にも熱心に取り組んでおり、大型の除雪機やトラクターを運転できるようにと、大型特殊免許も取得したという。

 「バイクに乗り始めて、新しいことへの挑戦がさらに大好きになりました。全国のお祭りをめぐる日本一周が達成できたら、その次は、いろんな地域のライダーさんたちと走ることをテーマにした日本一周もやってみたいです。人見知りだった頃の私からは想像もつかないけど、“バイク”という共通の趣味があれば初対面でも話しやすいし、ライダーさんって温かい人が多いように思うんですよ。いつか海外も走ってみたいですし、SNSでは日本各地を旅する様子を伝えることにプラスして、もっとサーキットやレースに興味を持ってもらえるような発信を増やしたいんです。
バイクって、五感を使う乗り物じゃないですか。どこにでも行けるし、作りものじゃない風や匂いを、自分の肌で感じられる。季節や天候に左右される不便さはあるけど、そこが良さでもあるんですよね。たとえ高速道路でめちゃめちゃ雨に打たれても、無事に帰ることができれば、後から笑い飛ばせる思い出になる。バイクに乗ってると、大げさでなく「私、生きてる!」って感じる瞬間が多いんですよ(笑)。それに私は、自分の身体とバイクが一体となる感覚が好きなんです。もっと多くの人にバイクのすばらしさを知って欲しいので、少しでも興味がある人には『まず、挑戦してみて!』と伝えたいです」

自分もちゃんと着けるよう意識しています
バイクの死亡事故での損傷部位は頭部と胸部で約68%にも上る。
「もっと多くのライダーに普段から胸部プロテクターを着けてもらえたらと思うし、自分もちゃんと着けています」

*警察庁「損傷部位別二輪車乗車中死者数(令和元年~令和5年合計)」より
有那さん
有那 ゆうな さん
1998年生まれ。京都府出身。女優。SNSを中心に全国各地をバイクで旅する様子を発信して人気となる。現在、Honda公式YouTubeチャンネルにて公開中の動画シリーズ『Find YOU SaftySense♪』に出演中。人生で最も大切にしている言葉は、2005年に逝去した歌手・本田美奈子.さんによる「あなたはその命を輝かせるために、生まれてきたのだから」。愛車はHonda X4。
Honda Dream 高槻
取材協力店 Honda Dream 高槻
国道170号沿い、高槻自動車教習所の真向かいという立地にあるのがHonda Dream 高槻。レンタルバイク「HondaGO BIKE RENTAL」も取り扱っているので、教習所からそのまま遊びに来るのも大歓迎。

大阪府高槻市春日町2-25
TEL:072-673-2523
営業時間:10:00~19:00
定休日:毎週水曜日、第2・3火曜日

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