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2023.06.22

ハローウッズの田んぼに住む水辺のハンター
「トウキョウダルマガエル」の姿を見てみよう!

奥山 英治 奥山 英治

ハローウッズ キャスト

奥山 英治

日本の田んぼに住む生きものたちの中でも、「トウキョウダルマガエル」は近年めっきり数が減っている生きものです。しかし今回、ハローウッズの田んぼで、その捕食シーンを映像に収めることができました。なかなか目にすることのできない貴重な映像を、ぜひご覧ください。

「トノサマガエル」とよく間違えられる
「トウキョウダルマガエル」

ハローウッズの田んぼには、主に6種類のカエルが生息しています。「ニホンアカガエル・シュレーゲルアオガエル・ヤマアカガエル・ニホンアカガエル・ツチガエル・トウキョウダルマガエル」です。今回取り上げたのは「トウキョウダルマガエル」ですが、皆さんはこの名前を聞いてもあまりピント来ないでしょう。でも「トノサマガエル」と言われたら「あ~、知ってる」と思うのではないでしょうか? 近年まで関東地方では「トウキョウダルマガエル」のことを「トノサマガエル」と呼んできたのです。

実は両者は別の種類です。トノサマガエルは日本のほぼ全域に生息していますが、不思議なことに関東地方には生息していません。一方、トウキョウダルマガエルは関東地方を中心とする東日本に生息しています。両者は別種なのに見た目がそっくりでなかなか判別できないため、関東地方の人々はトウキョウダルマガエルをトノサマガエルの仲間だと思ってそう呼んできたのでしょう。ちなみに両者の見分け方ですが、トウキョウダルマガエルの背中の斑点は独立してくっきりしているのに対し、トノサマガエルの斑点は歪んだり他の斑点とくっついたりしている点などが挙げられます。

田んぼから離れず、田んぼの生態系で重要な役割を果たす
「トウキョウダルマガエル」

トウキョウダルマガエルの繁殖期は4月から7月にかけてで、その時期のオスは冒頭の映像の後半にあるように、水面に浮きながら鳴き、メスを待ちます。そして交尾を行なったメスはたくさんの卵を田んぼの中に産みます。

田んぼに暮らすカエルの大半は、卵からオタマジャクシの間は、肺を持たずエラ呼吸を行なうため、水を張った田んぼが必要なのです。しかし成長してカエルになってしまうと、エラが無くなって肺ができ、肺呼吸となるため、水中から出て田んぼ周辺の陸地や山の中で生活するようになります。このように大半のカエルはいつまでも田んぼの中にいるわけではないのですが、トウキョウダルマガエルは成長しても田んぼの水辺から離れず生活しています。そういう意味で、正真正銘「田んぼのカエル」といったところです。

田んぼは多くの生きものたちにとって生きていくために大切な環境となっていますが、トウキョウダルマガエルをはじめとする田んぼのカエルたちは、稲の害虫であるイナゴやヨコバイなどの昆虫を食べたり、逆に田んぼへやってくるヘビや鳥類、哺乳類の餌になるなど、田んぼの生態系の中で非常に重要な役割を担っています。

近年、カエルなど田んぼに住む生きものが減ってきています。効率よく稲の害虫を駆除するために田んぼに農薬を撒くと、稲の害虫だけでなく虫類全体が減ってしまうため、それらを食べていたカエルのエサが無くなり、カエルが減ってしまいます。するとカエルを食べていたヘビ、鳥類、哺乳類のエサが少なくなってしまうことになり、田んぼ周辺の生きもの全体に影響してしまうのです。

私たちは、田んぼとその周辺に生きる生きものの事をもう一度考え直さないといけない時期にきています。お米を作る田んぼと生きものを育む田んぼ、その両面をどう折り合いをつけていくかは、とても大きな問題です。ちなみにハローウッズの田んぼは無農薬でお米を育てているため、今でもトウキョウダルマガエルをはじめとする田んぼのカエルが多く生育しています。もちろんこれが絶対正しいわけではありませんが、生きものを大切にする田んぼの在り方を、多くの人々に考えてほしいと願っています。

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