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  • 2021.09.30

千差万別 クモの巣のなぜ?なに? 編

千差万別 クモの巣のなぜ?なに? 編

ハローウッズのスタッフにとって朝のフィールド点検は欠かせません。当番になったらいつもより早起きして、誰もいない早朝の森を異常がないか確認しながら歩き回ります。晴れて空気の澄んだ朝は心地よく、足取りも軽やかになります。そんなとき注意すべき存在が「クモの巣」です。不意に絡まると浮かれた気分は台無し。一瞬で現実へと戻されます。顔に糸が絡まったときの感情と言ったら……。そんなクモの巣ですが、種類によって形状は千差万別。デザインは巣ごとに唯一無二。今回はあまり知られていないクモの巣の魅力を紹介したいと思います。

境野 圭吾
ハローウッズ
キャスト境野 圭吾

クモの巣?それともクモの網?

建物の屋根下や道路の手すり、スーパーやコンビニの外壁など、私たちが暮らす場所の周辺には、いたるところにクモの巣が張られています。自宅の軒下や玄関にクモの巣を張られ、掃除で苦労した経験がある人もいるのではないでしょうか?

ご存知のように、クモは網を張ることで、そこにひっかかるエサを捕らえて採食しています。軒下や玄関に張られたクモの巣も光に集まる小さな虫を捕らえるためのものです。一般的にはそういったクモが張った網のことを「クモの巣」と呼んでいますが、じつはクモには網を張らない種類もたくさんいます。網ではない巣を作るクモや、葉っぱを丸めただけの簡易的な巣を作るクモなど、皆さんがよく目にする「クモの巣」とは違った巣もたくさん存在します。

正確には、住居や隠れ家としての「巣」と、エサを捕るためのトラップである「網」は区別する必要がありますが、その言葉の線引きを説明するのは難しいため、クモが糸で作った構造物を総称して「クモの巣」と呼ぶことも少なくありません。ここでも、それらをひとくくりにクモの巣として紹介していきます。

多種多様なクモの巣

クモの種類のうち半分ほどは、クモの巣を作らないと言われていますが、日本には約1,700種ものクモがいるので、クモの巣を作るクモは数百種類いることになります。また、クモの巣のデザインは種類ごとに異なるため、自宅や公園など身近な場所を探すだけでも、いろいろなクモの巣に出会うことができるはずです。ここでは比較的身近で、かつ特徴的なクモの巣をいくつか紹介します。

ジョロウグモ

木と草の間に大きな網を張ったジョロウグモ。手前がメス、奥の小さなクモがオス。

ジョロウグモ
ジョロウグモ

木と草の間に大きな網を張ったジョロウグモ。手前がメス、奥の小さなクモがオス。

都市部でも里地でも普通に見られるクモ。とても身近なクモで、巣を見かけたことがある人も多いはずです。目の細かい丸い網とそれを囲うように不規則な網を張っています。場所によっては1メートルを超える大きな巣を作っていることも。家主であるジョロウグモのメスは体が大きく目立つので、網より先にクモの存在に気づくことも多いです。

コガネグモのなかま

田んぼのイネに網を張るナガコガネグモ。網の中央には棒状の白帯がついています。

コガネグモのなかま
コガネグモのなかま

田んぼのイネに網を張るナガコガネグモ。網の中央には棒状の白帯がついています。

お尻が黒と黄色の縞模様をした中型のクモ。草むらや田んぼなどで丸い網をかけているのを見かけます。種類によって網の中央に白帯と呼ばれる白い飾りをつけます。一説ではこの帯が紫外線を反射することで昆虫を誘引していると言われています。必ずしもこの模様があるわけではなく、個体によっては飾りがない巣もあります。

オニグモ

軒先に張られた巨大なオニグモの巣。下側が極端に広くなっています。

オニグモ
オニグモ

軒先に張られた巨大なオニグモの巣。下側が極端に広くなっています。

夜にクモの巣を探すことはあまりないと思いますが、オニグモの巣は夜限定です。昼間は物陰に隠れていますが、夜になると大きな網を張ってガなどの夜行性の昆虫を捕らえます。基本的には丸い網ですが、下側の網がとても広く上側の網が狭い巣をよく見かけます。網の上でも重力はあるので、素早くたどりつける下側の網を広くしているようです。

ウズグモのなかま

石垣の間に張られたウズグモの巣。中央の渦巻きに体を細くしたクモが隠れています。

ウズグモのなかま
ウズグモのなかま

石垣の間に張られたウズグモの巣。中央の渦巻きに体を細くしたクモが隠れています。

名前の通り網の中央に渦巻き模様を描くクモ。コガネグモと同じで模様をつけることで昆虫を誘引していると見られています。模様もユニークですが、満腹時は渦巻きではなく直線型の模様をつけるらしく、その生態もじつにユニークです。石垣の間や木の根元など目立たないところに巣を張っていることが多く、公園で見かけることもちらほらです。

ゴミグモ

軒下に張られたゴミグモの巣。ゴミは目立つが、網の部分は糸が細く目立ちません。

ゴミグモ
ゴミグモ

軒下に張られたゴミグモの巣。ゴミは目立つが、網の部分は糸が細く目立ちません。

落ち葉などゴミが網につくとすぐに掃除するクモがいるにも関わらず、ゴミグモのなかまはワザと網の中央に「ゴミリボン」と呼ばれるゴミをひっつけています。ゴミは食べかすや脱皮殻を集めたもので、クモはゴミリボンの中に潜んでいます。これは、天敵である野鳥に見つからないための術と言われています。

クサグモ

植栽樹の表面を覆うように張られたクサグモの巣。雨上がりなどは水滴がついて、よく目立ちます。

クサグモ
クサグモ

植栽樹の表面を覆うように張られたクサグモの巣。雨上がりなどは水滴がついて、よく目立ちます。

庭木や公園の生け垣の表面を覆うようにネット状の網を張ります。これまで紹介してきたクモの網とは違い不規則な網が特徴です。クモ本体は厚く張られた網の内側に作ったトンネル内に潜んでいるため、一見すると家主不在かと思われがちです。

オオヒメグモ

玄関扉の隅に張られたオオヒメグモの巣。立体的で複雑な構造をしている。クモの後ろに見える丸いのは卵のう。

オオヒメグモ
オオヒメグモ

玄関扉の隅に張られたオオヒメグモの巣。立体的で複雑な構造をしている。クモの後ろに見える丸いのは卵のう。

人家の周りでよく見るクモで、玄関先やあまり開閉しない窓ガラスの隅っこに不規則な網を張っています。「オオ」と「ヒメ」という矛盾した2つのワードが共存したネーミングですが、大きくも小さくもない中型のクモです。不規則な網には、ひっかかった虫の食べかすがそのままついていることもあり、見た目から掃除されがちな存在ですが、家に侵入する虫などを捕まえてくれる益虫です。

ジグモ

木の根本に張られたジグモの巣。場所の好みがあるのか、複数の巣が隣接していることもあります。

ジグモ
ジグモ

木の根本に張られたジグモの巣。場所の好みがあるのか、複数の巣が隣接していることもあります。

木の根元や大きな石の地際に袋状の巣をつくります。多くの人が想像するクモの巣とデザインがかけ離れているためか「クモの巣です!」と紹介すると驚かれることも少なくありません。袋状の巣は地下部まで続いていて、クモは中で隠れています。地上部を獲物が通ると、袋ごしに噛みつき袋の中に引きづりこんでいきます。

オナガグモ

松葉になりきって糸にぶら下がりながらエサを待つオナガグモ。糸が数本しかないので、網はほぼ見えません。

オナガグモ
オナガグモ

松葉になりきって糸にぶら下がりながらエサを待つオナガグモ。糸が数本しかないので、網はほぼ見えません。

松葉のような姿でじっとエサを待ち続けるクモ。このクモの網は数本の長い糸だけで、その糸に粘着性はなく虫が引っかかっても捕まることはありません。この網はクモを捕獲するためのトラップで、ほかのクモがこの糸の上を通るとその揺れを感知して素早く襲いかかります。ぜひ見てもらいたいクモですが、擬態の上手さは随一で探すのは一苦労です。

紹介したクモの巣はほんの一部に過ぎず、これ以外にも驚きの形状や仕組みをもつ巣や網がたくさんあります。また、巣や網を作らないクモにも個性的な生き様の種類がいて、クモは知れば知るほど奥深い生物です。クモの名前を調べることは専門家でも難しく、気にしすぎると最初からくじけてしまうので、まずは難しいことは考えず、目の前のクモの巣のデザインに注目してみることから始めてみましょう。

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ハローウッズは42ha(東京ドーム約9個分)の広さがあり、いつでも、誰でも、思いっきり遊べる元気な森です。人と自然が楽しくかかわり合い、自ら体験し、発見できるプログラムをたくさん用意して、皆さんをお待ちしています。

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