青空に入道雲が映える季節になってきました。朝から気温がぐんぐん上がり、もう夏本番!
待望の夏休みを迎えたものの、今年は新型コロナウィルス感染症の影響で、海や川、山などに気軽に行くことができない状況だと思います。でも、自宅の周りにも自然や生きものを感じる場所はいっぱいあるはず。気持ちを切り替えて、そうした場所を探してみるのも面白いですよ。もちろん新型コロナウィルス感染症対策はしっかりと、そして事故やケガ、熱中症には十分気をつけて、皆さん有意義な夏を過ごしてほしいですね。
比較的民家に近い場所で見つけることができる生きものとして、「イモリ・ヤモリ」を思い浮かべる人は多いでしょう。どちらも細長い身体に短い手足、そして長い尻尾を持つ、トカゲに似た生きものです。家の壁や網戸にヤモリがへばりついていたり、近所の小川をイモリが泳いでいたり、そんな光景が当たり前だった時代が、かつての日本にはありました。
しかし「イモリ」と「ヤモリ」の生きものとしての違いをちゃんと知っている人は少ないかもしれません。偶然見かけても、「あれ? イモリとヤモリ、どっちだろう?」と迷ってしまったことはありませんか? そこで今回は、「イモリ」と「ヤモリ」の違い、それぞれの特徴などをご紹介していきましょう。
まずはそれぞれの呼び名の由来から。漢字で書くと、イモリは「井守」、ヤモリは「家守」と書きます。昔からイモリは井戸や田んぼの中で、ヤモリは民家の壁などで見かけられ、それぞれ昆虫など人にとって好ましくない生きものを食べてくれるため、親しみを込めて「井守・家守」と呼ばれるようになったと言われています。
名前やフォルムが似ているイモリとヤモリ。だから両者は同じ種類の生きものだと勘違いするかもしれませんが、実は大きく違います。まずイモリは両生類で、カエルやサンショウウオと同じ仲間です。そしてヤモリは爬虫類で、トカゲやヘビと同じ仲間になります。
それでは次から、イモリとヤモリをそれぞれ詳しくご紹介していきます。
両生類であるイモリは、水中でも陸上でも暮らせる生きものです。そして同じ両生類であるカエルと同様、卵から生まれたときから成体になるまでに姿形が変わっていきます。カエルは卵から手足の無いオタマジャクシで生まれ、そこから徐々に手足が生えてカエルになっていきますが、イモリも卵からかえるとまず手足の無い幼生が生まれます。イモリの幼生の大きな特徴は、なんといっても外鰓(そとえら)でしょう。イモリの幼生にはウーパールーパーのような外鰓が頭の両脇に生えているのです。そこから徐々に手足が生え、逆に外鰓は無くなって幼体となり、最後は成体へと成長していきます。
日本に住むイモリは、アカハライモリ・イボイモリ・シリケンイモリの3種類です。中でも最もポピュラーなのは九州・四国・本州などに幅広く分布しているアカハライモリで、単に「イモリ」と呼ぶ場合、このアカハライモリを指すことが多いと言えます。一方、イボイモリ・シリケンイモリは鹿児島や沖縄の島々に暮らしています。
ということで、イモリの代表格であるアカハライモリですが、その最大の特徴は、名前にもなっている真っ赤なお腹です。アカハライモリは皮膚から毒を分泌しており、このようにお腹が赤く毒毒しいのは、まさに「私は毒を持っているから近寄らないで」と敵に教える警戒色だと言われています。
この毒の成分は、フグの持つ毒と同じテトロドトキシンですが、量はごくわずかなので人が触っても手を洗うなどすれば問題ありません。ただし目や口、傷口など体内に入らないよう注意する必要があります。
イモリの体で最も優れているところは、再生能力の高さです。たとえば敵に狙われて足が食いちぎられても、徐々に再生して中の骨まで完全に再生する能力を持っています。トカゲのように切断した尻尾を再生する生きものは他にもいますが、切断した足を、しかも骨まで再生する生きものはイモリだけです。
また、謎なところは繁殖行動です。オスは繁殖期になると、メスの前で尻尾を揺らしてまるで踊りのような行動をします。この踊りを気に入ったメスはオスの後をつけて周り、オスが精子の袋を落とすとそれを体内に吸収して受精。その後メスは水草を足で掴み、葉にくるむようにして卵を産み付けます。
両生類のイモリと違い、爬虫類のヤモリは生まれてからの一生を陸上で過ごします。親とほぼ同じ形の小さな体で卵から生まれ、それが成長するにつれて徐々に大きくなっていきます。
体はうろこ状の皮膚をしていて、温度変化によって体温が変わり、寒いと体温が下がり動きが鈍くなる変温動物です。また環境に応じて体色の濃淡を変化させることができるのも特徴の一つで、同じ種類のヤモリでも灰色から褐色まで体色はさまざまです。
ヤモリは森の中よりも民家の近くに生息することが多く、夜行性なので昼間はほとんど隠れていて、夜に餌などを取りに動き出します。私も夜になって家の壁を見ると、よくヤモリを見かけたものです。
日本には約13種類のヤモリが存在しますが、もっとも数が多いのは「ニホンヤモリ」です。温かい地域や離島などに多く分布し、秋田以南の本州・四国・九州、対馬などに生息しています。
ニホンヤモリのエサは昆虫やクモ、ワラジムシなどで、街灯や玄関の灯などに餌を求めて現れます。ところが最近は蛍光灯からLEDライトに変わって虫が集まらなくなり、ヤモリもエサを取る場所が減っていきています。(※蛍光灯の光には微量の紫外線が含まれており、それに反応して虫が集まります。しかしLEDには紫外線が含まれていないので、虫が全くといっていいほど集まりません)
最近では街路樹で多く見かけるようになりましたが、これはもう人間の照明にはエサが集まらないので頼らないということでしょうか? 少し寂しい気がしますね。
また、ヤモリの最大の特徴は、どんな壁でも歩ける足にあると言っても過言ではありません。垂直の壁もガラス窓も、さらには天井までも、逆さになって歩きます。
そしてその秘密は、足の裏にあります。細かな毛で覆われたフエルト状になっており、一見平らに見える壁やガラスのミクロな凹凸に足の裏を引っかけて、体を支えることができるのです。
そしてそのせいか、足の指が人間と比べて逆に反ることができます。足を動かして先に進む際に、引っかけた足の裏を指先の逆反りで剥がすのではないかと考えられます。
その他の特徴として、イモリにはまぶたがありますが、ヤモリにはまぶたがありません。目にゴミなどが入ると舌で目を掃除します。また、ヤモリは敵に襲われると尻尾を自切して逃げます。切れた尻尾はトカゲ同様にだんだんと再生します。
さて、イモリとヤモリの違い、それぞれの特徴を分かっていただけましたでしょうか? かつては日本のいたるところで見ることができたイモリとヤモリですが、最近はすっかりその姿を見る機会が減ってしまったように思います。これら親しみ深い生きものたちがこの先も見られるよう、私たちも環境保全に気を配っていきたいものです。
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