安全つくりかた シート編

安全つくりかた シート編

自動車部品のなかで、最も長い時間、乗員に触れているのがシートです。座り心地なども重要で、シートベルトやエアバッグに比べ、安全部品として意識されることは少ないかもしれませんが、実は命を守るための部品として、絶え間なく進化を遂げているのです。

 自動車のシートは家具の椅子とは異なり、快適性に加えて衝突時の安全性の確保を要求される部品です。電動調整機能の有無など仕様によってその数は変化しますが、シートの構成部品点数は数百点に及びます。

 シートの開発時は、車両重量が増加しないように意識しつつ、事故時の乗員保護に必要な強度と剛性がシートには求められています。

 またアクティブセーフティの面からも、正しい着座姿勢に乗員を導きつつ、快適な室内環境を提供することは、運転時の疲労による人為的なミス、事故の誘発防止につながります。
また、適切な着座位置に座ることで、前方・側方・後方の良好な視界を確保することは、事故防止の観点でも重要な要素です。

 さらに、シートアレンジの際に操作する人が負傷しないような形状や操作方法の工夫、万が一の車両火災の際、乗員が車外へ脱出する時間を確保するため、難燃処方を施した燃えにくいシート表皮材の開発など、安全に対する観点は多岐にわたり、シートベルトやエアバッグの機能を最大限に発揮させることも、シート開発の重要なポイントのひとつなのです。


Honda FREED の3列シートを横から見た画像

・唯一「運転する」シートがある1列目

運転席はドライバーにとって疲労が少なく、快適に運転できることが重要です。また、衝突時における乗員の安全性に配慮した、バックレストの強度・剛性が確保されています。

・快適性を重視する2列目

長時間座っていても疲れにくいように快適性を重視しながら、乗員や荷物の衝突を考慮し、バックレストの強度・剛性を確保。前後スライド量の多いSUVやミニバンなどでは、シート内蔵式のシートベルトを採用することもあります。

・アレンジの多彩さを握る3列目

ミニバンなどに多い3列目は、折りたたみ格納などのシートアレンジ性と、安全性の両立が設計の大きな課題となります。安全基準を満たしながら、利便性を高める工夫が活かされています。

安全運転の基礎となる快適性を向上させた
ボディースタビライジングシート

クルマのシートのみを取り外した画像

Honda車のボディースタビライジングシートは、「骨盤を安定させること」をキーポイントに開発しました。座った瞬間に体の収まりの良さを感じ、走行中に身体を安定させることで、運転していて疲れにくく、運転に集中しやすいことが特徴です。着座時にお尻が座面前方にずれない(骨盤が後転しない)ように安定させ、上体の左右のブレや、背中がシートから浮くことを抑制するフレーム構造を採用。「ヒトの研究」による科学的データ蓄積、そして膨大な数のテストを繰り返すことで生み出されました。

シート座面の裏側を撮った画像。座面中央にはウレタンパットが入っており、座面の周囲に電子回路などが張り巡らされている
シート座面の裏側

バネサスペンションに代わる新採用のサスペンションマットと、厚みのあるウレタンパッドを組み合わせることで、従来型シートよりも座りやすく、安定した座り心地を実現しています。側面からしっかり支えることで、骨盤のズレを防ぐ工夫も盛り込まれています。

衝突事故で損傷の多い頸部傷害から

車の衝突試験に使用されるダミー人形が頸部衝撃緩和シートに座っている画像

後突時の頸部傷害であるむち打ち症は、病名ではなく症状を示しており、明確な病状が定められていません。しかし、Hondaは90年代後半から頸部の衝撃を低減するシートの研究を始め、2001年のフィットにて頸部衝撃緩和シート(前席)を初採用し、衝突事故にともなう頸部傷害の低減に弛まぬ努力を継続して今日に至っています。

BEV完成車開発統括部 BEV車両開発二部 空間価値開発課・HMI スタッフエンジニア

ヘッドレストは「レスト=休憩」の意味から、頭を休めるものとイメージされることがありますが、実は後方からの衝撃に対して頭部の後傾を防ぐ効果を持つ安全部品で、ヘッド・レストレイント(頭部拘束装置)の略です。 後頭部の中心が、ヘッドレストの中心に来るようにヘッドレストの高さを調整し使用して下さい。

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