ハローウッズがオープンしたのは2000年。オープン前の森は数十年にわたって放置されていた状態で、以前「ヒトと生きものが育む森、ハローウッズの森の広がりを見てみよう!」で紹介したように、アズマネザサがクヌギやコナラの森全体を覆っていました。地面には太陽の光が届かず、風も抜けないため、なかなか新しい植物が育たない森になっていました。そんな荒れた森を、陽が差し風の抜ける里山の森をよみがえらせるためにハローウッズが最初に行なったこと、それがアズマネザサの伐採でした。
アズマネザサは篠竹(シノタケ)とも呼ばれ、日本各地の低い山や丘に普通に見られるササです。茎の直径は太いもので2cmほど、高さは通常1~2.5mほどですが、中には4mに達するものもあります。人が森の手入れをしなくなると、とたんに地面を覆い尽くす勢いで群生して木々の成長を脅かすので、森林を守るためにはアズマネザサの伐採が欠かせません。ハローウッズでも春から秋にかけて定期的にアズマネザサの刈り払い作業を行なうことで、森の中に太陽の光が入り、風が抜け、新しい命が育つ健康な森を維持しています。
アズマネザサは土中にも茎があり、地下茎でつながっています。なので一度刈り払い作業を行うと一旦は無くなったように見えますが、それは地上部だけで、地中では地下茎に蓄えられた養分を使って再び生えて、数十日後には元に戻ってしまいます。
それほど再生能力が高いアズマネザサなので、成長を抑制して適度な生え具合を保つためには、年に3回程度、特に成長が盛んな夏場の刈り払いを行ない、少なくとも2~3年は継続する必要があります。
冬になると、森の中では多くの木々が葉を落とし、幾重にも重なっていきます。落ち葉はカビや菌、微生物などによって分解されていく過程で森の栄養の一部となり、生きものたちを育みます。しかし、冬に新炭の生産やシイタケ栽培用にクヌギやコナラの木を伐採すると、障害物の少なくなった地面を強い北風が吹き抜けるようになり、落ち葉が遠くに吹き飛ばされてしまいます。特に山の頂上付近や尾根部分では顕著です。すると地面が剝き出しになり、乾燥して生きものたちが暮らしにくい環境になってしまいます。
そこで、アズマネザサをすべて刈ってしまうのではなく、適度な成長度合いに管理して背丈を低い状態で保つことで、落ち葉がアズマネザサに引っ掛かって飛散を防ぐ役割を果たしてくれます。そうすることで落ち葉が森に還元され、多様な生きものたちの生きる環境を維持することができるのです。
日中、ハローウッズの森を歩いていて、ふとタヌキやアナグマ、イタチ、テンなどの哺乳類に遭遇したとき、またミソサザイなどの小型の野鳥に出くわしたとき、彼らは慌ててササ藪に入っていき、身を隠します。繁茂するアズマネザサの茎や葉が、生きものたちにとって人間や天敵から身を守るための欠かせない場所になっているのです。
また、これから本格的な春が近づいてくると、藪の中から聞こえてくるのが「ホーホケキョ」というウグイスの囀りです。ウグイスはササ藪や草むらの中の比較的低い場所に巣を作って繁殖します。巣は柔らかいアズマネザサの葉や草の茎などを使って作るので、棲み処として、また巣材として、アズマネザサの藪はウグイスにとってなくてはならない環境です。
ともすると、しつこい雑草として厄介者扱いされることが多いアズマネザサですが、森の中では私たちのまだまだ知らないところで、森や生きものたちにとって良い影響を与えていることがあるかもしれません。これから森の中でササ藪を見つけたら、ぜひ優しい気持ちで接してあげてください。そして注意深く藪の周りを観察すれば、思わぬ生きものたちに出会えるかもしれませんよ。
ハローウッズは42ha(東京ドーム約9個分)の広さがあり、いつでも、誰でも、思いっきり遊べる元気な森です。人と自然が楽しくかかわり合い、自ら体験し、発見できるプログラムをたくさん用意して、皆さんをお待ちしています。
ハローウッズのホームページへ森の伐採で得た丸太や枝、落ち葉を使って、森の生きものたちの命を育むタワー「生命の塔」をつくります。里山でのヒトの営みと生きものたちのつながりを肌で感じながら、森づくりを楽しみましょう。(中学生以上)
森づくりワークショップのページへ埼玉県朝霞市にある本田技術研究所ライフクリエーションセンターは、発電機や船外機、耕うん機などHondaのパワープロダクツの開発を行っています。その敷地はHondaWoods朝霞の森が外周を覆い、四季折々の花が咲いて道行く人の目を楽しませています。
埼玉県朝霞市泉水3-15-1