ナラ枯れとは、ナラやカシ、シイ類の樹体内にカシノナガキクイムシがナラ菌を持って入り込み、ナラ菌の菌糸によって樹木内の道管が目詰まりして通水障害を起こし、最終的には枯れてしまう伝染病のことです。体長5mmほどのカシノナガキクイムシは、自分が通れるほどの小さな孔を樹皮から掘り、樹体内に入って成長します。さらに羽化した新成虫がナラ菌を付着して別のナラの個体に移動することにより被害が拡大していきます。
カシノナガキクイムシは、知られているだけで50種類以上の樹木につきますが、繁殖できるのはナラやカシ、シイ類などブナ科の樹木に限られ、主に何らかの原因で衰弱した幹の太い木で繁殖することが分かっています。
カシノナガキクイムシが掘る孔の数は太い木ほど多く、幹の下の方ほど多い傾向があります。これは、衰弱して水が切れた幹の高い部分ではエサになる菌が育ちにくく、ある程度湿っている幹の下の方を好むためと考えられています。
樹木に入り込んだカシノナガキクイムシは、集合フェロモンを発生して集中的に産卵します。ある記録によると、胸の高さの直径が25cmの木からは600匹、それ以上の太い木からは9,000匹のカシノナガキクイムシが確認されたそうです。そんな数が一気に木の中に発生するのですから、入り込まれた樹木はひとたまりもありません。
ナラ枯れが広がると景観が悪くなることはもちろん、立ち枯れるので土壌を支える力が衰えて土砂崩れの危険が高まり、さらに倒木の危険もあります。またどんぐりを食べる動物をはじめ何らかの形で樹木の恩恵を受けているさまざまな生きものたちに多大な影響を及ぼします。これらのことから、ナラ枯れの発生を防ぐこと、また拡大を食い止めることはとても重要です。
そこで今回は、ハローウッズのワークショップで行っている、ナラ枯れ防止のための森の伐採について、詳しくご紹介します。
ハローウッズの南向きの山には薪炭やシイタケ栽培などに使われるコナラやクヌギが多くありますが、ナラ枯れする可能性がある高齢・大径化した樹木は伐採して森の若返りを図ります。
今回伐採するコナラは、谷側に建物がある斜面に生えているので、建物を壊さないよう山側に倒します。木の根元から樹形を観察し、どうやれば倒したい方向に倒せるか、伐採の方法や手順を検討し、見極めます。
伐採の最初の作業として、まず谷側に倒れないようにするため、チルホール(手動エンドレスウインチ)という機材を使って、樹木をワイヤーで山側に引っ張ります。
次に、安全に退避できるように、伐採前には木の周りを整え、躓いて転んだりしないようにします。
チルホールのワイヤーのテンションのかけ具合や作業者の安全な立ち位置など、しっかり確認して最終セッティングします。
樹木を伐採する際は、チェーンソーでまず倒したい方向に「受け口」という切り込みを入れ、次に倒したい方向の反対側に「追い口」という切り込みを入れます。
最初の受け口を入れたら、チェーンソーで追い口を入れるチームと、引っ張るチーム、お互いの状況をコミュニケーションをとりながら慎重に作業を行います。
無事に伐倒したら、枝を落として集材作業を行い、終了です。
ナラ枯れによる樹木の大量枯れ死が始まったのは二十世紀初頭で、しかも都市近郊や工業の盛んな地域から始まったそうです。大気や土壌の汚染によって植物と菌との共生がうまくいかなくなっているからではないか、など、原因や因果関係についてはさまざまな意見がありますが、まだ正確なことは分かっていません。とは言え、少なからず人間の活動が森林の衰退に影響を与えているのは間違いありませんので、これからの未来に向けて森を守るためにしっかりと活動していかなくてはならないと、あらためて感じます。
ハローウッズは42ha(東京ドーム約9個分)の広さがあり、いつでも、誰でも、思いっきり遊べる元気な森です。人と自然が楽しくかかわり合い、自ら体験し、発見できるプログラムをたくさん用意して、皆さんをお待ちしています。
ハローウッズのホームページへ大人(中学生以上)が対象。チェーンソーを使い木を伐り、薪や炭にするために倒した木の枝を落として幹を玉切りにして運び出します。チェーンソー初心者もスタッフがサポートするので安心です。
※現在は予定通り開催に向け準備を行っておりますが、新型コロナウイルス感染症状況を注視したうえで判断し、内容を変更して実施または開催中止の可能性がございます。ご理解くださいますようお願いいたします。
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Honda車にとって極めて重要な役割を担う部品を生産しているパワートレインユニット製造部がある真岡市松山町は、その名の通り昔から松林の多い地域です。工場の敷地内にも松の巨木林が残り、従業員の憩いの場ともなっているこの松林を守り続けられるような森づくりが行われています。
栃木県真岡市松山町19