古くから日本人は非日常的な日である「ハレ」と日常的な日である「ケ」とを使い分けて生活してきました。今でこそ形骸化している部分もありますが、冠婚葬祭など「ハレ」は日本人にとって欠かすことのできない文化です。そんな「ハレ」の日、とくに祝いの場において必ずと言っていいほど登場するのが「小豆(あずき)」です。お赤飯やおはぎは「ハレ食」の代表格と言えるでしょう。
平安時代にはすでに小豆粥(あずきがゆ)のようなものが宮中料理として食べられていた記録があり、小豆は昔から縁起の良い日に食べられていたようです。
小豆そのものの利用で見るとさらに歴史は深く、縄文時代の遺跡から小豆の種子が数多く出土しています。小豆と日本人の関わりは、少なくとも1万年以上前から続いているようです。
現在、私たちが食べている小豆は長い年月をかけて品種改良されてきたものです。大納言や白小豆など小豆にはたくさんの種類がありますが、市場に出回っている小豆は基本的には栽培種(人間が栽培して利用しやすい特性に品種改良した種類)です。栽培種があれば当然、その祖先となる野生種も存在します。それが「ヤブツルアズキ」です。
ヤブツルアズキは日本、朝鮮半島、中国からヒマラヤにかけて分布する植物で、諸説あるものの栽培されている小豆の起源(祖先野生種)と言われています。一般的な小豆と比べると莢(さや)が黒く、種子が小粒なのが特徴です。さらに種子は黒っぽいまだら模様をしており「小豆は赤」というイメージと大きく異なります。
小豆と同じように種子を食べることができますが、種子が小粒なのと採集に手間がかかるため、ほとんど利用されていません。ほとんど見向きもされていないヤブツルアズキですが、実はその味には定評があります。地方によっては、食べるために育てている人もいます。
ヤブツルアズキは、荒廃地や河原脇など草丈のある草地で他の植物に絡みついています。公園や里山など整備の行き届いた場所では、ほとんど見かけません。ハローウッズにも生えていますが、スタッフ専用道路の脇にある藪や草刈りのしにくい急勾配の斜面ぐらいでしか見かけません。他の草に埋もれているため探すのも一苦労です。
探すコツは、ずばり花もしくは実がついている時期を狙うことです。地方によって差はありますが、夏に花、秋頃に莢が見られます。普段は気づきにくくても、黄色の花をつけているとき、黒っぽい莢をぶら下げているときは比較的目につきやすいです。
またヤブツルアズキの種子はあまり遠くに飛びません。1株見つけると周りにもたくさん生えていることが多く、ポイントさえ見つければ一網打尽です。翌年も出る可能性が高いので、見つけた場合はその場所を覚えておくといいです。注意点は、生育期間に草刈りをされると十分に生長ができず、消失してしまうことが多いということ。収穫を楽しみにする人にとって、草刈りは悩みのタネです。
せっかくなのでヤブツルアズキの味を確かめるべく自宅近くで探してみました。すると田んぼの一角、初春にしか草刈りがされないボサボサの休耕田でセイタカアワダチソウに絡みつくヤブツルアズキを発見。約1時間かけて100gほど(乾燥豆)の収穫です。
収穫したヤブツルアズキを乾燥、仕分けしたのち、餡子(あんこ)をつくってみました。その味は「完全に餡子」……。一般的に売られている小豆の餡子とまったく遜色がありません。むしろ小豆と比べて風味が強く、やや上品な感じがします(※作り方による違いもあります)。誰も見向きもしない荒れ果てた休耕田でこれだけの食材が手に入るのはお得感満載です。探す手間、収穫する手間こそかかりますが、野生味のある小豆を堪能できます。ご興味のある方はヤブツルアズキを探して、ぜひその味を確かめてみてはいかがでしょうか?
ハローウッズは42ha(東京ドーム約9個分)の広さがあり、いつでも、誰でも、思いっきり遊べる元気な森です。人と自然が楽しくかかわり合い、自ら体験し、発見できるプログラムをたくさん用意して、皆さんをお待ちしています。
ハローウッズのホームページへ2020年12月5日・12日・26日・27日(各日日帰り開催)。冬の森の中で焚き火でアツアツ、ホクホクの焼き芋をダッチオーブンでつくります。森の中で落ち葉や枝を集め、薪を割り焚き火を楽しみながらプチアウトドアクッキングに挑戦!
「森カフェ~ほかほか焼き芋~」ページへ
栃木県高根沢町にある本田技研工業(株)の「ものづくりセンターTE 開発インフラセクション」には、従業員の健康増進のために整備した森の中のウォーキングコースがあり、初夏にプラム、盛夏にソルダム、秋には山栗など、季節ごとにさまざまな木の実が生り、従業員を楽しませます。
栃木県芳賀郡芳賀町大字下高根沢2900