夏休みは昆虫採集に最適な季節。その対象としてカブトムシやクワガタムシに人気が集まるのは今も昔も変わりませんが、森の中などでよく観察してみると、カブトムシやクワガタムシ以外にも、面白そうな虫、不思議な虫はたくさんいます。昆虫採集の中級者から上級者には、そうした昆虫たちにもぜひ興味を持ってもらい、じっくり観察してもらいたいと思います。そこで今回は、数々の不思議昆虫の中から、独特な色の模様や光り輝く宝石のような昆虫についてご紹介していきます。
自然界の中には、光の具合や見る角度によってキラキラと複数の色に輝く身体を持つ生きものがいます。クジャクやカワセミの羽などがその代表格で、これらはいずれも美しい鳥の代名詞。もっと身近なところでは、ハト(ドバト)の首回りも同じ輝きを持っています。
生きものばかりではありません。シャボン玉やCDの表面は見る角度によってキラキラと虹色に光りますが、これも同じ現象です。
この「虹色の輝き」は、昆虫の世界でも多く見ることができます。たとえばコガネムシもその一例で、コガネムシは漢字で書くと「黄金虫」。これは「黄金色に輝く身体の色」が由来になっており、その名前の通り、観る角度によってキラキラと複数の色に輝きます。
金属や宝石のように輝くこの光沢は「構造色」と呼ばれ、一般的な発色とは全く異なる原理で発色しています。通常、生きものやモノに色が着いている場合、それは特定の色を吸収して特定の色を反射する「色素」によって発色しています。たとえば緑色の身体を持つ生きものは、緑色の光を反射してそれ以外の色を吸収しているから緑色に見えるのです。
一方、構造色は「色素」を使わずに発色する仕組みです。とても細かく複雑な形をした表面の構造体が光を様々な方向に反射させ、特定の波長の光を積極的に反射させることにより色を着けているのです。
「構造色」の原理はとても複雑で、それを完全に理解するには高度な科学の知識が必要になります。なので今の段階では「色素を使わずに物質の表面の微細な形状によって光を反射させることで発色する仕組み」と覚えておけば充分です。
この「構造色」の特徴の一つとして、長い時間が経っても色あせないということが挙げられます。色素によって発色する場合、時間の経過によって色素が劣化したり変化したりするので、本来の色から違う色に変わっていきます。これを一般的に「色あせる」と言います。一方「構造色」の場合、色素を使わない発色なので、時間が経ってもほとんど色あせることがありません。たとえばタマムシの翅は、半永久的に色あせない美術工芸品の素材として古代から使われてきました。中でも法隆寺(ほうりゅうじ)の「玉虫厨子(たまむしのずし)」が有名です。
昆虫の中には、この構造色を持つものが数多くいます。それは、この輝きを持つことで、構造色が嫌いな敵から身を守ったり、輝く体を異性へのアピールとして使ったり、周りの色を反射してその環境に溶け込んで身を隠したりすることなどに有効だからだと言われています。
この夏、昆虫をはじめ、構造色を持つ、いろいろな生きものがどのくらいいるか観察し、自由研究などのテーマにしても面白いのではないでしょうか。
それでは、ハローウッズの森で見つけた構造色を持つ昆虫たちをご紹介しましょう。夏休みの昆虫採集の参考にしてみてください。
コウチュウ目オサムシ科。体長18~20mm前後で、全身が赤や青、緑で美しく輝き、翅には白い斑点があります。林道上など土が露出した地表、川や池などの水辺環境に近い開けた場所で見つかります。
コウチュウ目オサムシ科。体長22~33mm程度。黒色ですが、金緑色~赤銅色の金属光沢があるため、角度によりさまざまな色に見えます。昼間は雑木林や河川敷の枯れ葉や石の下にいて、夜になると地表を歩き回り餌を探します。
カメムシ目カメムシ亜目キンカメムシ科。体長17~20mm程度。緑色に赤色の模様がついた大型のカメムシで、木の幹などにとまっていることが多い昆虫です。また、カメムシの中では比較的臭さが少ない種類です。歩く宝石とも呼ばれます。
コウチュウ目ゴミムシダマシ科。日本では460種類以上が確認されており、体長10数mm~35mmまでさまざま。光を受けると虹のような輝きを見せる種類もいて、林内の伐採木や朽ち木、キノコなどに集まります。
コウチュウ目タマムシ科。体長19~29mm程度でタマムシの仲間では中型の大きさ。金緑色にまだら模様があり、アオハダ、ソヨゴなどの枯れ木や衰弱木に集まります。
コウチュウ目カミキリムシ科。体長25~30mm程度。頭や胸は金緑色で、触角や脚が赤褐色の美しいカミキリムシです。昼間はクヌギの梢や樹幹に潜んでおり、夜になるとカブトムシやクワガタムシに交じってクヌギの樹液を吸っています。
ハエ目クロバエ科。体長5〜11mm程度で、クロキンバエ、ミドリキンバエ、ヒロズキンバエなどの種類があります。身体全体が黄金色に光るのが名前の由来。市街地よりも森林内に多く生息します。
チョウ目シジミチョウ科。前翅長16~23mm程度。オスは緑色を黒い色で縁取った翅を持ち、メスの翅は黒地で、青い紋のあるもの、赤い紋のあるもの、紋のないものなどがあります。湿地や雑木林に生息します。
トンボ目ヤマトンボ科。腹長49~64mm。ヤマトンボの仲間では最大で、オニヤンマと間違えるほど。体は金緑色の光沢があります。北海道から沖縄まで日本中に生息し、池や沼の水面を悠々と飛ぶ姿がよく見られます。
世界中に100万種類、日本にも3万種類以上いる昆虫の仲間たち。その中には、ちょっと目を向けただけでも構造色を持つ昆虫はたくさんいます。体全体に構造色を持つ昆虫、部分的に持つ昆虫など様々。中には構造色なのか、そうではないのか、わかりにくい昆虫もいますが、それぞれの個性あふれる体の色はとても興味深いです。皆さんも身近なところで構造色を持つ昆虫たちを探してみましょう。
ハローウッズは42ha(東京ドーム約9個分)の広さがあり、いつでも、誰でも、思いっきり遊べる元気な森です。人と自然が楽しくかかわり合い、自ら体験し、発見できるプログラムをたくさん用意して、皆さんをお待ちしています。
ハローウッズのホームページへカブトムシ・クワガタムシの暮らす「もてぎ」のクヌギ、コナラの森。普段は入る事の出来ないエリアで特別なお客様だけを朝の昆虫採集にご案内。生きもの博士のスタッフから飼い方もしっかりお話しします。朝の森で憧れの昆虫を捕まえましょう。
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