クローバーの葉やタンポポの花と一緒に描かれることの多いテントウムシ。春の虫というイメージがあるかもしれませんが、夏や秋はもちろん、冬だって成虫の姿で越冬しているところを探すことができるんですよ。今回は、越冬するテントウムシたちを見てみましょう。
みなさんの中には、冬にテントウムシを見た!という人がいるかもしれません。
虫の大半は、春から夏に成虫となって活動を始め、秋になったら卵を産んで死んでしまいます。だから冬は成虫を見かけなくなるのですが、これとは違ったサイクルを持つ虫もいて、テントウムシもその一種です。
テントウムシの寿命は短く、だいたい2カ月ほど。卵から成虫まで約20日で成長し、成虫になると1カ月ほど卵を産み続けて一生を終えます。だからテントウムシは、1年の間に何世代もが命を繋ぐといわれ、冬でも成虫を見ることができるのです。
ただ、冬の間は寒さとエサ不足で活動が鈍るため、テントウムシの多くは産卵をしないで冬を越します。成虫の姿で寒さに耐えて冬を越した後、産卵をして寿命を迎えます。産卵をしないテントウムシは寿命が延びるので、ほかのテントウムシよりも少し長生きです。
そんなテントウムシのなかでも特に冬に見つけやすいのは、赤い体に7つの黒い星(斑紋)があるお馴染みのナナホシテントウです。寒い日は草の根元や落ち葉の下などで眠っていても、天気が良い日が続くと外に出てきて遊んでいるからです。日光を浴びて冷えた体を温めているのかもしれませんね。
では、他のテントウムシたちはどうしているのでしょうか。日本には100種類以上のテントウムシがいるといわれていますが、今回はその一部を見てみましょう。
ナミテントウは「並(ナミ)」といわれる通り、森でも街中でもよく見かけるテントウムシです。名前は知らなくても、オレンジ色に小さな黒い星がいくつもあったり、黒色に大きな赤い星が2つあったり、そんなテントウムシをみなさんも見たことがあるのではないでしょうか。
この模様のバリエーションは10数種類あって、それは親から子どもへ、そしてまたその子どもへと代々遺伝するといわれています。
ナミテントウはナナホシテントウと同じく、そのかわいい見た目にそぐわず肉食性で、成虫も幼虫もアブラムシなどをエサにしています。植物の栄養を吸って生きているアブラムシは農作物や庭の草花などを弱らせてしまう虫ですが、ナミテントウやナナホシテントウはこのアブラムシを食べてくれるので、人間にとって利益をもたらしてくれる「益虫」とされています。
そんなナミテントウは、冬になると数十~数百匹が風が当たらず温度変化も小さい岩の隙間や軒下などに集まります。こうして集団で身を寄せ合って、おしくらまんじゅうをするようにして春まで熟睡します。
ハローウッズでは、遊具に取り付けてあるビニールクッションの内側に今年もナミテントウたちが集まっています。色々な模様のナミテントウが何百匹も集まって、まるで宝石箱のような光景です。
カメノコテントウは、直径1cm以上になる日本最大級のテントウムシです。
しかしカメノコテントウはなかなか出会うことができないテントウムシで、クルミハムシという虫の幼虫をエサにするため、基本的にクルミハムシがいるクルミの木にしかいません。例えクルミの木があったとしてもクルミハムシがいなければカメノコテントウもいませんし、クルミの木は高さ10m以上になるものもあるので、なかなか見つけることができません。
日本最大級の大きさで見つけることも難しいことから、テントウムシファンにとっては憧れの存在となっています。
カメノコテントウは、ナミテントウと同じく風をよけられる岩の隙間や樹皮の裏などで集団越冬していて、時にはナミテントウの集団に紛れていたりもします。更には、樹木札(木にかけられた樹木の名札)の裏側などでも数匹の集団で越冬しています。
春から秋の活動期には見つけることが難しいカメノコテントウですが、越冬場所は人間にとって探しやすい場所です。ポイントさえ知っていれば、冬は意外と簡単に見つかりますよ。
カメノコテントウとは対照的に直径5mm程度の小さな小さなキイロテントウは、レモンのような黄色い体で胸には2つの黒い星があるテントウムシです。
キイロテントウのエサは菌類で、野菜などの葉っぱが白くなってしまうウドンコ病の病原菌(白渋病菌)を食べるので、アブラムシを食べるナナホシテントウやナミテントウとともに「益虫」とされています。
冬になると葉っぱや樹皮の裏、樹木札の裏などに単独もしくは数匹の集団で隠れて春を待っています。越冬場所が似ているので、カメノコテントウと一緒に見つかることもあるかもしれません。
ところで、テントウムシはどれも自然界でとてもよく目立つ色をしています。冬の間は物陰に隠れていますが、活動期はそんな目立つ姿で草や枝の上を歩き回っていて、トリなどに捕まったりしないのでしょうか?
実は、テントウムシが身にまとっている赤と黒や、黄色と黒などといった色使いは、毒を持つ生き物などが「自分に近寄ると危ないぞ!」と他の生き物に警告する「危険色(警告色)」なのです。だからトリに襲われたりすることは、ほとんどないんです。
人間界でもこれを真似て、工事現場や踏切が黄色と黒だったり、様々な場所で危険色が使われていますよね。
では、あんなにかわいいテントウムシの何が危険なのかというと、テントウムシは敵に襲われると脚の付け根から液体を出します。みなさんもテントウムシを捕まえたときに、手に黄色い汁がついたことがあるかもしれません。あの汁には、トリが嫌うアルカロイドという成分が含まれていて、とても苦くて臭いんです。
つまりテントウムシは、トリなどに対して「食べると危険!」と警告しているんですね。
そして、そんなテントウムシの危険色を真似て(擬態して)、敵から身を守っている虫もいるんです。それが、テントウムシダマシやハムシです。
テントウムシダマシもハムシも、人間の目にはテントウムシにそっくりとは思えず、苦い汁を出すワザも持っていないのですが、トリからは狙われずに済んでいるようです。
どちらもテントウムシと同じく、成虫の姿で越冬をしています。エサはテントウムシと違い、テントウムシダマシは主に森のキノコやカビなどの菌類を食べるのですが、ハムシは草食で農作物などを食べてしまうため、人間に害をもたらす「害虫」として扱われています。
しかし、テントウムシが「益虫」でハムシが「害虫」というのはあくまでも人間目線での区別であって、自然界にそのような区別はありません。ハムシは、トリには襲われなくても、クモやカエルのエサになることでその生命を支えています。自然界にとっては、テントウムシもハムシも大切な存在だということも合わせて覚えておいてくださいね。
今回はテントウムシの多くが成虫の姿で越冬していることを中心にご紹介しました。
越冬している虫たちは気温の変化と日照時間の変化で春の到来を知ります。そして春になると、成虫で越冬した虫の多くが産卵をして、命を次の代へと繋ぎます。また、卵、幼虫、サナギで冬を越した虫たちも産卵のために徐々に成虫へと成長していくのです。
みなさんの家の近くではどんな虫たちがどんな形で越冬をしているのか、探しに行ってみましょう!
※越冬中の虫を捕まえて観察した場合には、観察後は元の場所に戻してあげましょう。
今月の「子どもの森の遊び」では、冬の虫探しをご紹介しています。是非ご覧ください!
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