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  • 2022.08.30

カブトムシの繁殖方法と幼虫の飼い方を知ろう!

カブトムシの繁殖方法と幼虫の飼い方を知ろう!
奥山 英治
今回の案内人
ハローウッズ キャスト/
日本野生生物研究所代表/
ナチュラリスト/イラストレーター
奥山 英治

こんにちは!日本野生生物研究所の奥山です。自分で捕まえた虫を飼育することには、格別な喜びがあります。それまでよく知らなかったその虫のことを、より深く知ることができる最高の方法は、その虫を自分で飼育することです。そこで今回は、虫の飼育の中でもちょっと高度な、でもチャレンジし甲斐のある、「カブトムシの繁殖と幼虫の飼い方」をご紹介します。

カブトムシの交尾と産卵

まず最初にお断りしておかないといけないのは、今回は「カブトムシの繁殖と幼虫の飼い方」というお話ですから、カブトムシのオスとメスを飼っていることが条件になります。しかもカブトムシの産卵のピークは7月~8月と言われていますので、今から産卵させるのは時期的にちょっと遅いかもしれません。でも産卵の可能性はゼロではありませんし、もし産卵させることができなくても、来年以降、本格的にチャレンジするために勉強していただければと思います。

●カブトムシの繁殖時期
カブトムシは、早いものでは6月中旬くらいから成虫になって土の中から出てきます。その後、成熟して7月~8月を中心に交尾を行ない、産卵して9月ぐらいに寿命を迎えることになります。
ただ、室内の安定した環境で飼育されたカブトムシは長生きすることが多いので、もし今、オスとメスを飼っているならば、今が繁殖の最後のチャンスというわけです。
●カブトムシの交尾
カブトムシは、成虫になって2~3週間ぐらいで身体が成熟し、交尾するようになります。メスが出すフェロモンをオスが嗅ぎ、近寄っていって交尾を開始するのです。オスは元気なうちなら何度でも交尾しようとしますが、メスは一度交尾すると二度目、三度目の交尾を嫌がる傾向があります。交尾した後は、元気な卵を産むためにたくさんの栄養を摂り、卵を成長させなければなりませんから、そちらにエネルギーを使うからだと思われます。
いずれにしても、これから交尾させようというオス、メスを選ぶ際は、元気に動き回り、エサをよく食べてる個体を選ぶのが良いでしょう。
●交尾と産卵の環境を整える
カブトムシを交尾・産卵させる場合、重要なのは環境づくり。中でも「腐葉土(ふようど)」は、メスの産卵と幼虫の成長には絶対欠かせない要素です。と言うのも、交尾を終えたメスはどんな場所にでも産卵するわけではなく、主に落ち葉や朽ちた木の下の腐葉土の中に潜り込んで産卵するからです。腐葉土とは、落葉樹などの落ちた葉を長い時間をかけ微生物が分解して菌が入り込んだ土のことで、カブトムシの幼虫は、この腐葉土をエサにして成長します。なのでメスは、幼虫のエサである腐葉土の中に産卵するのです。

そこで、カブトムシを交尾・産卵させるためには、まずは腐葉土を敷き詰めた大き目の飼育ケースを用意し、そこにエサ皿・のぼり木・転倒防止用の小枝などを入れた交尾・産卵用の飼育ケースを作ります。ポイントは十分な腐葉土を敷き詰めることで、深さ数cm以上、できれば10cm前後確保するのが望ましいとされています。その際、下半分は安定するように固めに敷き詰め、上半分はメスが潜り込みやすいようにやわらかめに敷き詰めます。

そして敷き詰めた腐葉土は乾燥させてはいけません。乾燥してきたら霧吹きなどで湿り気を加えます。飼育にふさわしい湿り気は、手のひらに土を乗せて握りしめたら固まる程度です。

ちなみに腐葉土は、昆虫飼育用や園芸用としてホームセンターなどで手に入ります。選ぶ際のポイントは、殺虫成分が入っていないことと、針葉樹の入っていない広葉樹だけを使用した腐葉土を選ぶこと。また、カブトムシ用飼育マットも腐葉土と同じように使用できますが、幼虫・成虫・産卵など成分が異なる種類がありますので、産卵・幼虫用を選ぶようにしてください。

●飼育ケースに入れるのはオスとメス1匹ずつ
交尾・産卵用の飼育ケースが用意できたら、そこに交尾させるオスとメスを1匹ずつ入れます。そうすると、元気なオスとメスであれば、自然に交尾を行なうはずです。カブトムシの交尾の時間は10~30分程度で、これを直接目撃できるといいのですが、目撃できない場合でも、1週間経ったら交尾したと考えて、オスを別の飼育ケースに移し、メスだけにします。
交尾したかどうかを判断する材料として、交尾を終えた直後のメスは、よくエサを食べるようになります。元気な卵を産むために、十分な栄養を摂ろうとするのです。そしてその後は、体力温存のために土に潜っている時間が長くなります。こうした行動がメスに見られれば、交尾を行なったと考えていいでしょう。
●メスの産卵
交尾を終えたメスは、個体によってバラつきがありますが、だいたい1週間程度で産卵を始めます。産卵する際は腐葉土の中に身体を潜らせて、一日に1~5個の卵を産みます。そしてこれを何日も繰り返し、最終的には20~50個の卵を産むのです。よってメスが何日も腐葉土の中に潜っているようであれば、それは産卵していると思っていいでしょう。
産卵が終わったら、メスは別の飼育ケースに移します。卵は外から見える場合もあれば、落ち葉や腐葉土に隠れて見えない場合もあります。産卵したことをちゃんと確かめるために、卵の姿を探したくなりますが、生まれたての卵は非常にもろいので、この段階では無理に探さないようにします。
そして交尾から60日程度、産卵から1カ月以上経ったと思われる頃、卵の様子を確認します。土をそっとかき分けて、卵が確認できたら素手では触らず小さなスプーンなどで卵を集め、何粒産んだか確認します。卵は白く1~3mmほどの大きさですが、面白いことに卵のままで成長とともに大きく膨らんでいきます。
確認できたら、あらためて飼育ケースの腐葉土に指で深さ1~1.5mmの穴を開け、卵を軽く埋め返し、それからしばらくはそのまま飼育ケースの中で成長を見守ります。

カブトムシの幼虫

その後、卵はふ化して幼虫になります。生まれたての幼虫を1令と呼び、大きさは8~10mmほど。これが腐葉土を食べてどんどん成長し、1週間ほどで脱皮して2令になり、さらに3週間もするとまた脱皮して大きさ40mmほどの3令になります。この3令幼虫は土の中で冬を越し、最終的には80~120mmになって翌年5~6月に三度目の脱皮をしてサナギに。そして7月ぐらいに成虫になって土から出てくるのです。

ふ化して1カ月以上経ち、3令幼虫の初期、10月ぐらいになったら、幼虫を飼育ケースから出して1匹ずつ個別のケースに入れて飼育する方式に切り替えます。より確実に成長させるためと、中の様子が観察しやすいケースに入れて、サナギから成虫へと成長する姿を観察するためです。この時使うのが、ペットボトルを使った飼育容器なので、その作り方をご紹介します。

ペットボトル飼育容器の作り方

  • 1. 2Lペットボトルを用意

    3令幼虫は最終的に100mm前後の大きさになりますので、幼虫の動きを阻害しない余裕のある広さを確保するため、2Lの空ペットボトルを用意します。

  • 1. 2Lペットボトルを用意
  • 2. カッターで2つにカット

    ペットボトルの上から4分の1ぐらいの位置で、カッターナイフなどを使って2つにカットします。

  • 2. カッターで2つにカット
  • 3. 腐葉土と幼虫を入れる

    切り離した2つのうち、下4分の3のほうに、腐葉土を9分目ぐらいまで入れて、その上に幼虫を1匹そっと乗せます。

  • 3. 腐葉土と幼虫を入れる
  • 4. 上のフタを閉めて完成

    キッチンペーパーをかぶせて、その上から切り離したペットボトルの上4分の1でフタをすれば完成です。ちなみにキッチンペーパーはコバエ等の侵入を防ぐためなので、コバエを通さず空気を通すものであれば、ガーゼ等でもOKです。

  • 4. 上のフタを閉めて完成

幼虫から成虫になるまでの飼育

このペットボトル飼育容器1つにつき幼虫1匹ずつ入れるので、結局幼虫の数だけペットボトル飼育容器が必要になります。容器の作成は大変ですが、幼虫が立派に成虫まで育つためには必要なので、頑張って作りましょう。

次に置き場所ですが、カブトムシの幼虫は基本的に土の中で成長するので、明るいところを嫌い暗く静かな場所を好みます。なので室内でも暗いところで気温は30度にならないような場所に置くようにしましょう。

この容器で幼虫が成虫になるまで飼育していきますが、途中、幼虫のフンが目立つようであれば、ペットボトルの中の腐葉土を全部取り換えます。とは言え、成虫になるまでに一度換えるくらいです。また、腐葉土に適度な湿り気が必要なのは先にご説明した通りですが、ペットボトルの底に水分が溜まってしまう場合もあるので、水分のあげすぎには注意しましょう。

●幼虫からサナギへ、そして成虫へ
腐葉土を食べて順調に育った幼虫は、夏前の5~6月ぐらいになると、自分の身体から出る分泌液を使って腐葉土を固めて蛹室(ようしつ)という部屋を作り、そこで脱皮してサナギになります。
サナギになると、オスのカブトムシには頭部と前胸部に2本の角ができるので、初めてオス・メスの区別がつくようになります。サナギになった直後のカラダは白色で柔らかく、時間が経つにつれてオレンジ色に変色して、身体もかたくなっていきます。この時、身体の中では組織の組み換えが行なわれており、非常にデリケートな状態です。飼育容器に強い衝撃を与えたり、サナギを手で触って持ち上げたりしないようにしましょう。

その後、順調に育てば約1カ月で成虫になります。もしここまで育てることが出来たら、喜びもひとしおでしょう。ぜひチャレンジしてみてください。そしてカブトムシ以外にも、いろんな虫の飼育・繁殖を行なってみると、より一層、虫たちの面白さ、自然の不思議さが分かってくると思いますよ。

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