こんにちは!日本野生生物研究所の奥山です。チョウといってあなたが真っ先に思い浮かべるチョウは何ですか? それはモンシロチョウではありませんか? 白い姿がよく目立ち、どこでも見ることができるもっとも身近なチョウ。今回は、このモンシロチョウの特徴を利用したつかまえ方をご紹介します。
モンシロチョウは、世界中の温帯、亜寒帯に広く分布しています。日本だけでなく世界中の人々から愛されているチョウと言っても過言ではありません。そして、このチョウがこれほど身近な存在になった理由として、都会でも田舎でも、とにかくいろんな場所でよく見かけることが挙げられます。いったいそれは、なぜなのでしょうか?
その答えは、食べものと習性にあります。モンシロチョウはアブラナ科の植物に卵を産み付け、幼虫はその葉を食べて成長します。アブラナ科には、アブラナやキャベツ・ダイコンなど野菜が多いので、畑があれば大抵何かしらこれらの仲間が植えられています。また雑草にもアブラナ科は多く、タネツケバナやナズナなどの道端に生えている植物もこれらの仲間です。その結果、モンシロチョウは人の目に触れやすいところに生息していることが多いのです。
また、モンシロチョウのオスは、成虫になってからの時間のほとんどを、交尾するメスを探し回ることに使います。オスの成虫の寿命は10日前後と言われていますが、その間じっとすることなく飛び回ってメスを探すので、なおさら人の目につきやすいのです。たまに数匹のモンシロチョウが追いかけっこのように集団で飛び回っている姿を見かけることがありますが、あれは1匹のメスをめぐって数匹のオスが争奪戦を繰り広げている場面です。
モンシロチョウの成虫が活動するのは、3~4月の春先から10~11月の秋にかけてです。この間、オスは一生懸命メスを探して交尾し、メスはアブラナ科の植物の葉の裏側に産卵します。卵は1週間ほどでふ化し、幼虫になります。幼虫は葉っぱを食べて成長しながら脱皮を繰り返し、2~3週間で最終的には3cmほどになります。その後、蛹(さなぎ)になって1週間ほどで成虫になりますが、寒くなる時期に蛹になったものはそのまま越冬して春先になってから成虫になります。
このように、モンシロチョウの生涯は卵の時期から数えて約2カ月ほど、越冬するものでも6カ月ほどで、このサイクルを1年に4~6回繰り返します。一般的なチョウの仲間のサイクルは1年に1~2回なので、モンシロチョウのサイクルは比較的多いと言えます。これも、真冬の時期以外はモンシロチョウが飛んでいる姿を見ることができる理由のひとつです。
モンシロチョウのオスとメスの区別は意外と難しく、ぱっと見ただけではなかなか判断ができません。見た目で言うと、●オスよりメスの方がやや大きい。●翅(はね)の黒い部分がオスよりメスの方が多い。というくらいです。
ただ、これはあくまで人間の眼で見たときの話で、当のモンシロチョウ同士はもっと明確にオスとメスを見分けており、その明確な違いを目印に、オスは交尾相手となるメスを探しています。そこで、このオスが一生懸命メスを探す習性を利用したモンシロチョウのつかまえ方をご紹介しましょう。
白い紙に、モンシロチョウの絵を描きます。前翅の付け根から先までの長さは3cmが目安。これをおとりにして、本物のメスと勘違いして寄ってくるオスを捕まえます。
絵を描いたら、ハサミでチョウの形に切り抜きます。
切り抜いたモンシロチョウを、釣り竿や竹ひごなど棒状のものの先に貼りつけます。棒の長さは1m~1.5mもあれば充分です。
ここが一番のポイントになります。おとりのチョウの翅の部分に、日焼け止めクリームを塗ります。翅全体にまんべんなく塗ってください。
モンシロチョウのいる畑などへ行って、おとりのチョウを使ってひらひらと飛んでいる様子を演じます。
おとりをひらひらと動かしているうちに、モンシロチョウが寄ってきます。これは、おとりをメスと勘違いしたオスです。
そこで、虫取りアミなどを使って捕まえます。
これは、人間の眼には見えないモンシロチョウのオスとメスの違いを利用してオスを捕まえる方法です。
モンシロチョウのオスとメスでは翅の構造が違っていて、オスの翅は紫外線を吸収するのに対して、メスの翅は紫外線を反射する構造になっています。そしてこの紫外線は、人間の眼には見えませんが、モンシロチョウの眼には「色」として見えています。つまり、モンシロチョウの眼で見ると、オスとメスの翅の色は明らかに違う色に見えているのです。
そこで、白い紙に描いたチョウの絵に日焼け止めクリームを塗ると、紫外線を反射するようになってオスのチョウの眼にはメスのチョウと同じ色に見えることになります。だからメスのチョウが飛んでいると勘違いしてオスが寄ってくるのです。
この仕掛けは簡単に作ることができますから、皆さんもぜひ試してみてください。
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