一般的に言う冬虫夏草(とうちゅうかそう)とは「虫から生えるきのこ」の総称で、昆虫やクモなどに寄生する「虫草類」というきのこ(菌類)のことを指します(※定義については諸説あります)。「冬は虫だったのに、夏になると草(きのこ)になる」ところから、このように名付けられたそうです。
国内では約400種の冬虫夏草が確認されており、日本は冬虫夏草の宝庫と言われています。まだ研究途上な分類群なため、今後研究が進めばその数はさらに増える可能性があります。現に2020年1月には栃木県で80年ぶりに新種が見つかったことが国際学術誌で発表されて、大きなニュースになりました。
冬虫夏草の生き様はじつに奇妙です。生きた虫など宿主の体内に菌糸を這わせ、ある程度栄養状態がよくなったところでその虫を殺し、体内からきのこ(子実体)を伸ばします。
また、一口に冬虫夏草と言っても、宿主の種類やきのこ(子実体)の形は千差万別。こん棒状のものや、つぶつぶなもの、針状のものなど、いろいろな色・形のものを観察することができます。
虫に寄生しているので当然ですが、冬虫夏草は宿主となる虫が暮らす場所で見つかります。例えば、ハローウッズでよく見かける「コガネムシタンポタケ」は、コガネムシの幼虫を宿主とするため、コガネムシの幼虫が暮らす倒木や朽木で見つかります。
そして発生する場所に注目してみると、上の「コガネムシタンポタケ」のように倒木や朽木の中から生えるもののほか、地中の宿主から発生するもの、葉っぱの裏や枝などについた宿主から発生するものなどがあります。
冬虫夏草は奇妙なだけに、珍しい生きものと思われがちですが、実はそんなことはありません。ハローウッズの森の中でも何種類もの冬虫夏草に出会うことができます。とは言っても、小さいうえに見た目が地味なものも少なくないので、見つけるのは簡単ではありません。それでも、見つけやすい季節や場所、探し方のコツを知れば、誰にでも見つけられるチャンスはあります。
見つけやすい季節は梅雨から夏にかけて。暑いし、ジメジメするし、蚊も出るし、不快に思えるこの季節こそ、冬虫夏草の発生のピークです。発生量が多いぶん、見つかる可能性も必然的に高くなります。
発生場所は種類によっても異なりますが、川や沢沿いの道や斜面、薄暗い森の中など湿り気のある場所で見つかることが多いです。直射日光がガンガン当たるような乾燥した場所ではなく、空中湿度の高い場所が観察にはおすすめです。
ハローウッズの施設内だと、カケス谷という棚田へつながる谷部の斜面や日当たりの悪い雑木林でよく見かけます。
雑木林、針葉樹林、草地、田んぼなどさまざまな環境が混在するハローウッズの森は、たくさんの種類の虫が棲んでいて、それに伴っていろいろな種類の冬虫夏草が見つかります。
ハローウッズのようにいろいろな環境が入り混じった森や公園が家の近くにあれば、そこに行ってみるのもおすすめです。
※冬虫夏草さがしに出かける際の注意
森や雑木林などへ入る際は、足元の素肌をさらさない様、短ズボンやサンダル履きはやめておきましょう。また虫さされなどを防ぐためにも、長袖シャツを着るか、虫よけスプレーなどを用意しておきましょう。熱中症が心配な季節なので、こまめな水分補給を心がけましょう。
冬虫夏草さがしの途中には、様々な草木や菌類を手で触ることになります。その手で直接顔や口元を触ったりせず、森や雑木林を出たらしっかり手を洗うようにしましょう。
冬虫夏草には、古くから漢方の生薬として利用されてきた歴史があります。よって冬虫夏草=漢方薬というイメージを持つ方も多いと思います。漢方薬で出回っている冬虫夏草は「シネンシストウチュウカソウ」という特定の種類で、コウモリガというガの幼虫から発生したものです。中国やネパールなどが原産で、日本にはいない種類です。
最近では冬虫夏草由来の免疫抑制剤が開発され、多発性硬化症や臓器移植時の拒絶反応を抑制する新薬として利用されています。
さらに薬としての利用だけに留まりません。昆虫の体をカビのように白く覆うボーベリアという冬虫夏草の仲間は、害虫に寄生させることで害虫を駆除する「生物農薬」として利用されています。アブラムシやアザミウマ、カミキリムシといった農業被害をもたらす虫を抑制するため、意図的にボーベリア菌に感染させ、駆除しています。
冬虫夏草がどのような仕組みで宿主の体をコントロールしているのか、これまでほとんど明らかにされていませんでしたが、最近の研究で徐々に明らかになりつつあります。
もしかすると、冬虫夏草の感染メカニズムを応用したものが、さまざな形で私たちの暮らしを豊かにしてくれる日が来るかも知れません。
ハローウッズは42ha(東京ドーム約9個分)の広さがあり、いつでも、誰でも、思いっきり遊べる元気な森です。人と自然が楽しくかかわり合い、自ら体験し、発見できるプログラムをたくさん用意して、皆さんをお待ちしています。
ハローウッズのホームページへ2020年8月13、14、15、16日の各日開催。経験豊富なスタッフと一緒に真夏の森で虫を探そう!オニヤンマやタマムシ、カミキリムシなどたくさんの昆虫に出会えるよ。
※社会状況を注視したうえで、内容を変更して実施または開催中止の可能性がございます。ご理解くださいますようお願いいたします。
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