


2026.07.29
ハローウッズ キャスト
奥山 英治
今回ご紹介するのは、ウスバカゲロウの幼虫「アリジゴク」です。アリジゴクは、地面にすり鉢のような巣を作り、アリなどの小さな虫を捕まえて食べます。そんな不思議なハンティングの様子を映像とともにご紹介します。
アリジゴクはウスバカゲロウの幼虫なのですが、そもそもウスバカゲロウとはどんな昆虫なのか? まずはそこからご説明しましょう。
ウスバカゲロウ:トンボと違ってはっきり見える触角があります
ウスバカゲロウ:止まったとき背中の翅をちゃんとたたみます
写真で見ると分かるように、ウスバカゲロウは胴体が細長く透明な翅(はね)を持つ、トンボに似た昆虫です。しかし、トンボと違って翅を背中に伏せてたたんで止まること、目立つ触角を持っていること、トンボは飛行の達人と言われるほど飛ぶのが上手ですが、ウスバカゲロウは弱々しくヒラヒラ飛ぶこと、などの特徴があります。
また、「カゲロウのように儚い命」と言われるように、多くのカゲロウは成虫になってから数時間から数日しか生きられませんが、ウスバカゲロウは成虫になってから2週間から1カ月程度生きます。実はウスバカゲロウは「カゲロウ」と名が付いてはいますが、一般的なカゲロウとは別の種類の昆虫なのです。
それでは、ウスバカゲロウの幼虫「アリジゴク」のお話に移りましょう。アリジゴクとは文字通り「蟻の地獄」のことで、一度落ちたら簡単には脱出することができない、罠のような巣を作ってアリを捕食することから、この名が付きました。成虫は、先にご覧いただいたようにトンボに似た外見を持っていますが、幼虫は、ダルマのようなずんぐりした体と、頭から出た2本の大きなアゴが特徴的な外見をしています。
アリジゴク(体の表側):身体中に毛が生えており、これで少しの振動や動きなどをキャッチします
アリジゴク(体の裏側):足が短く、腹部を使って後進しやすい構造になっています
アリジゴクが巣を作るのは、雨が当たらない建物の軒下や木の根元などの、サラサラできめ細かな土や砂がある場所です。最初の映像でご覧いただいたように、アリジゴクは砂の中に潜ったまま、お尻を先にして後ろ向きに動きます。そして、ぐるぐる回りながらきれいなすり鉢状の巣を作るのです。
アリジゴクの巣:雨が当たらない建物の軒下などに作られます
アリジゴクのアゴ:鋭く尖り先の細かなギザギザが捕まえた獲物を逃さない形になっています
出来上がった巣は、すり鉢状の形をしており、アリなどの小さな虫がこの上を通ると、サラサラと砂が崩れてすり鉢の底に落ちてしまいます。そして這い登ろうとしても砂が崩れてうまく登れず、最後はアリジゴクのアゴに挟まれて捕らえられてしまうのです。
しかし、巣に落ちてしまった獲物も必死ですから、なんとか這い登って脱出しようとする場合もよくあります。もし獲物が逃げようとしても、アリジゴクは砂を飛ばして足元を崩し、再び巣の底へ落としてしまいます。その様子は映像のスローモーションでも見ることができます。
このように、アリジゴクは巣に落ちてきた獲物を捕まえて食べますが、食べると言っても噛んで食べるのではなく、鋭く尖ったアゴの先から獲物に消化液を流し込み、溶けた獲物を吸うように食べます。この食べ方は他の昆虫にもよくあり、ミズカマキリやゲンゴロウ類の幼虫やサシガメ類と同じです。
獲物を食べて成長したアリジゴクは、2回脱皮して最後は口から絹糸を吐いて土の繭(まゆ)を作り、その中で蛹(さなぎ)になります。
ここで面白いのは、ちゃんと獲物がかかる巣にいるアリジゴクは成長が早く、獲物がなかなか落ちない巣にいるアリジゴクは成長が遅くなるということ。早ければ1年で成虫になるアリジゴクもいれば、遅いと4年かけて成虫になるアリジゴクもいて、平均すると大体2~3年でウスバカゲロウになると言われています。
アリジゴクの繭(まゆ):絹糸にびっしり砂をつけているので小さな砂の塊のようにしか見えません
蛹(さなぎ):翅も見えてすっかりウスバカゲロウの姿に変わっています
アリジゴクの巣は、私たちの生活する場所の近くの至る所で見つけることができます。雨に濡れない乾いた地面、しかも固い地面ではなくサラサラした砂や土のある場所なら、きっとそこにはアリジゴクの巣があるはず。身近なくらしの中にひそむ、小さなハンターをぜひ観察してみてください。