


2026.05.27
ハローウッズ キャスト
奥山 英治
初夏の陽気に虫たちも活発に動き出す季節、ここハローウッズの森では大変なことが起きていました。もともと長崎県の対馬にしか生息していなかった「ハラアカコブカミキリ」が、ハローウッズの森に大量に出現して産卵していることが確認されたのです。今回はその様子を動画で撮影したので、皆さんにご紹介しましょう。
栃木県にあるモビリティリゾートもてぎハローウッズの森で「ハラアカコブカミキリ」が確認されたのは、2年前のことです。当時、スタッフの誰もが名前も知らないカミキリだったので、もしや新種じゃないかと思うくらいでした。しかし色々調べた結果、日本ではもともと長崎県の対馬にしか生息していなかった「ハラアカコブカミキリ」であることが判明したのです。
ハラアカコブカミキリ:背中に名前の由来となったコブ状の毛束があります
ひっくり返して腹部を見ると、同じく名前の通り赤い模様があります
2年前は数匹の確認でしたが、今年は産卵期を迎えた5月のこの時期、森に置いてあったコナラとクヌギの伐採木に大量に現れ、産卵していることが分かりました。
さまざまな種類のカミキリがここハローウッズに生息していますが、1種類のカミキリがこんなにたくさん集まっているのを見たのは初めてです。まるで突然沸いて出てきたような感じです。
ハラアカコブカミキリは、クヌギ、コナラ、アベマキなどの枯れ木や伐採木に卵を産み付け、幼虫は材内を食べて成長します。ハローウッズでは冬に樹木の伐採を行い、森の一角にその伐採木を置いておきますが、これがハラアカコブカミキリの格好の産卵場所となったわけです。
コナラ・クヌギの伐採木
近づくとたくさんのハラアカコブカミキリがいます
産卵場所となるコナラやクヌギの伐採木の上で、ハラアカコブカミキリのオスとメスが対になって交尾を行います。その際、冒頭の映像でご覧いただいたように、メスを求めるオス同士が激しく戦うことも珍しくありません。そして勝ち残ったオスがメスと交尾を行った後、メスは木の表面に切れ込みを入れ、穴を軽く開けてそこに産卵します。
上の映像では、交尾後、産卵中、産卵後と、入れ替わり立ち代わりで交尾をしたいオスが現れる様子が確認できます。みんな自分の子孫を残したくてたまらないのでしょう。
メスが産卵した穴はナイフで切り込みを入れたような痕(産卵痕:さんらんこん)になっており、その穴を調べると1個から3個の卵が産み付けられていることが分かりました。
ナイフで切り込みを入れたような産卵痕
産卵痕の中に産み付けられた約4mmの白く細長い卵
もともと日本では対馬だけに生息していたハラアカコブカミキリですが、1970年代に初めて九州本土への上陸が確認されました。これは、ハラアカコブカミキリが好んで産卵するコナラ・クヌギの伐採木がシイタケ栽培の原木として運ばれる際、一緒に運ばれていったためと考えられています。その後、1990年代には島根県で確認され、その後西日本全域に拡大。2010年代には千葉県へ、2020年代にはハローウッズのある栃木県でも確認されるようになりました。
このように、日本の特定の地域にしかいなかった生きものが違う地域に進出し、定着したものを国内移入種といいます。生きもの好きな人々にとっては、珍しい生きものを見る機会が増えて嬉しいかもしれませんが、これは必ずしも良い現象ではありません。例えばハラアカコブカミキリは、幼虫がコナラ・クヌギなどのシイタケの原木を食べて育つので、この幼虫が着いた原木ではシイタケがちゃんと育たなくなってしまう、シイタケ栽培にとって深刻な害虫なのです。
皆さんもこの記事の写真や動画でハラアカコブカミキリの姿を覚えたと思いますので、もし見つけた場合は、その地域の市や町の林業課などにご一報していただくと良いでしょう。