TCFDに基づく気候関連財務情報開示

Hondaは金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)により設置されたTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同しており、TCFDが提言する情報開示フレームワークに沿った開示を行っています。


リスク管理

Hondaでは、リスクマネジメント委員会において事業運営上重要なリスクを「全社重点リスク」として特定し、対応状況の確認・議論などを行っています。気候変動関連リスクである、気候変動に起因する環境規制に関わるリスクや自然災害等リスクについてもこの管理・監視項目のなかで把握し、組織特性を踏まえたより効果的なリスクマネジメント活動の展開を図っています。コーポレート戦略本部では、全社重点リスクなどの社内のリスク認識に加え、社外のリスクトレンドも反映のうえ、TCFD 提言に基づいたシナリオ分析を行い、気候変動関連リスクを評価・特定しています。気候変動関連リスクに関するシナリオ分析の結果は、リスクマネジメント委員会へ共有しています。気候変動関連リスクへの対応は、コーポレート戦略本部、事業本部、地域本部を中心に、各本部・統括部、各子会社および「部門横断タスクフォース」で推進しています。気候変動関連リスクへの対応を含むリスクマネジメントに関する重要事項については、リスクマネジメント委員会で審議しており、実施内容については経営会議で適宜報告されています。リスクマネジメント活動におけるリスク評価・管理プロセスについてはリスクマネジメントを参照ください。

Honda ESG Report 2026 |P182 リスクマネジメント


戦略

気候関連のリスクおよび機会の識別

Hondaの事業活動および見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスクおよび機会について、低炭素社会への急速な移行が進展する1.5 ℃シナリオおよび気候変動対策が十分に進まない4 ℃シナリオを参照し、以下の通り識別しています。

主なリスク

主な機会

  1. Hondaは、戦略的意思決定に用いる計画期間との整合性を鑑みて、これらのリスクおよび機会の影響が生じると合理的に見込み得る時間軸を以下の通り定義しています。
    短期:報告期末日から1年以内(年度ごとの実行計画期間)
    中期:短期終了後から2031年3月期まで(中期経営計画期間)
    長期:中期終了後から2050年(カーボンニュートラルの実現に向けた基準年)
  2. Hondaは、リスクおよび機会の影響度として、財務的影響が算定可能なものは金額基準を、その他は定性的な閾値を適用し、評価を実施しています。
    大:1,000億円以上または全社規模の影響
    中:100億円以上1,000億円未満または複数地域にまたがる影響
    小:25億円以上100億円未満または特定の地域内での影響

ビジネスモデルおよびバリューチェーンに与える影響

■気候関連のリスクおよび機会が集中している部分

Hondaの温室効果ガス排出の大半は、製品使用時におけるCO₂排出です。

このため、気候関連の移行リスクのうち、燃費規制未達による罰金支払いや販売停止のリスクについては四輪事業に、また、燃費規制強化などによるICE 新車販売台数減のリスクについては二輪事業および四輪事業に、気候関連のリスクおよび関連する機会が集中していると認識しています。

Hondaの温室効果ガス排出の残りは、企業活動による直接排出および間接排出ならびに資源採掘・廃棄などから排出されています。これらの領域に、炭素税や排出権取引(ETS)の導入による費用負担増のリスクおよび関連する機会が集中しています。

また、Hondaは製造工程において水利用をともなう事業モデルであることから、自然災害にともなう水リスクを主な気候関連の物理的リスクとして認識しています。Hondaの完成車工場が所在する地域のうち、インド、タイ、ベトナムおよびメキシコについては洪水リスクが高く、物理的リスクが集中している地域であると認識しています。

■気候関連のリスクおよび機会が現在・将来へ与える影響

Hondaは2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、影響度の大きい製品使用のCO₂排出と、自社企業活動の責任領域である企業活動のCO₂排出の削減をマイルストーンに設定し、優先的に推進しています。

自動車業界を取り巻く環境は日々激しく変化し、環境規制の変化や通商政策動向の変化など、事業環境の不透明さが増していますが、中長期的に燃費規制やZEV規制が強化された場合は、ICEの新車販売台数の減少や、規制未達による罰金などや販売停止のリスクが生じる可能性があります。

Hondaは地域ごとの市場環境、需要動向を見極めながら、EV、ハイブリッド車、カーボンニュートラル燃料、カーボンオフセット技術などを組み合わせた多角的なアプローチを加速させます。

また、自社の企業活動にともなうCO₂排出については、今後導入が予想される炭素税・排出権取引(ETS)の導入により、税務負担など財務面での影響を受けるリスクがあります。

自社企業活動の責任領域である企業活動のCO₂排出削減に対しては、①生産効率の向上と省エネルギー施策の実施 ②生産設備の電化 ③再生可能エネルギーの活用を3つの主な技術・ノウハウとして、自社の企業活動によるCO₂排出削減を実施していきます。

Hondaは、2050年に「Hondaの関わるすべての製品と企業活動全体を通じてカーボンニュートラルを実現する」ことをめざしています。この実現に向けて、自社の企業活動だけではなく、素材・部品調達から設計・開発・生産・輸送・販売・使用・廃棄段階に至るまでのライフサイクル全体を対象とし、グローバルに展開する多くのパートナーとともにCO₂削減の施策に取り組んでいきます。

戦略および意思決定に与える影響

■気候関連の移行リスクおよび機会への対応

Hondaは、2050年のカーボンニュートラル実現にむけて、EVをはじめとする電動化を長期的な気候関連の機会として位置付けています。一方で、Hondaでは足元需要動向を見据えたパワートレーンポートフォリオの見直しを行い、当面は需要の高いハイブリッド車を主軸に環境対応を行うため、開発・生産リソースを再配分する意思決定を行っています。

これらの意思決定にあたっては、電動化によるCO₂排出削減の加速と、市場環境との間で生じるトレードオフを考慮しています。

Hondaでは、地域ごとの市場環境、需要動向を見極めながら、EV、ハイブリッド車、カーボンニュートラル燃料、カーボンオフセット技術などを組み合わせた多角的なアプローチを加速させます。EVについては、さらに競争力のあるEVハードウェアプラットフォームの導入や全固体電池の研究開発についても引き続き進めていきます。 また、短中期的には内燃機関搭載製品の販売も継続する計画であることから、二輪・四輪・パワープロダクツ製品の環境性能向上にも継続的に取り組みます。

製品の電動化によってCO₂排出削減は進みますが、各国・地域の再生可能エネルギーの普及・適用状況によっては、電動製品使用によるCO2 排出が残ります。また、既販車も含めた内燃機関搭載製品に関しては、カーボンニュートラル燃料の普及へ対応していくことも必要と認識しています。そのためにHondaは、製品使用段階におけるCO₂排出削減に取り組むとともに、再生可能エネルギーの自社利用だけにとどまらず、エネルギーのクリーン化の促進に向けた渉外活動にも取り組んでいきます。Hondaは、お客様へのクリーンエネルギー供給に直接的に携わることも視野に入れながら、社会全体のクリーンエネルギー化の拡大に貢献していきます。

Hondaは、実質的なCO₂排出ゼロに到達した生産拠点を「カーボンニュートラル工場」と定義し、企業活動のCO₂削減の取り組みを進めています。四輪車の生産拠点である埼玉製作所完成車工場では①生産効率の向上と省エネルギー施策の実施、② 生産設備の電化、③再生可能エネルギーの活用という3つの主な技術・ノウハウを適用することで、2026年3月期第四四半期に、カーボンニュートラル工場を実現し、操業しています。Hondaは、全世界の四輪生産拠点でカーボンニュートラル工場を実現することをめざし、取り組みを進めていきます。

2050年カーボンニュートラルに向けた移行計画については「マテリアリティ達成に向けた主要施策とマイルストーン」を参照ください。

アプローチ「マテリアリティ達成に向けた主要施策とマイルストーン」を参照ください

■事業別の主な対応計画・進捗

二輪事業では、2025年11月のEICMA(ミラノショー)で初の電動モーターサイクル「Honda WN7」を公開し、欧州市場への供給を開始しました。2026年1月には固定式バッテリー搭載の「Honda UC3」をタイとベトナムで発売しました。両国では固定式バッテリー搭載車用の二輪CHAdeMO 充電ステーションを整備しながら、交換式バッテリーステーションの設置も進め、充電インフラの拡充を図ります。

四輪事業では、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、市場環境の変化に柔軟に対応しながら、電動製品の普及による確実なCO₂削減を推進しています。

EV領域では、2025年9月に発売した「N-ONE e:」を皮切りに、2026年には「Super-ONE」を日本、英国、アジア各国で順次展開します。さらに、2027年にはグローバル戦略車「Honda 0 α」を日本やインドを中心に投入します。一方で、高効率なハイブリッド技術の活用も強化しています。2025 年9月発売の「PRELUDE」に加え、独自に開発を進める次世代のハイブリッドシステム技術を応用し、とくに北米市場で需要の高い中・大型車セグメントを中心に適用を拡大します。

■気候関連の物理的リスクと適応策

Hondaでは「AQUEDUCT」や「Water Risk Filter」などの評価指標に、浸水解析(CaMa-Flood※3)やハザードマップによる評価補正を行い、洪水などによる操業リスクを評価し、評価結果は、拠点ごとの対策検討や改善計画の立案に活用しています。リスクの高い地域にある各拠点では、事業への影響を軽減する措置として、拠点建設時の高低差確保、増水時における下水管などからの逆流防止策の実施に加え、内水氾濫防止に向けた排水能力の強化などの対策を実施しています。また、渇水や枯渇リスクについては、節水対策や、取水/排水規制が厳しい地域に対するリサイクル設備の導入などで対策をしています。これらの取り組みにより、拠点ごとの操業リスク軽減を図っています。

  1. CaMa-Flood:河川流量や氾濫を推定するための全球規模の氾濫解析モデル

気候レジリエンス

Hondaは、当報告期間における気候関連リスク評価プロセスの一環として、毎年気候関連のシナリオ分析を実施しています。本レポートに記載の内容は当報告期間に実施した分析結果に基づいています。

■シナリオ分析の概要

Hondaでは、気候変動が事業に与える影響を評価・考察するため、パリ協定が求める水準である「産業革命前からの気温上昇を1.5 ℃未満に抑える」ことを想定した政策移行の影響が大きいシナリオ(1.5 ℃シナリオ)および環境規制が強化されず物理リスクが高まるシナリオ(4 ℃シナリオ)を選択し、シナリオ分析を実施しています。

シナリオ分析では、対象範囲を当社、連結子会社および持分法適用会社の二輪・四輪・パワープロダクツ事業に加え、これら事業が活動する拠点とし、気候変動関連移行リスクと物理リスクならびに機会を検討のうえ、シナリオ下における中長期の財務的影響を可能な限り定量化しました。なお、影響度の定量化において、移行リスクは中期および長期、物理リスクは長期の時間軸を用いています。

各シナリオ下において想定される主要な仮定は以下の通りです。

(1.5℃シナリオ)

1.5℃シナリオでは、国際エネルギー機関(IEA)の「Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」および気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のAR6「SSP1-1.9」の報告内容を参考にしました。本シナリオでは、長期的には世界全体で2050年カーボンニュートラルに向けた施策が推進され、新技術の開発や利用の促進により脱炭素製品が広く普及することや、再生可能エネルギーの利用が拡大することが想定されます。EV普及の前提となる各地域での環境規制の変化などによるEV 市場拡大スピードの鈍化や通商政策動向の変化など、事業環境の不透明さが増していますが、本シナリオにおいては、長期的には燃費・ZEV規制が強化され、先進国を中心にEV やFCEVの需要が増加すると想定されます。

(4℃シナリオ)

4 ℃シナリオはIPCCのAR6「SSP3-7.0」を参考にしました。本シナリオでは、温室効果ガス排出が高水準で継続することにより気温上昇が進行し、その結果、台風や洪水などの極端な気象現象の頻発化・激甚化、降雨パターンの変化や海面上昇など、物理的リスクの顕在化が進展することが想定されます。


指標および目標

指標である温室効果ガス排出量については「温室効果ガス排出量の推移」を、気候関連の目標およびそのパフォーマンスについては「製品使用のCO₂排出削減」および「企業活動のCO₂排出削減」を参照ください。

Hondaの取り組み「環境関連データ/温室効果ガス排出量の推移」

Hondaの取り組み「環境関連データ/製品使用のCO₂排出削減」

Hondaの取り組み「環境関連データ/企業活動のCO₂排出削減」

目標設定、レビュー、モニタリング方法

Honda がめざす姿を実現するため、2050 年での野心的目標の達成に向けた注力すべき重要テーマを設定し、5年おきに10 年後の目標を設定した上で、毎年、単年での目標設定と戦略の策定・実行・評価を行っていく経営管理としています。Hondaは、目標に対する進捗を把握するため、各管理指標を設定しており、取締役会が監督責任を有するKGI や経営会議が執行責任を有するKPIは、取締役会や経営会議が進捗を定期的にモニタリングすることで、経営ガバナンスの強化を図っています。また、Hondaは、取締役会および経営会議によるモニタリング機能を発揮し、事業環境の変化を踏まえ、適宜目標の変更要否について検討を行っています。なお、温室効果ガス排出目標および目標設定の方法論について、第三者の認証を受けていません。


レポート