Cub Stories
グローバル化時代に合わせた大変革
スーパーカブの誕生から60年を迎えようとしている今日、世界は大きく変わり二輪を取り巻く環境も変化した。スーパーカブの完成された基本的なシルエットが大きく変わることはなかったが、中身は時代に合わせ着実に変革の時を迎えていた。
50もインジェクションへ
2007年スーパーカブ50カスタム
気候変動の問題が世界規模で論じられるようになると、二輪車も排出ガス規制の対象となった。もちろん規制以前にもホンダでは排出ガスをクリーンにするための努力は行われていたのだが、1999年に施行された日本国内の新排出ガス規制(平成11年排出ガス規制)に対応するため、スーパーカブ50はキャブレターセッティングとブローバイガス還元装置を採用することに。
翌年はスーパーカブ90も同様に規制をクリアするも、スーパーカブ70は対応が行われず、1964年発売のC65から続く歴史に幕を閉じた。
その後2006年施行の二輪史上最も厳しいと言われた平成18年度排出ガス規制により多くの二輪車がラインナップから姿を消したのに対し、スーパーカブ50シリーズは電子制御燃料噴射システム(PGM-FI)とエキゾーストパイプ内の触媒の採用などでクリア。外観のデザイン、伝統の横型ユニットは継承されながら、オフセットシリンダーやローラーロッカーアームの採用など、スーパーカブ50のエンジン内部には、21世紀を生きるために大幅なメスが入れられたのであった。


エンジン
コンピューター制御で最適な燃料を供給する電子制御燃料噴射システム(PGM-FI)を採用。寒い朝などの始動を容易にする他、エキパイ内の触媒によってさらなる環境性能の向上を果たす。黒いクランクケースカバーは1982年の「赤カブ」以来。

ヘッドライト
スーパーカブ50シリーズのスタンダード、デラックス、カスタム、プレスカブ50、そしてリトルカブが平成18年排出ガス規制に対応。写真はヘッドライトをはじめとする直線基調デザインが特徴のスーパーカブ50カスタム。

メーター
平成18年排出ガス規制対応モデルよりメーターパネル内にエンジン警告灯を装備。写真の50カスタムには、1982年の50SDXに採用されたEDポジションランプがあった位置に警告灯が備わる。
日本で最大排気量のスーパーカブ
2009年スーパーカブ110
スーパーカブ90に変わるニューモデルとしてスーパーカブ110(JA07)が2009年に誕生。新設計のバックボーンフレーム、耐久性を向上させるピストン裏のオイルジェットを採用したエンジン、変速ショックを低減する2段クラッチなど大きな進化を果たす。
すでにスーパーカブはアセアンを中心としたグローバルモデルとなっており、主要部品となるフレームの一部やエンジンはタイ・ホンダから調達し、組み立ては世界のホンダの二輪マザー工場である熊本製作所が担当した。丸型ヘッドライトを採用したデザイン、スーパーカブ90と同じリアキャリアの高さなど、これまで日本で愛されたスーパーカブの伝統もふんだんに盛り込まれた。


エンジン
日本の原付二種スーパーカブは、90からアセアンで主流となっていた110に。ピストン裏に冷却オイルを吹き付けるなど、従来の90エンジンと同等の耐久信頼性を確保しつつ、全域での出力とトルクの大幅アップ、そして低燃費の実現を果たす。

フロント
フロントサスペンションは従来のボトムリンクからテレスコピックへ。剛性とストローク量が増し、より接地感のある特性となった。フロントのタイヤサイズは2.50から2.25へと細くなった。

メーター
メーターパネルの形状は従来型のイメージを踏襲しつつ、カスタムやタイカブ以外のモデルで初となる燃料計が備わる。また、フラッシャーのスイッチも二輪車として一般的な左側に移設された。
グローバルモデルへモデルチェンジ
2012年スーパーカブ110
将来的に騒音や排出ガス規制が世界で統一化されることや、ポテンシャル・アップなどを見据えた結果、全世界基本設計を同一とした通称「グローバル・カブ」と呼ばれるニューモデルへとモデルチェンジ。
日本国内向けのスーパーカブ110もこれにならって、外観ではヘッドライトやフラッシャーが角型となるなど、曲線から直線基調へと変わった。日本仕様では695mmという荷台の高さも継承された。ホイールベースが伸びたことにより直進安定性の向上も果たす。
グローバル化されたことにより、2万円(税別)の値下げもニュースとなる。同年、スーパーカブ50も車体、エンジンともに110ベースとなった新型にフルモデルチェンジ。これによりバックボーン+プレスフレームという初代C100の流れを汲むスーパーカブ・シリーズはリトルカブを残すのみとなった。


ヘッドライト
2011年6月にタイで発表されたDream 110、すなわち“グローバル・カブ”のベースとなるモデルと同じフロントマスクながら、レッグシールドの色を変えるなど、スーパーカブらしさを演出する日本独自のアレンジが施される。

レッグシールド
レッグシールドはそれまでの一体成形から左右2分割タイプとなった。これは、例えば誤って破損したり、傷をつけてしまった場合など、交換コストを下げるというアセアン地域からの要請によるもの。

メーター
大型で見やすくなった新形状のメーターパネル。ハンドル左側のスイッチは、前モデルに対しホーンとフラッシャーの位置が入れ替わった。ホンダが世界で推進する“グローバルレイアウト”に改められた。
日常と遊びのクロスオーバー
2013年クロスカブ
2012年11月、ホンダ本社ビルのウエルカムプラザで開催されるスーパーカブ・ファンの集い『カフェカブミーティング』に於いて、“スーパーカブの新たな方向性を提案するモデル”としてクロスカブ(CC110)のプロトタイプがベールを脱いだ。
“クロス”は日常と遊びのクロスオーバーを意味し、アウトドア・レジャーを意識した仕上がりで、赤や黄色の車体やスチール製の浅いフロントフェンダー、右側のサイドスタンドブラケットなどはCT、いわゆるハンターカブを彷彿させる。
翌2013年3月のモーターサイクルショーの出展を経て、6月に正式発売された。日本では1981年のCT110以来となる“遊び心”をそそるカブとなった。


フロント
スーパーカブ110と同じ17インチながら、1964年のホンダ90トレイルCT200の時代からレジャー系カブに受け継がれる2.75幅のタイヤを装着、最低地上高も20mmアップ。リアブレーキの径はφ130mmに大径化。

ブレーキレバー
ロック機構が備わるフロントブレーキレバーはトレール系カブのCT110などでもお馴染み。クロームメッキが施された大き目のバーエンドも備わる。

メーター&ハンドル
ブラックの幅広アップハンドルに独特な形状のメーターケースを装着。メーター内には“SUPER CUB”の文字が入る。丸パイプのステーで囲われるヘッドランプはフレームマウントとなる。