CBR Stories
トータルコントロールを追求した
Hondaスーパースポーツのフラッグシップモデル
1992年に誕生したCBR900RR Firebladeは、排気量をアップしながらスーパースポーツとしての総合性能を高めてきました。2002年には、操る楽しみの最大化を意味する“トータルコントロール”の追求をコンセプトにした排気量954ccのCBR954RR(日本販売名称)を発売し好評を得ました。
しかしながら、他社の1000ccクラスのマシンが進化してきたことで、ライダーからはサーキットでの高いポテンシャルを求める声が大きくなりました。このような背景から、更なる高みを目指してHondaは1000ccのニューモデルの開発をスタートしました。
Hondaの開発陣たちは開発コンセプトを「Racing DNAのきらめく結晶」と定めました。
これは、市販車にMotoGPマシンRC211Vの開発思想を継承することでした。レーシングテクノロジーを随所に反映しながら、市街地からワインディングで乗りやすく、レースでの戦闘力向上を実現したニューモデルCBR1000RR Firebladeが誕生しました。
RC211Vで培ったテクノロジーは、空力特性に優れたフルカウルの形状や、ユニットプロリンクのリアサスペンション、センターアップのエキゾーストシステムなどに採用されました。また、市販車としては世界初となるHESD(ホンダ・エレクトロニック・ステアリング・ダンパー)を採用。このHESDは、低速走行時には軽快な取り回しを、高速走行時には安定したハンドリングをそれぞれ可能とした当時における先進の技術です。
エンジンは新開発の水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ直列4気筒。極限まで軽量化とコンパクト化を追求しました。
このようにして、CBR1000RR FirebladeはHondaのスーパースポーツのフラッグシップとして誕生したのです。
(左) CBR1000RR Fireblade (欧州仕様) (右) RC211V(2003年チャンピオン車)
(左) CBR1000RR Fireblade (欧州仕様) (右) RC211V(2003年チャンピオン車)
空力特性を追求したフロントビューとリアビュー
新開発の4気筒エンジン(欧州仕様)
CBR1000RRとモータースポーツ
2004年のCBR1000RRの発売に先駆け、日本ではプロダクションレースに出場するライダー向けにCBR1000RR レースベース車を販売しました。
2004年 CBR1000RR レースベース車(欧州仕様車をベースとした限定車)
グローバルにレース活動を展開するHRC(ホンダ・レーシング)も、FIM世界耐久選手権の鈴鹿8時間耐久ロードレース(以下鈴鹿8耐)に勝利するために、CBR1000RRをベースとしたCBR1000RRWを完成させました。
デビューイヤーの鈴鹿8耐では、#7 セブンスターホンダの宇川徹、井筒仁康組が優勝し、CBR1000RRのポテンシャルの高さを実証したのです。
このCBR1000RRをベースとした鈴鹿8耐仕様車は、デビューイヤーである2004年から2006年まで3連覇を果たします。その後も2010年から2014年まで5連覇を達成するなど、耐久信頼性の高さを世界に示したのです。
2004年 鈴鹿8耐優勝 宇川徹選手とCBR1000RRW
2014年 鈴鹿8耐優勝 チーム名 #634 MuSASHi RT HARC-PRO
高橋巧、レオン・ハスラム、マイケル・ファン・デル・マーク組 写真はレオン・ハスラム選手とCBR1000RR
一方、日本のMFJロードレース全日本選手権JSB1000クラスにおいても2004年のデビューイヤーは、CBR1000RRを駆る井筒仁康選手がチャンピオンを獲得しました。同クラスでは、2005年、2006年に2年連続で伊藤真一選手がチャンピオンを獲得するなど、圧倒的な強さを発揮しました。
2004年 MFJ ロードレース全日本選手権 JSB1000クラス
シリーズチャンピオンの井筒仁康選手とCBR1000RR
2006年 MFJ ロードレース全日本選手権 JSB1000クラス
シリーズチャンピオンの伊藤真一康選手とCBR1000RR
日本におけるCBR1000RRの変遷
2006年2月発売 CBR1000RR
カウル形状の変更と各部の熟成や軽量化により車両重量を4kg軽減
2008年7月発売 CBR1000RR
外観の一新とエキゾーストシステムを変更。さらに5kgの軽量化を実現
2009年2月発売 CBR1000RR<ABS>
スーパースポーツモデル用として世界初の電子制御コンバインドABSを搭載したCBR1000RR<ABS>をタイプ追加。このシステムは、コンバインドブレーキシステムとABSの双方を電子制御化し、より緻密にコントロールすることで、ブレーキング時の安心感を大幅に高めたもの
2014年2月発売 CBR1000RR SP (タイプ追加)
車体の軽量化に加え、前後サスペンションにオーリンズ社製を、フロントブレーキキャリパーにはブレンボ社製を採用するなど、特別な仕様を施した一人乗り専用車
2017年3月発売 CBR1000RR
フルモデルチェンジし総合性能を向上
Hondaセレクタブルトルクコントロールやセレクタブルエンジンブレーキなど各種電子制御技術を搭載
CBR1000RRは2004年に登場以降、年々厳しくなる排出ガス規制に対応しながら、スーパースポーツモデルのフラッグシップとして進化を続け多くのファンを獲得しました。
そして、CBR1000RRの進化は2020年のCBR1000RR-R Firebladeに継承されるのです。
2004年 CBR1000RR