


2025.04.24
ハローウッズ キャスト
奥山 英治
桜も散りはじめ、森の木々は芽吹きが進んでいます。田んぼには水が張られて、あちこちで繁殖期を迎えたカエルの鳴く声がします。前回はハローウッズの棚田のカエルの産卵の様子を紹介しましたが、今回はそんなカエルたちの敵になる生きものと、カエルの里山での重要な立ち位置について紹介します。
ハローウッズの棚田では、春になるとカエルたちが田んぼの中に産卵します。ニホンアカガエルとヤマアカガエルの2種類だけでも、産み付けられた卵塊(らんかい)の数は600塊を超えます。1つの卵塊の中には1,500個以上の卵が入っていると言われているので、合計900,000個以上の卵が生まれている計算です。
さらにアカガエル類だけではなく、ニホンアマガエルやシュレーゲルアオガエル・トウキョウダルマガエルたちも産卵にやってきて、夏までの間、田んぼはオタマジャクシやカエル類で賑わいます。
ハローウッズの棚田
田んぼ一面を覆うカエルの卵塊
そんなカエルたちですが、実は田んぼを中心とする里山の自然の中で重要な役割を果たしているのをご存じでしょうか? カエルが成長する、卵→オタマジャクシ→カエルというそれぞれの過程で、これらをエサとしている生きものたちがたくさんいるのです。つまりカエルはそうした生きものたちのエサになることで、里山で生きる生きものたちの命を支えているというわけです。
なんとなくかわいそうと思うかもしれませんが、むしろこれが自然の摂理に叶った姿。カエルたちは成長する過程で他の生きものたちに捕食されることをふまえて、卵をたくさん産んでいるのです。
生まれたオタマジャクシが無事に成長して最終的に親ガエルになれる確率は、1~2%程度だと言われています。
そんな田んぼのカエルたちをエサとして捕食する生きものたちには、どんな者がいるのでしょう?
卵・オタマジャクシ・カエル、それぞれの段階で見てみましょう。
●カエルの卵を食べる生きものたち
卵塊を集団で襲うアカハライモリ
シュレーゲルアオガエルの卵塊に群がるアメンボ
●オタマジャクシを食べる生きものたち
自分とほぼ同じ大きさのオタマジャクシを食べるタイコウチの幼虫
待ち構えて目の前にきたオタマジャクシを捕まえ食べるミズカマキリ
●カエルを食べる生きものたち
大型の水生生物であるタガメは、オタマジャクシから自分より大きなカエルも捕まえて食べます
ヘビ類はカエルを捕食するものが多く、ヤマカガシもその一種です
カエルをエサとして捕食する生きものたちを見てきましたが、逆にカエルは何をエサにして成長するのでしょう?
まずオタマジャクシは雑食性で、田んぼの中の藻類やプランクトンの死骸などいろいろなものを食べています。成長してカエルになると、虫などを捕食します。田んぼにいる虫を食べてくれるので、人間にとっての益虫として扱われています。
しかしながら、田んぼは人がお米を作るために作った場所です。お米を順調に育てるには、虫が来ないように農薬を使用します。農薬を使う田んぼでは当然虫は少なくなり、虫を餌として生きているカエルにとっては決してすみやすい田んぼとは言えなくなります。
そんな田んぼではカエルが減っていきますが、カエルが減った田んぼでは、オタマジャクシやカエルをエサにしている生きものも減っていきます。そして最後には生きものたちが来なくなる田んぼになるのです。
最近では殺虫剤や農薬の進歩が進み、カエルの居ない田んぼが増えています。この先どうなっていくのでしょう? 生きものが多い田んぼがいいのか、お米がたくさん取れる田んぼがいいのか、大変難しい問題です。皆さんも田んぼの未来について少し考えてみてください。考えに考えた末に、将来、人間と生きものが共存できる田んぼを見つけ出すことができたら、とても素晴らしいことだと思います。