2024.04.23
ハローウッズ キャスト
奥山 英治
里山はすっかり春の装いに変わって黄色い花が地面に目立つ季節になりました。この黄色い花は誰でもよく知っているタンポポです。タンポポは昆虫たちに花粉を運んでもらい、受粉することで子孫を増やしていきますが、今回はそんなタンポポと昆虫たちの関係についてお話しましょう。
まずはタンポポの花とはどんなものなのか、あらためてご説明しましょう。タンポポといえば、1つの茎から黄色い花が一つずつ咲いているように見えますが、実はこの黄色い花は、100~200の小さな花が集まって大きな1つの花のように見えている状態です。1枚の花びらに見えるのが、よく見ると5枚の花びらがくっついた状態で、この5枚の花びらに対して「おしべ」が5本、「めしべ」が1つずつ付いており、それが本当のタンポポの「1つの花」です。
このように複数の花びらがくっついて1枚の花びらのように見える花を合弁花(ごうべんか)と言い、小さな花が円形にたくさん集まって1つの花のように見える花を集合花(しゅうごうか)と言います。よってタンポポは合弁花の集合花というわけです。
それでは、本題のタンポポの「受粉」についてのお話です。受粉というのは、おしべの先にある花粉がめしべの先に付くことで、タンポポはこれによって受精し、子孫を残します。ただし、ある花の花粉が同じ花のめしべに付いても受精することはなく、必ず違う花のめしべに付かないといけません。これは多様な遺伝子を生み出して生存する確率を高めるためのタンポポの工夫だと言えます。
ある花のおしべから違う花のめしべへ、花粉を運んでいるのは昆虫たちです。実は花粉には糖質、たんぱく質、脂肪、ミネラル、 ビタミン類など豊富な栄養素が含まれており、昆虫たちにとっては花の蜜と同様、美味しいごちそうです。花が咲くと昆虫たちは花に群がって蜜を吸い、花粉を集めて食料にします。このとき、花の上を歩き回って花から花へと飛び回るので、その際、昆虫の身体に付いた花粉が運ばれて他の花のめしべに付いて受粉するのです。
冒頭の映像はハラナガツチバチがタンポポの花を受粉させる様子ですが、これを見ていただくと分かるように、昆虫たちは花の上をぐるぐる動き回るので、その間に身体中に花粉がくっついているのが分かります。
タンポポの花は最終的には綿毛になって種を付けて飛んでいきますが、きれいに丸く種を付けているということは、あんなに多くの花なのにほぼ全てが受粉しているということ。そしてその理由は、ハチなどの昆虫たちが花の上に乗りぐるぐる花粉を求めて歩き回るからなんですね。
タンポポを見かけたらしばらく花を見てみましょう。どんな虫が飛んでくるのか観察してみるのも楽しいですよ。