日本気象協会によると、今年(2023年)のスギ花粉の飛散開始時期は例年並みで、九州から関東では2月上旬(福岡2月8日、東京2月11日)になるとのこと。しかし飛散量は前シーズンより多くなり、特に四国・近畿・東海・関東甲信で非常に多くなるという予想が出ています。ちなみにこれら「非常に多くなる」エリアでは、軒並み前シーズン比200%以上の飛散量が予想されていますので、花粉症の方は十分な予防と対策をする必要があります。ご注意してください。
そもそも、どんな年に花粉の飛散量が増えて、どんな年は少ないのでしょう? これには、前年夏の気象条件が大きく影響するようです。夏に気温が高く、日照時間が多いと、翌春に花芽(はなめ:木の芽のうち、後に花が咲いて実になるもの)が多く形成され、翌春の花粉飛散量が多くなると言われています。
昨年の夏(2022年6~8月)を振り返ってみると、特に6月の梅雨前線の活動が弱かったため、西日本の太平洋側で降水量がかなり少なくなり、また関東地方ではいったん6月27日に史上最速の梅雨明けを発表したものの、その後7月23日に訂正されることになったほどです。そして6月後半から7月上旬にかけて太平洋高気圧が強まったために東・西日本を中心にかなりの高温となり、日照時間も東日本の日本海側と西日本の太平洋側でかなり多くなりました。このように昨年の夏は「高温・多照・少雨」というスギの花芽が多く形成される条件がそろった年だったのです。
また、2021~2022年には花粉飛散量が少なかった地域が多かったため、その分、今年は一層スギの花芽形成が促進されたと考えられています。ハローウッズの森のスギの木を見てみると、やはり多くの花芽を見ることできました。遠くから見て緑色のスギ林が花芽の茶色に染まって見えるほどです。予想どおりの状況となっているのがわかります。
日本では昔からスギやヒノキなど樹種ごとの特徴をよく理解して、それぞれに合った用途で使ってきました。たとえば奈良時代に成立した日本の歴史書である日本書紀には、「スギ・クスノキは舟に、ヒノキは宮殿に、マキは棺に使いなさい」と記述されています。スギは割裂性(かつれつせい:割れて裂けやすいこと)がよく、比較的やわらかい部類に属するので加工しやすい特徴を持ち、ヒノキはスギより硬く耐久性にも優れていることから、建物の材料、特に寿命に直結する柱や土台といった大切な箇所に使われることが多いと言えます。
ハローウッズのある茂木町付近は、もともと人の手が入ったコナラ・クヌギなどの樹種が多い地域ですが、旧家の屋敷林には100年を超すスギがそびえ立っている家もあります。これは人工的に植樹した木なのですが、そうした植樹がいつごろ始まったかは明らかになっていません。茂木町の町史には、江戸時代に建築や家具に使うスギ・ヒノキ、薪炭等の材料にするコナラなど、将来収穫したい樹木の苗を植え保育管理して育てる人工造林が始まったことが記されています。
さらに時代が下り昭和時代に入ると、戦時中から戦争直後にかけての過度な伐採により荒廃した山地の復旧、高度経済成長期における木材需要の増大など、社会の経済的要請に応えるため、成長が早く日本各地の自然環境に広く適応できるスギ・ヒノキの造林が全国で推進されました。その結果、日本の里山をスギ林が覆いつくすほどになり、現在の花粉大量飛散の状況が生まれたのです。
日本全国で推進されたスギ・ヒノキの造林政策にもかかわらず、現在の茂木町は他の地域に比べてスギ・ヒノキ林が少ないエリアになっています。全国的には人工林のおよそ7割をスギ・ヒノキ林が占めていますが、比べてみると半分以下しかありません。スギ・ヒノキ林が31%、アカマツ林が11%、その他草地が4%の構成になっています。戦中戦後の過度な伐採によって荒廃したのは主に国有林だったのですが、茂木町には国有林が無かったことで、現在の広葉樹林資源が保たれました。そうした背景から、茂木町の現在の森は薪炭やシイタケ栽培などに使われて管理されてきたコナラやクヌギなどの落葉広葉樹林が全体の54%を占めています。
また比較的乾燥土壌が多い茂木町は、湿潤土壌を好むスギ・ヒノキ林の生育にあまり適していなかったのも、スギ・ヒノキが少ない理由の一つです。それを示すように、町内の谷部の約3,000年前の地層を調べると、そこから発見される木片にはケヤキが多く、泥炭層に含まれる種子にはケヤキ、トチノキ、ミズキ、マタタビの一種などがあります。さらに花粉にはスギ亜科の花粉も含まれてはいましたが、ブナ属、コナラ亜属、アカガシ亜属、クリ属、シイノキ属、トチノキ属、ケヤキ属が主です。このように大昔の茂木町には、ブナ属、トチノキ属など東北地方や標高の高いところなどで森林を形成する樹種が多かったことから、本来、冷温帯的な植生が茂木町の森の様子だったと想像できます。
昭和40~50年代、土壌条件や気候条件などを無視して画一的に植林を行ったものの、成長の悪い場所が各所で現れたのも事実です。ヒノキは「火の木」につながるとしてあまり使われなかった(もっとも高価なために、使えなかったのかもしれない)などで広がらなかったとも言われています。茂木町に生物多様性豊かな落葉広葉樹林が多く、スギ・ヒノキ林が少ないのはこうした背景があるからです。
●ハローウッズの森の様子
このようにハローウッズの森は、日本中がスギ・ヒノキ林だらけになってしまう前の、古来日本の里山の風景を見ることができる貴重な森だと言えます。ハローウッズでは、森の中を散策しながら、昔ながらの里山を垣間見ることが出来ますので、是非お越しください。
ハローウッズは42ha(東京ドーム約9個分)の広さがあり、いつでも、誰でも、思いっきり遊べる元気な森です。人と自然が楽しくかかわり合い、自ら体験し、発見できるプログラムをたくさん用意して、皆さんをお待ちしています。
ハローウッズのホームページへ森の伐採で得た丸太や枝、落ち葉を使って、森の生きものたちの命を育むタワー「生命の塔」をつくります。里山でのヒトの営みと生きものたちのつながりを肌で感じながら、森づくりを楽しみましょう。(中学生以上)
森づくりワークショップのページへHonda製品の安全性・信頼性を担う機関である品質改革センター。敷地内には昔からの原生林がそのまま残り、里山風情を楽しめます。森の中には従業員向けのウォーキングコースが整備され、休憩時間には 多くの方に活用され健康促進に繋げています。また、敷地境界における高木を、高さ7mに切り揃えた事で解放感が生まれ、日差しも差す様になり、冬季の雪解けも早くなり安全が確保されました。
栃木県芳賀郡芳賀町芳賀台52-1