巣箱を利用する鳥たちは、本来、樹皮がはがれて木の中が腐るなどして隙間や空間ができた木の穴、樹洞(じゅどう)を使って子育てをします。樹洞は比較的大きな木にできますが、ヒトの生活域の広がりとともに大木のある森林も数を減らしています。
一方、ハローウッズでは森の手入れとして、毎年クヌギやコナラ、ヤマザクラなどの広葉樹を間伐(樹木の生育を促すために間引く伐採作業のこと)しています。その際に出た間伐材を、HondaWoods(Hondaの生産工場や研究所などの事業所を取り囲んでいる森)とともに活用して巣箱を製作し、実際に森に設置しています。
また、Hondaのファン感謝祭である「エンジョイホンダ」やハローウッズでのワークショップでは、子どもたちが主役となって巣箱作りを体験しています。簡単に手作りできる巣箱は、木に掛けることで、自然の樹洞の役割を果たし野鳥たちの子育ての手助けとなるのです。
HondaWoods熊本では子どもたちが巣箱作りを体験
熊本製作所の森から出た間伐材
樹洞の役割を果たす巣箱
それでは、実際に巣箱の中に巣ができるまでの流れを見ていきましょう。シジュウカラやヤマガラは、繁殖期以外は午前中朝早くや、夕方に主に活発に活動しますが、子育ての時期は一日中大忙し。巣作りのための材料を見つけては運び、巣を整えていきます。
まず土台となるコケを積み上げたあと、ウサギなど動物の毛や、スギやヒノキの皮を集めます。それらを細かく裂いたものを敷き詰めてフワッフワの卵を産む場所を作ると、お椀型の巣が完成!
そしていよいよ産卵。シジュウカラで7~10個、ヤマガラで5~8個の卵を産み、メスがおよそ2週間ほど卵を暖めるとかわいいヒナが誕生します。その間、オスはメスにイモムシなどのエサを運んだり、巣の周りを見守ったりと子育てに協力的です。
Honda のデザイナーたちがデザインした鳥の巣箱
エンジンを模したデザインの巣箱
巣材のコケを運ぶシジュウカラ
巣材の動物の毛を運ぶシジュウカラ
卵を温めるシジュウカラ
ヒナがかえると親鳥はエサを与えに何度も何度も巣を往復します。エサとなるのは小さな昆虫が主。ツバメの巣を見ていると、飛んでいるハエやガなどを捕えてあたえている姿を観察できます。巣箱に出入りするシジュウカラやヤマガラを双眼鏡で覗くと、小さなクモや昆虫、イモムシなどを運んでくるのがわかります。
小さな虫は食べられてしまう分、多くの卵を産んだり、上手に身を隠したりしながら、少しでも生き残って子孫を残そうとしているようにも感じます。
そして野鳥も時にはアオダイショウやカラスなどにヒナが襲われることも。悲しいことですが、自然の中では食べる、食べられるの中でバランスが保たれています。野鳥の子育ての観察からは、そんな学びもあります。
軒下で子育てをするツバメ
ヒナに与えるエサをくわえたシジュウカラ
何百匹も孵化したガの幼虫
巣箱を襲ったアオダイショウ
カラスも巣を襲う野鳥の天敵
ハローウッズでは、一年を通じて季節に応じた様々な生物を撮影し、その生態を調査しています。昨年はある巣箱でシジュウカラの子育てを観察しました。
親鳥がエサをヒナに与え、一羽一羽様子を確かめているような姿や(動画1)、ヒナがエサを食べた後に出したウンチをくわえて持ち出す様子(動画2)などが見られました。
野鳥の巣は、親鳥がちゃんと世話をしながらお掃除もしているのです。
枯れ木をつついて巣穴をつくるコゲラ
顔を出したフクロウのヒナ
卵を温めるオシドリ
寝床に使うムササビ
阿蘇山麓の豊かな自然環境を活かして育てられた森“HondaWoods熊本”。2015年に整備されるまで長く眠っていた草花の種子は、太陽の光を受けて目覚め、スミレなどが花を咲かせました。そこには多くの虫たちが集まり、それを目当てに今回ご紹介したシジュウカラやヤマガラなどの野鳥もやってきました。新緑が心地よい季節、機会があれば足を運んでみてはいかがでしょうか。
熊本県菊池郡大津町平川1500
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