


2025.11.10
ハローウッズ キャスト
奥山 英治
ようやく秋が訪れた今日この頃、セミの声が聞こえなくなり、代わりにコオロギの声が耳につきます。そしてやたらと目立つようになったのがクモの巣。しかも大きなクモの巣。大きくて色が派手なジョロウグモの巣です。今回はジョロウグモの行動と不思議な繁殖方法を動画で紹介します。
クモと一言で言っても、日本には約1,500種が生息するほど種類が多く行動もさまざまで、実に奥の深い生きものです。また、ほぼすべてのクモは虫などを捕らえて餌にする肉食です。牙に毒を持ち、毒で獲物を麻痺させて獲物が動けなくなってから、アメンボやタガメ・サシガメなどと同じように消化液で獲物を溶かして飲むように食べます。畑や田んぼでは害虫を食べてくれるので、人間にとっては有難い生きものだと言えます。
クモの種類の半分は巣を作らず、残り半分の種類は巣を作ります。巣を作るタイプにも、巣の構造によって円網(円形のクモの巣)、トンネル型、立体網、受信糸網などさまざまなタイプがあり、中でもジョロウグモは大きな円網の巣を張る代表格です。ジョロウグモ属で、ナガコガネグモやコガネグモなどのコガネグモ属と似ていますが、よく見ると体の丸みや模様などが違います。
ジョロウグモ
ナガコガネグモ
コガネグモ
ジョロウグモは里山や人家の周りで見つかる、馴染みのある大型のクモです。秋になると一段と大きく成長して繁殖期を迎え、活発に獲物を捕って食事をします。
冒頭に掲載した動画は、ジョロウグモが獲物を捕らえて食べる様子を間近で撮影したものです。巣の網にかかった獲物に素早く近づき、獲物が逃げないうちに毒(獲物を麻痺させる液体)を注入。獲物が落ちないように糸でぐるぐる巻きにした後、束ねた一本の糸で中心部まで吊るしながら引き上げ、ゆっくりとじわじわ食べます。
ちなみにジョロウグモは、2個ずつ対になった目が4つ並んだ合計8個の目を持っています。また目の下には口があり、大きな牙が目立ちます。牙の先から毒を出し獲物を麻痺させ、麻痺した獲物を消化液で溶かし食べます。(※クモによって毒の強さは異なり、ジョロウグモの場合人にはあまり効きません)
ジョロウグモの目
ジョロウグモの牙
クモの繁殖は交尾(こうび)ではなく交接(こうせつ)と言い、メスの生殖器にオスが口で精子を運び受精させる方法で行われます。しかしジョロウグモのオスはメスに比べてとても小さく、メスの3分の1ほどの大きさしかありませんので、メスに不用意に近づくと食べられてしまいます。だからオスは命懸けで交接に挑みます。タイミングとしては、メスが脱皮しているときとエサを捕食しているときに交接するケースが多いようです。
動画では、メスの巣の周りでオスが待ち構えて交接のチャンスを待ち、食事中で動かなくなったメスに注意深く近づいていく様子が見てとれます。
メスに近づいたオスは、メスの腹部の付け根にある生殖器へと進みます。オスは口で精子を運んで受精させます。動画ではメスが嫌がってオスを足で払い除けていますが、それでもオスは次々と争いながらメスへと近づき、順番に交接していきます。
メスの生殖器
交接の様子
今回は、皆さんあまり見たことのないクモの食事の様子、繁殖の様子を動画でじっくり見てもらいました。なかなか興味深い行動をとることが分かっていただけたと思います。これからクモを見つけたら、注意深く観察してみてください。もっと面白い行動が見られるかもしれませんよ。