日照時間が短くなり、あっという間に日没。落葉樹の葉が落ちた里山の景色も冬らしくなってきました。多くの木が落葉して緑色が無くなり、森全体がモノクロっぽくなってくると、どうしても閑散とした印象が強まります。それで冬の森には見て面白そうなものが無いように思いますが、実は冬ならではの観察ポイントがあります。それは「葉痕(ようこん)」です。まるで人の顔のように見える葉痕は木の種類によって表情がさまざま。見ていて飽きることはありません。今回はそんな葉痕のなぜ?なに?をご紹介しましょう。
葉痕(ようこん)とは、葉っぱが木の枝から落ちた後に、枝に残る傷跡のことです。木の種類によって、円形、三日月形、線状などさまざまな形があり、また斑点の付き方も異なります。葉を落とした後の落葉樹に近づいてみると、枝のいたるところにこの葉痕が付いているのを見ることができるのです。
そもそも、なぜ落葉樹は冬になると葉を落とすのか。それは冬眠する動物と同じで、できるだけ栄養や水分を使わないようにして厳しい冬を乗り切るためです。
木の葉には、太陽の光を受けて木が成長するための栄養を作り出す役割(光合成)がありますが、冬は日照時間が短いので十分な栄養を作り出すことができません。そうなると、葉を付けている分、それを維持する栄養が無駄になります。
また、木は葉から水分を放出(蒸散)することで、新しい水分を根から吸い上げて取り込んでいますが、冬は気温が下がって乾燥した地中から水を吸い上げにくくなるため、葉から水分が出ていく一方になってしまいます。
そうしたことから、寒くなって冬が近づくと、木は葉に水や栄養を送らないように、枝と葉の間に離層(りそう)を作ります。離層とは、木からの水や栄養を止める働きをする組織で、離層が働き始めると、葉が枯れ落ちる仕組みになっています。
ちなみに、冬が近づいて十分な光合成ができず栄養分が得られなくなると、葉はクロロフィル(葉緑素(ようりょくそ):光合成で光エネルギーを吸収する役割をもつ化学物)を分解して養分に変え、幹に送ってエネルギーとして利用します。クロロフィルは葉の緑色の元になっているものですから、このクロロフィルが減って緑色が弱くなり、別の色素が目立つようになるので、紅葉するのです。そして最終的には離層の働きによって落葉します。
葉痕をよく見ると、円形やハート形などの傷跡の中に、ポツポツと斑点が付いているのが分かります。これが、目や口、鼻のように見えて、葉痕全体が人や動物の顔のように見えるのです。この斑点は、維管束(いかんそく)という水分や栄養分の通り道の跡です。維管束の形状は植物の種類によって異なりますから、葉痕も植物によって違う顔になります。そして特徴のあるものは覚えやすいので、木の名前を調べるのに役に立ちます。
さらに面白いのは、同じ植物でも葉痕ごとに少しずつ顔の表情が違うということ。泣いているように見えたり笑っているように見えたり、葉痕ごとにじっくり観察してみると、実に表情豊かなことに驚きます。
葉痕は、広葉樹の多い里山や公園などで簡単に探すことができます。植物好きな人の中には、この葉痕の写真を撮ったり、スケッチしたりして記録を集めているコレクターもいるので、皆さんもマネしてみるとより楽しいでしょう。それでは、葉痕ごとにどんな顔があるかみてみましょう。
何かイヌの顔のように見えたり、ネコの顔のように見えたり、お父さんの顔のように見えたり、誰が一番可愛い葉痕を見つけるか? 家族や友達と評価しながら探すのも楽しそうです。皆さんもぜひ、葉痕観察にチャレンジしてみてください。
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