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  • 2020.10.30

虫の中でも最強のハンター “カマキリ” のなぜ?なに? 編

虫の中でも最強のハンター “カマキリ” のなぜ?なに? 編

秋も終盤、夏の間はあんなに多く目にした昆虫たちの姿も、今ではめっきり少なくなりました。それでも、晴れた日には太陽に当たろうと日向に出てきたバッタ類や赤とんぼ、ハチ類などを見かけることができます。そして、そんな虫たちを狙って現れるのが、生きた獲物を捕らえるハンター“カマキリ” です。今回は、種類も多く身近で見つけることができる昆虫界のスター、カマキリに迫ります。

奥山 英治
ハローウッズ キャスト奥山 英治

カマキリってどんな生きもの?

生きた獲物を大きな鎌でがっしりと捕え、むしゃむしゃと捕食してしまう昆虫界のハンター “カマキリ”。そう聞くと、いかにも恐ろしい危険な昆虫という印象ですが、大きな眼のついた三角形の顔を自由に動かす様子や、体を反らして様々なポーズで相手を威嚇する姿にはどことなく愛嬌があり、昔から子どもたちに人気の高い昆虫です。

“カマキリ” というの名前の由来には、「鎌で切る」から来たという説と「鎌を持つキリギリス」から来たという説があるそうですが、そもそもカマキリの鎌は敵を切るための武器ではなく、獲物をがっしり捕らえるためのものです。またカマキリは、色や形からバッタやキリギリスの仲間と思われがちですが、バッタやキリギリスではなく、ゴキブリやシロアリなどと同じ仲間に属します。

カマキリは秋に交尾・産卵を行ない、生まれた卵は翌年の春に孵化します。チョウやガの幼虫はイモムシの姿で生まれますが、カマキリの幼虫は卵からかえった時点でほぼ成虫と同じ姿をしています。そして蛹にはならずに何回かの脱皮を繰り返しながら、真夏から秋にかけて大きく完全な大人へと成長します(不完全変態)。また冬を越すカマキリはおらず、交尾・産卵を終えるとほとんどのカマキリはその数カ月の生涯を閉じます。

カマキリの不思議な特徴・生態は?

●カマキリが多くなるのは「秋」?
カマキリをよく目にする季節といえば「秋」という印象が強いのですが、カマキリの数が秋に多くなるわけではありません。春に孵化したカマキリは幼虫の段階から狩りを行ない、生涯を通じて積極的に獲物を捕食し続けますが、まだ大人になり切れていない春や初夏は体が小さいためあまり目立たず、秋になって充分に成長すると、私たちが見つけやすくなるのです。
●カマキリを見つけるなら「花」のまわり?
カマキリを見つけるなら花を探せ!っていうくらい、カマキリは花のすぐ下で自分の体を葉・茎に擬態(体の色・形などを周囲の物や他の動植物に似せること)してじっとしていることが多いです。でも、花の蜜を吸うわけでもないカマキリが、なぜ花の周りにいるのでしょう? それは、花にやってくる虫たちを待ち伏せて狩りをするから。カマキリは自分から獲物を探し回って動くのではなく、獲物のくる場所でじっと待ち伏せて捕まえるタイプ。だから獲物の集まりやすい花のすぐ近くは絶好の狩り場というわけです。
●どうして同じ種類のカマキリに「茶色」と「黄緑」がいるの?
カマキリにはちょっと変わった特徴があります。それは、同じ種類のカマキリでも色の違う個体がいるということ。たとえば、オオカマキリには緑色のオオカマキリと茶色のオオカマキリがいます。その理由についてはよく分かっておらずいろんな説があるのですが、はっきりしているのは育った場所や環境によって色が決まるのではなく、遺伝子で決まるということ。生まれて2齢目まではみんな同じ薄茶色で、3齢目から黄緑と薄茶色に別れていきます。
●カマキリは夜になると目が黒くなるのはなぜ?
カマキリを見ていると、目の玉がずっとこちらを追いかけているように見えますが、実はそうではありません。カマキリの目は複眼といって円筒状の小さな目がいくつも並んでいる構造なので、カマキリを見ている私たちの真正面の円柱だけ、底の黒い部分が見えているのです。これを偽瞳孔(ぎどうこう)と呼んでいます。また、触角の間には単眼も3つ持っていて、明るさなどを感じています。この単眼が暗いと感じると光を多く取り入れるために複眼が大きく広がり、どの角度からでも円柱の黒い底が見えるようになります。それでカマキリの目全体が黒くなるのです。

日本にはどんなカマキリがいるの?

世界には、熱帯、亜熱帯地方を中心に約2,400種類のカマキリがいると言われています。日本ではこれまで15種類ほどが確認されていますが、今回はその中でも比較的目にしやすい代表的な5種類をご紹介します。

オオカマキリ
1オオカマキリ
オオカマキリ

日本で一番大きい種類で、大きなものはオスで90mm、メスで100mm程度にまでなります。基本的に他の昆虫たちを捕食しますが、時にはカエルやトカゲを食べることも。似た種類にチョウセンカマキリがいます。

ハラビロカマキリ
2ハラビロカマキリ
ハラビロカマキリ

オスが50mm、メスが60mmぐらいの大きさになります。他のカマキリに比べて前胸が短く、腹部は幅広く丸みがあります。暖かい地方に多く、緑色の個体ばかりで茶褐色の個体は珍しい種類です。

コカマキリ
3コカマキリ
コカマキリ

大きさは40~60mm程度で茶褐色が多い種類です。前足には目玉模様があり、これで敵を威嚇します。

ヒメカマキリ
4ヒメカマキリ
ヒメカマキリ

大きさ30mm前後の小さなカマキリ。飛ぶのを苦手とする種類が多いカマキリの中で、ヒメカマキリは動きが敏捷でよく飛び、灯火に寄ってきます。

ヒナカマキリ
5ヒナカマキリ
ヒナカマキリ

大きさ20mm前後で日本では最小クラスのカマキリ。成虫になっても翅は小さく飛ぶことはできませんが、非常に敏捷でショウジョウバエなど小さい昆虫を捕まえます。

いかがですか? カマキリがいかに面白く興味深い生きものなのか、分かっていただけましたか? カマキリは他の昆虫たちにとっては恐ろしいハンターですが、私たち人間にとって有害な毒針を持っているわけでもなく、深刻な怪我をするような鋭いハサミや角があるわけでもないので、実は親しみやすい昆虫だと言えます。皆さんもカマキリを見つけたら、ぜひ近づいてじっくり観察してみてください。
※とは言え、急に近づくとカマキリも敵の攻撃だと勘違いして反撃してきます。鎌に触れると痛いですから、彼らを刺激しないよう静かに、そして慎重に扱うようにしましょう。

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