今月は『子どもの森の遊び』で昔ながらの面白い魚釣りを紹介したので、ここではその釣りの相手として親しまれている川魚「オイカワ」を紹介したいと思います。オイカワはどこの川にも住んでいる身近な魚ですが、繁殖期が近づくとオスは自分の子孫を残すため体に特徴的な変化が表れます。今回は、このオイカワの変身にフォーカスして繁殖のための努力を観察してみましょう。
みなさん、オイカワという魚を知っていますか?
オイカワは日本の多くの川の中流域に住んでいる、体長15cm前後の魚です。人里からも近い川に生息しているので、昔から漁で捕られたり釣りのターゲットとしても人気がある、人間にとって身近な魚です。
そんな身近な存在として近所の川にも住み続けているオイカワですが、自分たちの子孫を残す“繁殖”のためには水面下で並々ならぬ努力を続けているんです。
子孫を残すために、オスはパートナーとなるメスに自分を選んでもらわなければなりません。そのため魚のオスには繁殖の時期になると体の色を変化させてメスにアピールする種類があるのですが、オイカワもその一種です。
変化した体色を“婚姻色(こんいんしょく)”といい、オイカワはこの婚姻色が特にキレイな魚です。夏を中心に暑い時期にしか見ることができないその色合いは「川の宝石」とも呼ばれるほど。写真では伝えきれませんが、浅瀬などで太陽の光を反射した魚体は、まさしく宝石のように美しく輝きます。
オスのオイカワは、この鮮やかな婚姻色でメスに自分の存在をアピールしながら、繁殖の相手を探しているのです。
婚姻色でメスの気を引いたとしても、それだけでペアになることはできません。周りでは他のオスたちも繁殖の相手を探しています。ペアになるためには、メスに近寄ろうとする他のオスと戦い、勝ち抜かなければならないのです。
そのためオスの顔の周りには、“追星(おいぼし)”というイボのような突起が現れます。
オスは追星を武器に相手を威嚇(いかく)したり、メスの奪い合いとなったときには、追星を相手の体にぶつけるように激しく体当たりをして懸命にライバルを追い払います。
魚の繁殖の多くは、メスが産んだ卵にオスが精子をかける“産卵受精”という方法で行われます。この瞬間のためにライバルを追い払ったはずのオスですが、まだここで安心することはできません。
最後まで繁殖の相手が見つからなかったオスたちは、メスが卵を産むときに割り込んで自分の精子をかけようと、そのスキを狙っているからです。
オスは体の大きさの割にとても大きく立派なヒレを持っています。このヒレの大きさもメスへのアピールのためといわれていますが、特に尻ビレは長く伸びたような形になっていて、繁殖期になるとこれがさらに大きく長く発達します。それは、産卵の時に割り込もうとする相手に邪魔をされることなく、確実に自分の子孫を残そうとするための構造です。
尻ビレにいくつもある筋と筋の間が雨どいのような深い溝になっていて、メスが産卵するときにはオスがその大きなヒレでメスの体をお腹側から包み込み、精子が溝を通って卵に直接かかるようになっているのです。
このようにして、オイカワはようやく自分たちの子孫を残すことができるのです。
地球上のあらゆる生き物は自分の子孫を残すために存在しているわけですが、自然界で繁殖していくのは簡単なことではありません。
ですから、色を変え形を変えるオイカワに限らず、自然のなかに住む生き物たちは子孫を残していくために様々な努力や工夫をしています。この「なぜ?なに?自然の大図鑑」でも、美しい声で鳴き続けてメスを探すシュレーゲルアオガエルや、光を使ってメスと交信するホタルなど、繁殖のための特徴的な行動を紹介しています。
生き物たちの一つひとつの行動にも意味がることを知ったうえで観察をしてみると、いままで以上に生き物の観察が面白くなるかもしれませんね。
今月の「子どもの森の遊び」では、川でオイカワを釣ることができる昔ながらの釣り方「あんま釣り」をご紹介しています。是非ご覧ください!
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