執行役最高財務責任者

成長と規律を両立し、
持続的な企業価値向上を支える財務戦略

執行役

最高財務責任者

コーポレート管理本部長

川口 正雄

執行役

最高財務責任者

コーポレート管理本部長

CFO就任にあたって

 Hondaはこれまで、”夢”を原動力に独創的な技術や商品を生み出し、新たな価値の創造を通じて成長してきました。この挑戦の文化こそがHondaの競争力の源泉であり、将来の成長を支える最大の強みであると確信しています。
 Hondaを取り巻く経営環境は不確実性が一層高まっています。二輪事業においては、新興メーカーの台頭による競争激化はあるものの、燃費性能をはじめとする商品力の向上や主要市場での販売拡大により、2026年3月期は過去最高の販売台数と営業利益を達成しました。
 一方、四輪事業では、コスト競争力や開発スピードに優れる新興OEMの台頭により、グローバル市場での競争がさらに激しくなっています。加えて、米国の関税政策の変更や各国の環境規制の見直しなど、事業環境も大きく変化しています。
 こうした環境変化を踏まえ、四輪事業は今後3年間を「四輪事業再構築の集中期間」と位置づけ、「経営資源の戦略的再配分」「ものづくり体質の徹底強化」「外部リソースの戦略的活用」を着実に進めることで、商品・技術競争力と収益力の回復を図っていきます。
 また、全社の持続的な成長を実現するためには、短期的な収益回復だけを追求するのではなく、ビジネス拡大と将来に向けた新事業の仕込みを継続していくことも重要です。財務面では、各事業の役割と資本配分方針を明確にし、各事業が果敢な挑戦に取り組めるように支援するとともに、Hondaの限られた経営資源を資本コストを上回る中長期的なリターンが期待できる領域へ重点的に配分してまいります。これにより、持続的なキャッシュ創出力と資本効率の向上を図り、企業価値の最大化を目指します。
 企業価値向上の実現に向けた財務戦略として、「戦略的な資源配分」「資本コストを意識した経営の強化」「資本市場との積極的な対話」の3つの取り組みについてご説明します。

戦略的な資源配分

 不確実性の高い事業環境においては、将来の成長機会を追求すると同時に、環境変化に柔軟に対応できる規律ある資源配分を行うことが重要です。Hondaは、持続的な成長の実現に向けて、創出したキャッシュを各領域へ一律に投じるのではなく、市場環境や事業特性を踏まえ、重点分野や重点地域へ経営資源を集中していきます。
 R&D調整後営業キャッシュ・フロー(電動化関連損失除く)は、2029年3月期までの3か年で、四輪事業で5兆円以上、二輪事業で2兆円以上、全社で7兆円以上の創出を見込んでいます。
 四輪事業で創出したキャッシュについては、当面の競争優位性を支えるICE/HEVを中心に投資を強化していきます。また、電動化やソフトウェア領域については、競争力確保に必要な投資を継続する一方で、アライアンスやパートナーシップの活用を通じて投資効率を高めていきます。特に巨額の投資を要するバッテリーやSDV領域においては、パートナーとの協業を深化させ、開発・投資負担の最適化と競争力強化の両立を図ります。
 一方、二輪事業は、Honda全体の財務基盤を支える安定的なキャッシュ創出源であるとともに、生産能力の増強や商品力向上に向けた投資を継続し、さらなる事業成長を実現します。また、二輪事業が生み出すキャッシュは、事業成長に向けた再投資に加え、Hondaの安定的かつ継続的な株主還元を支える重要な原資としても活用していきます。
 さらに二輪事業が創出するキャッシュを中長期的な成長の原資として、新たな事業の柱の創出にも取り組んでいます。ソフトウェア、知能化技術、バッテリー・エネルギーマネジメント、航空・空のモビリティ、ロボティクスなどの領域において、研究開発にとどまらず事業化・収益化を見据えた取り組みを加速していきます。これらの領域はHondaの技術や知見を活かせる成長分野であり、将来的には四輪、二輪、金融に続く新たな成長の柱として育てていきたいと考えています。
 今後も事業環境の変化に応じて資源配分を柔軟に見直し、成長性・収益性・資本効率のバランスを追求することで、持続的なキャッシュ創出力の強化と中長期的な企業価値向上の実現につなげていきます。

概念図

キャピタルアロケーション

資本コストを意識した経営の強化

 Hondaは、持続的な企業価値向上のためには、各事業が創出するリターンが資本コストを継続的に上回ることが重要であると考えています。その指標としてROICを重視しており、2031年3月期に全社ROIC10%以上の達成を目指しています。

 この目標を達成するためには、収益の拡大だけでなく、投入した資本に対してどれだけ効率的にリターンを創出できているかという視点が欠かせません。私たちは、ROICと資本コストのスプレッド、すなわち価値を生み出し続けることを通じ、ステイクホルダーから期待されるリターンを上回る価値創造の実現を目指しています。

 その実現に向けては、収益力の向上と資本効率の改善を両輪で進めていくことが重要です。各事業においてROICを経営指標として活用し、投資案件についても事業性や収益性に加え、資本コストを上回るリターンが期待できるかという観点から評価・管理を行っています。また、事業環境の変化や事業特性を踏まえながら資源配分を継続的に見直し、より成長機会の大きい領域へ経営資源を振り向けていきます。

 加えて、資本効率の改善に向けては、事業ポートフォリオの最適化や投下資本の適正化、政策保有株式の縮減を進めていきます。今後も、収益力の向上、キャッシュ創出力の強化、投下資本の効率化を通じて資本コストを上回るリターンを創出し、持続的な企業価値の向上と市場からの適正な評価の獲得につなげていきます。

成長を支える財務基盤

 HondaのR&D調整後営業キャッシュ・フローは3兆円水準で推移しており、四輪事業のICE・HEVと二輪および金融事業を中心とした事業基盤から安定的かつ強力なキャッシュ創出力を維持しています。この財務基盤こそが、四輪事業の再構築や電動化・知能化領域への投資を支える重要な源泉であると考えています。
 電動化関連損失を計上しましたが、Hondaは引き続き健全な手元キャッシュを確保しています。2026年3月期末における事業会社のネットキャッシュ残高は3.3兆円となり、高水準の手元流動性を維持しています。
 さらに、将来の成長機会を着実に捉えていくためには、環境変化に応じて機動的に成長投資を実行できる財務柔軟性も不可欠です。その一環として、本年6月にはユーロ建て社債を発行し、資金調達手段の多様化を進めました。調達基盤の強化により、先行き不透明な環境下においても十分な財務余力を確保し、将来に向けた投資を継続できる体制を強化しています。
 今後も、十分な手元流動性と安定した資金調達力を維持しながら、四輪事業の再構築、電動化・知能化領域への投資、さらには堅調に拡大する二輪事業やHondaの技術や知見を活かせる新たな事業領域への戦略的な資源投入を着実に進めていきます。これにより、持続的なキャッシュ創出力と財務健全性を両立しながら、中長期的な企業価値向上の実現を目指していきます。

グラフ

株主還元

 Hondaは、株主の皆さまへの利益還元を経営の最重要課題の一つとして位置付けています。
 配当については、2026年3月期までの5年間で約1.3兆円の還元を行ってきました。さらに、2031年3月期までの5年間では1.6兆円以上の還元を目指しています。2025年5月には、より安定的な配当の実現と資本コストを意識した還元を目的として、DOE(株主資本配当率)を新たな還元指標として導入しました。今後はDOE3.0%を目安に配当を実施していきます。
 これは、関税影響をはじめとする先行き不透明な事業環境が続く中でも、環境変化に強い事業ポートフォリオを基盤に、株主の皆さまへの着実な利益還元にコミットしていくという経営の意思を示すものです。
 また、自己株式取得についても、資本効率の向上および機動的な資本政策の実現を目的として、事業環境や財務状況を踏まえながら適宜実行していきます。
 株主還元と成長投資の最適なバランスを追求しながら、中長期的な企業価値向上と株主価値向上の実現に取り組んでいきます。

資本市場との積極的な対話

 Hondaは、株主・投資家の皆さまとの建設的な対話を重要な経営活動の一つと位置付けています。
 私たちは、対話を通じて経営方針や事業戦略、価値創造の考え方をご理解いただくとともに、資本市場からいただくご意見やご期待を経営に反映することで、経営の質の向上につなげています。また、株主・投資家の皆さまとの継続的な対話は、経営陣自身が事業や資本効率について客観的な視点で見つめ直す機会にもなっています。
 加えて、積極的な情報開示と対話を通じて経営の透明性を高め、市場との相互理解を深めることで、当社の価値や成長戦略に対する適正な評価の実現を目指しています。こうした取り組みは、資本効率の向上とあわせて、資本コストを上回る価値創造の実現にもつながるものと考えています。
 当社は、四半期ごとの決算説明会に加え、毎年期初にビジネスアップデートを開催し、中長期の事業環境認識や事業戦略、財務戦略、キャピタルアロケーションについて説明しています。また、資本市場の関心が高いテーマについては個別説明会も実施しており、2025年度には次世代技術に関する四輪技術ワークショップを開催し、競争力強化に向けた取り組みを説明しました。
 こうした対話の場にはCEOをはじめとする経営陣が積極的に参加し、資本市場との直接的なコミュニケーションを重視しています。今後も株主・投資家の皆さまとの対話を一層充実させることで、経営の透明性と説明責任を高めるとともに、資本市場からいただく厳しいご意見や期待も真摯に受け止め、経営改善と持続的な価値創造につなげていきます。

 Hondaは、個人株主層の拡大や株式の長期保有促進に加え、Hondaファンのさらなる拡大を目的として、株主の皆さまとのエンゲージメント強化にも取り組んでいます。
 近年は、「Hondaらしさ」を直接体感いただける機会として、体験型株主優待を充実させています。株主の皆さまからの「Hondaの製品やサービスを実際に体験したい」という声を受け、「HondaJet体験会」「マリン体験会」「レース観戦」「セーフティスクール体験会」など、Hondaならではの体験型優待を実施しています。
 また、2027年3月期には、当社の特例子会社であるホンダ太陽株式会社が製作したアパレルやオリジナルグッズを株主優待として採用しました。ホンダ太陽は、本田宗一郎の「障がいの有無に関わらず、誰もが活躍できる社会を実現したい」という想いのもと設立された会社であり、Hondaフィロソフィーの基本理念である「人間尊重」を体現する取り組みの一つです。
私たちは、株主の皆さまに製品やサービス、そしてこうした取り組みに触れていただくことで、Hondaの事業や価値創造の考え方への理解を深めていただきたいと考えています。そして、Hondaフィロソフィーへの共感を通じて、長期的にHondaを応援していただける株主との関係構築につなげていきます。
 今後も、株主の皆さまとの多様な接点を大切にしながら対話とエンゲージメントを強化し、株主をはじめとするステークホルダーの皆さまから、将来にわたって存在を期待されるHondaであり続けることを目指していきます。

マリン試乗会

Hondajet試乗会

ホンダ太陽製作グッズ