Sustainable impacts 2024/09/02
多彩なバックグラウンドを活かし、大変革時代のサイバーセキュリティを構築する
ソフトウェアの活用が広がるモビリティ業界において、増大するサイバーリスクへの対策が急務です。幅広い事業領域を持つHondaでは、さまざまな経験を持つメンバーが結集し、全領域を統括するセキュリティ部門が発足。ガバナンス体制やセキュリティ技術の構築に挑むふたりが、仕事のやりがいを語ります。
青柳 倫太郎Rintaro Aoyagi
品質改革本部 セキュリティリスクマネジメント部 セキュリティ企画監理課
医療機器メーカーでITヘルプデスクやインフラ運用を経験した後、警備サービス会社でインフラ企画~運用、セキュリティ関連業務に従事。2023年Hondaにキャリア入社。学生時代に学んだ法律の知識を活かし、サイバーセキュリティ統制業務を担当している。
藤井 竣Shun Fujii
品質改革本部 セキュリティリスクマネジメント部 セキュリティ技術管理課
自動車ソフトウェア企業でセキュリティ機能の開発に従事した後、大学院で海洋ロボットの制御手法に関する研究を行い、博士号を取得。2023年Hondaにキャリア入社し、四輪領域で攻撃検知ロジックの研究開発に従事。現在はより幅広い領域を担当している。
将来の事業を想定しながら、グローバルにサイバーセキュリティを統括する
コネクテッド領域やソフトウェアの活用が急速に拡大するなか、時代に合わせたサイバーセキュリティ対策が必要になっています。そこで、全部門を統括してサイバーセキュリティ対応を担っているのが、青柳と藤井が所属するセキュリティリスクマネジメント部(SecRim)です。
「クルマやバイクといったプロダクトだけではなく、コネクテッド領域、ソフトウェアを活用したサービスなど、将来にわたるHondaの事業を想定しながらサイバーセキュリティを統括していくことが私たちのミッションです。
セキュリティリスクマネジメント部(SecRim)には、セキュリティ企画監理課とセキュリティ技術管理課があります。私が所属するセキュリティ企画監理課は、全社的なサイバーセキュリティポリシーの策定をはじめ、法規に則したガバナンス体制の構築などを担当しています。
私自身は現在、情報収集をしながら法規やガイドラインを解釈し、グローバルに展開するためのサイバーセキュリティポリシーを作っているところです。このポリシーが策定できたら、現場で適切に運用されているかを監査する役割を担います」
「私が所属するセキュリティ技術管理課は、企画監理課とプロダクト開発現場の間に立ち、技術面の戦略を立てるチームです。そのなかで私は、サイバー攻撃を検知する技術の構築に携わっています。
世の中で起きているサイバー攻撃を調査し、クルマをはじめとしたプロダクトの仕様を踏まえた上で、どのようなロジックを構築していけばいいのかを日々検討しています」
幅広い事業領域を持つHondaにおいて、会社全体が一枚岩になって事業資産を守っていくことが重要。そのため、セキュリティリスクマネジメント部(SecRim)はさまざまな事業領域からメンバーが参画し、2024年4月に始動しました。
青柳はIT領域で業務システムのセキュリティに関わるデジタル統括部から、藤井は四輪の開発領域から。他にも、購買、販売、品質管理などメンバーのバックグラウンドは多彩。ふたりは、これまでと異なる環境に戸惑いもありながら、新たなセキュリティ体制構築に向けて奮闘しています。
「それぞれが歩んできた専門分野も異なりますし、キャリア入社のメンバーが多いこともあり、文化や共通言語のすり合わせも必要です。だからこそ、お互いに教え合い、補い合いながら作り上げていくことが大切だと感じます」
「速いスピードで変化していく技術や世の中の動向を常にキャッチアップしていくことも重要です。たとえば、AIはセキュリティ分野でも注目の技術。1週間で状況が大きく変化することもあるので、常に勉強が必要です」
グローバルで幅広いフィールドに惹かれて入社。事業領域が広いからスキルを活かせる
共に2023年にHondaに入社したふたり。青柳は、入社以前からIT領域でキャリアを歩んできました。
「最初はIT業務のアウトソーシング企業に勤めていて、医療機器メーカーの業務を担当していました。ヘルプデスクとして、PCやソフトの動作に関する問い合わせ対応などからスタートし、次第にシステムの保守・運用などにも携わるようになりました。その後転職した警備サービス会社では、インフラシステムの企画から運用まで担当していました」
Hondaに転職するきっかけとなったのは、前職で参加したプロジェクトだったと言います。それは、海外にあるグループ企業のセキュリティポリシーを策定するプロジェクトでした。
「私は学生時代、法学部で法律を学んでいたのですが、卒業後は畑違いのIT領域でキャリアを積んできました。けれど、そのプロジェクトで初めてITと法律が結びついたんです。『これはおもしろい!』と感じました。
同時に、国際的なプロジェクトだったので、海外のメンバーとのやりとりが楽しくて。当然、文化の違いがあるのでコミュニケーションは難しいのですが、そこを乗り越えていくことが楽しかったんです。
それをきっかけにグローバルにセキュリティ業務に挑戦してみたいと考えるようになり、なかでも事業領域が広いHondaに入社しました」
一方の藤井は、クルマのソフトウェア開発を行うサプライヤーでキャリアをスタートしました。
「学生時代はロボットの制御を研究していたので、制御技術が進んでいる業界に就職したいと考えて入社しました。ただ、配属先がセキュリティ機能を開発する部署だったこともあり、もう少し制御について学びたいという気持ちが出てきたのです。
そこで、燃え尽きるまで研究しようと考えて大学院に入り、海洋ロボットの制御について研究し、博士号を取得しました」
卒業を迎え、再び就職する際に志望したのが、ロボットに関連した企業。Hondaへの入社を後押ししたのは、世界初の本格二足歩行ロボットASIMOの開発実績があること、そして選考過程で出会った社員に惹かれたことが理由です。
「志望理由についてうまく説明できなかったのですが、私の言いたいことをしっかり拾い上げてくれて、理解してくれたのです。そのコミュニケーション能力の高さに驚くとともに、こういう人になりたいと憧れて入社を決めました。
また、博士号を取得した人が分野を限定せずに応募できる仕組みがある点も魅力でした。幅広い事業領域があるからこそ、専門スキルを活かせるチャンスも多いのだと思います」
「実は、私も面接を通して自分の進みたい道が見えてきた経験があります。Hondaの社員と話すなかで、自分がやりたいこととHondaでできることが合致していったんです。面接を通してHondaが第一志望に変わりました」
どこをめざすべきなのか──常に本質を問われる環境が成長につながる
入社後は、サイバーセキュリティに関わる業務を担当することになった藤井。セキュリティ領域は専門ではなかったものの、大学院で学んだロボット制御の知識が活かせたと振り返ります。
「私が担当するサイバー攻撃検知ロジックの研究開発には、製品の仕様を理解することが不可欠です。セキュリティに関してはまだまだ勉強しなければいけない部分も多くありましたが、システムとして捉えたときに、学生時代に学んだロボットや船と共通している部分がけっこうあるんです。
それをクルマに応用できることも発見でしたし、他の分野でも活かせると思うので、おもしろさを実感しています」
また、Hondaならではの文化も、自身の成長につながっていると続けます。
「前職ではいわゆる下流工程に携わっていたこともあり、Hondaに入社してから『なぜこれが必要なのか』という目的や『あなたはどうしたいのか』を問われることが多いと感じます。本当はどう考えているのか、どうあるべきなのかを、時間をかけて追求している文化があるんです。私自信、どこをめざすべきなのかを最初にしっかり考えるようになりました」
「そうですね。いつでもゼロベースで何が正しいのかを考える文化があります。既存の取り組みがうまくいっている場合でも、『本当にそれが良いのか。今は何がベストなのか』を考えて議論していることに驚きました。それはそれで大変なのですが(笑)、そこがHondaの魅力だと思います」
他にも、業界を牽引する企業だからこそ経験できる仕事も。青柳は、さまざまな自動車メーカーが参画する業界団体の活動に参加した経験が印象的だったと話します。
「サイバーセキュリティのガイドラインを設けて、各社に自己点検を呼びかける活動です。その一環で、オンライン相談会を実施しました。100社ほどが参加し、いろいろな質問が飛び交うなか、私はどう答えていいのか迷うこともあったのですが、業界団体のベテランメンバーたちはパッと回答するんです。その姿に刺激を受けましたし、やりがいも感じることができて良い経験でした。
何より、自社だけではなく日本のために活動しているという感覚が新鮮だったんです。スケールの大きな仕事に関われることもHondaで働く魅力の一つです」
技術者の育成、弁護士資格の取得。経験と知識を掛け合わせてキャリアを描く
本当の目的や物事の本質を追求することを大事にする文化があるから、主体性を持って動ける人が活躍できるとふたりは話します。
「チャレンジしたいことを受け入れてくれる環境があるので、受け身ではなく自分から動ける人にとっては、さまざまな活躍の場があると思います。挑戦を恐れるのではなく、失敗しながら良いものを作っていきたい人にはおもしろい職場なのではないでしょうか」
「好奇心が強い人が多いですよね。私もそういうタイプなので、似ている人が多いなと感じます。『自分の仕事はここまで』といった垣根もないので、おもしろそうな仕事があれば積極的に参加できますし、それを楽しめる人が多いと思います」
フィールドを限定せずにチャレンジできる環境で、ふたりもそれぞれに新たな挑戦を思い描いています。
「四輪の領域から全体を統括する部門に変わったので、もともと興味のあったロボットや船といった領域に対してもセキュリティ技術を構築してみたいと考えています。
また、時間をかけて大学院でロボット制御を学んだので、その知識やHondaでの経験を活かして、ゆくゆくは技術者の育成などにも挑戦してみたいですね。外の世界を知っているからこそ教えられることがあるのではないかと思います」
「私は今、学生時代に学んだ法律と社会人になってから培ったITの知見を組み合わせた仕事ができていることで、もう少し法律について学びたいという意欲が湧いているんです。そこで、夜間のロースクールに通って弁護士資格を取りたいという夢ができました。ITと法律が交差する場面で、技術に明るい法曹として複雑な課題に対応できる人材になれたらと思っています。
あとは、AIにも関心があり勉強をしています。社内にAIのスペシャリストをめざせる制度があるので、それを活用してAI分野のプロジェクトにも参加してみたいと考えています」
積み重ねてきた知見と経験を掛け合わせながら、大きく変革するモビリティ業界で時代に合わせた安全・安心を守る体制作りに挑みます。
※ 記載内容は2024年8月時点のものです