初代「Fireblade」から貫かれる
Hondaフラッグシップスポーツの哲学

CBR1000RR エンジニアトーク 初代「Fireblade」から貫かれるHondaフラッグシップスポーツの哲学

「素のバイク」としての最終進化形
2014 CBR1000RR SPを振り返る

宮城

お話を伺っていて、まさにこれぞ、長年変わらぬ「CBR-RR」ならではのバイクづくりだと感じました。
その新型CBR1000RRについてお伺いする前に、ぜひ振り返ってお話しいただきたいことがあるんです。それは、2008年にデビューして、2014年に「SP」をラインアップに加えるなど、非常に長きにわたって愛された先代モデルについてです。
私はCBR1000RRが「20周年」のときにもインタビューをさせていただいたんですが、「CBR-RRならではの扱いやすさと操る喜びを実現するために、バイクがバイクとして成立するのに必要な構成要素を、徹底的に磨き上げた」という言葉が印象的でしたし、実際にその通りのバイクになっていたと思います。

細川

そうですね。先代までのCBR-RRは、まさしく「素」のバイクをどこまで磨き上げられるか、ということで扱いやすさと操る喜びを実現してきていました。2014年の「SP」は、まさにその到達点と呼べるバイクだったと思います。

◆CBR1000RR SP(2014)2014年1月にデビュー。CBR1000RRをベースに、ÖHLINS(オーリンズ)製前後サスペンション、ブレンボ製フロントブレーキキャリパー、スポーツ走行に対応したピレリ製タイヤを装備したほか、一人乗り専用設計として軽量化を図ったシートレールを採用。「The Edge of CBR」を開発キーワードとし、スポーツライディングの楽しみを追求した。

宮城

今回のモデルでは、電子制御を得て、新たな一歩を踏み出したわけですが、その礎となったのが先代のCBR-RR。これをどのように捉えているのか、私としても、ぜひ確かめておきたいんです。

佐藤

先代の2014年モデルは、フューエルインジェクションのセッティングを細部まで見直して立ち上がりのコントロール性を高めたり、スポークの支持構造を見直して旋回中のタイヤグリップの適正化を図ったり。本当に細かいところまで手を入れてきて、その効果は私にも感じられるものでした。
一方で、その先代モデルの開発責任者を務めた、石川と議論をしたときに、初代から続いてきた「素のバイク」としてのCBR-RRの進化は、頂点を極めたのではないか──という結論にも達しました。

宮城

初代から歩んできた道は極めたと。なるほど。事実、非常にいい作り込みがなされたバイクだったと思いますよ。

細川

はい。私たちもそのように考えています。だからこそ、エンジンやフレームなどのバイクを構成するハードウェアは、基本的な構造を大きく変えることなく新型へと受け継ぐことができました。 その上で、改めて「CBR-RR」というバイクはどこへ向かえばいいのだろう?というのを徹底的に見つめ直して、細部までリファインしています。

佐藤

エンジンもフレームも、外見は似ているかもしれませんが、中身はほとんど別物と言っていいと思います。

細川

エンジンは高回転・高出力化のためにピストンも動弁系も作り替えました。さらにカバー類のマグネシウム化や、トランスミッションの肉抜き加工等によって軽量化を徹底しています。

宮城

そういう「見えないところ」にこだわるのはHondaらしい(笑)。今回の「SP」では、タンクも軽量なチタン製ですね。フレームは?

佐藤

フレームも他の部品同様に軽量化を施した上で、全体の剛性を見直しています。これにより扱い易さや、ライダーに与える安心感を1ランク上に持ち上げることができたと考えています。

細川

もうひとつの大きな変化は、シートレールの変更によってさらに軽量化を推し進めたということ。
「CBR-RR」にとって最も大切なのは、一般のライダーが、公道で操る喜びを堪能できること。ライダーがどんなレベルであっても「扱いやすさ」に繋がる大きな要素である「軽さ」を妥協なく追い求めるとともに、神経質な挙動を抑えた、懐の深い乗り味を追い求めたわけです。

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