TCFD提言への対応

キービジュアル

Hondaは「気候変動・エネルギー問題への対応」を環境分野における最重要課題の一つと考え、
2021年4月に「2050年に、Hondaの関わるすべての製品と企業活動を通じ、カーボンニュートラルを目指すこと」を表明しました。

Hondaは金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)により設置された
TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同しており、
TCFDが提言する情報開示フレームワークに沿った開示を行っています。

気候変動がもたらすリスクと機会について、シナリオ分析を実施し、経営戦略に反映させると同時に、気候変動に関する情報開示を推進します。


ガバナンス

Hondaは、ライフサイクルでの「環境負荷ゼロ社会の実現」に向けた取り組みをグループ全体で推進しています。Hondaは、長期経営方針や中期経営計画は経営会議(議長:取締役代表執行役社長最高経営責任者)や取締役会で承認・決議しています。気候変動問題への対応を含む最終的な監督機関は取締役会であり、経営会議では取締役会の決議事項などについて事前審議を行うとともに、取締役会から委譲された権限の範囲内で、経営の重要事項について審議しています。

また、事業活動にともなうさまざまなリスクへ対応し、社会とHondaの永続的な発展に向けた事業運営の監督を行う必要性から、気候変動問題への対応を含む「ESG・サステナビリティ」を必要スキルの一つとして定め、取締役を選任しています。

各本部、統括部や各子会社は、全社の長期経営方針や中期経営計画に基づき、実行計画・施策を企画・推進し、重要事項については経営会議で適宜、報告・承認されています。各事業本部や各地域本部では、「グローバル環境事務局会合(事務局:コーポレート戦略本部)」で共有される情報をもとに、グローバルの中長期環境方針を踏まえ、実行計画を策定し、施策を推進しています。

各地域本部では、「地域環境会議」を開催し、地域本部内でのPDCAを推進しています。各事業本部では、地域の進捗状況をモニタリングし、事業本部内でのPDCAを推進しています。
コーポレート戦略本部では各事業本部や各地域本部での進捗状況をモニタリングし、必要に応じて中長期環境方針や目標の見直しを検討します。
なお、重要事項は経営会議にて報告・承認され、取締役会にて報告・決議されています。また、気候変動問題への対応など、部門をまたぐ重要課題については「部門横断タスクフォース」を組成し、実行計画・施策の検討提案を適宜行い、重要事項については経営会議で報告・承認されています。

気候変動を含む環境に関するコンプライアンスやリスク管理については、当社の内部統制システム整備の基本方針に基づいて運用されています。

Hondaでは「環境負荷ゼロ社会の実現」に向けて、取締役会が監督責任を有するKGIや経営会議が執行責任を有するKPIは、取締役会や経営会議が進捗を定期的にモニタリングすることで、経営ガバナンスの強化を図っています。財務指標および非財務指標に連動した役員報酬制度については有価証券報告書「4コーポレート・ガバナンスの状況等(4)役員の報酬等」をご参照ください。

有価証券報告書 | IR資料室 | 投資家情報 | Honda公式サイト(global.honda)

環境マネジメント体制


戦略

Hondaでは、より持続可能な企業経営実現のために、気候変動に対するリスク・機会を特定し、全社戦略へ反映するとともに、技術・製品・サービスの進化により、新たな事業機会を創出することができるよう対応することで、企業としてのレジリエンスを高める取り組みを進めていきます。

シナリオ分析の概要

Hondaでは、気候変動が事業に与える影響を評価・考察するにあたり、パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」ことを想定した政策移行の影響が大きいシナリオ(1.5℃シナリオ)および環境規制が強化されず物理リスクが高まるシナリオ(4℃シナリオ)を含む複数のシナリオを設定し、TCFD提言にも推奨されるシナリオ分析を実施しています。シナリオ分析では、TCFD提言の分類に沿って、気候変動関連リスクと機会を検討し、シナリオ下における2030年時点の財務影響度を可能な限り定量化し、評価・考察しました。なお、シナリオ分析は二輪・四輪・パワープロダクツ事業を対象としています。

TCFD提言に基づくシナリオ分析では、以下のシナリオを主に使用し、想定する世界観を整理しました。

1.5℃シナリオ

1.5℃シナリオでは、IEA(国際エネルギー機関)のNZE(NetZeroEmmissionsScenario)、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のAR6SSP1-1.9の報告内容を参考にしました。1.5℃シナリオでは、世界全体で2050年カーボンニュートラルに向けた施策が推進され、新技術の開発や利用の促進により脱炭素製品が広く普及することや、再生可能エネルギーの利用が拡大することが想定されます。また、循環型経済への移行が加速することが想定されます。自動車業界では、燃費・ZEV規制がさらに強化され、先進国を中心にEV(電気自動車)やFCEV(燃料電池自動車)の需要が増加する見込みです。さらに、二輪・四輪・パワープロダクツ事業において、脱炭素製品やサービスを好むお客様が増加するなど顧客価値観の変化が想定されます。


4℃シナリオ

4℃シナリオはIPCCのAR6SSP3-7.0を参考にしました。4℃シナリオでは不可逆的な環境の変化が想定され、自然災害が頻発化・激甚化することが想定されます。


主なリスクと機会およびその対応

分類/シナリオ リスク 機会 対応
移行リスク 1.5℃ 政策・法規制
  • 燃費規制未達による
    罰金支払い
  • 燃費規制強化による
    ICE(内燃機関)新車販売台数減
  • 炭素税・排出権取引(ETS)の
    導入による費用負担増
  • 電動化製品やサービスの販売拡大
  • 省エネルギー施策の導入や再生可能エネルギーの
    活用による事業運営コスト削減
  • 電動化をはじめとするカーボンニュートラルに向けた環境革新技術の投入や
    エネルギーの多様化対応、トータルエネルギーマネジメントの取り組みの推進
  • 生産効率向上、省エネルギー施策の導入、
    低炭素エネルギーへの転換、再生可能エネルギーの活用の推進
市場の変化
  • 市場のエネルギークリーン化に伴う
    エネルギー購入価格の上昇
物理リスク 4℃ 急性・慢性
  • 自然災害による資産損害
  • 営業停止またはサプライチェーン
    寸断による生産停止の発生
  • 災害時に非常用電源へ転用が可能な、
    電動化製品の需要増
  • 事業継続計画(BCP)の策定、見直しおよび訓練実施による対策の実施
  • サプライチェーンの見直しおよび強化

記載されているリスクと機会ならびに対応は、すべてを網羅するものではありません。


リスク管理

Hondaでは、「リスクマネジメント委員会」において事業運営上重要なリスクを「全社重点リスク」として特定し、対応状況の確認・議論などを行っています。気候変動関連リスクである、気候変動に起因する環境規制に関わるリスクや自然災害等リスクについてもこの管理・監視項目の中で把握し、組織特性を踏まえたより効果的なリスクマネジメント活動の展開をはかっています。コーポレート戦略本部では、全社重点リスク等の社内のリスク認識に加え、社外のリスクトレンドも反映のうえ、TCFD提言に基づいたシナリオ分析を行い、気候変動関連リスクを評価・特定しています。気候変動関連リスクに関するシナリオ分析の結果は、リスクマネジメント委員会へ共有しています。気候変動関連リスクへの対応は、コーポレート戦略本部、事業本部、地域本部を中心に、各本部・統括部、各子会社および「部門横断タスクフォース」で推進しています。気候変動関連リスクへの対応を含むリスクマネジメントに関する重要事項については、リスクマネジメント委員会で審議しており、実施内容については経営会議で適宜報告されています。リスクマネジメント活動におけるリスク評価・管理プロセスについてはHonda ESG Data Bookを参照ください。

Honda ESG Data Book 2024 p.140(PDF:13.7MB)


指標と目標

Hondaは、2050年にすべての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルをめざしています。
2050年CO₂排出実質ゼロにむけた指標目標については以下を参照ください。

2030年目標 2050年めざす姿
企業活動CO₂
排出総量削減率
(2019年度比)
46% CO₂排出実質ゼロ
電動製品販売比率 二輪車 15%
四輪車 30%
パワープロダクツ 36%
製品CO₂
排出原単位削減率
(2019年度比)
二輪車 34.0%
四輪車 27.2%
パワープロダクツ 28.2%

HondaのGHG排出量

Hondaはモビリティに携わる会社として、責任を持ってGHG排出量を算定・開示することが、全世界でGHG低減に向けた取り組みを積極的に推進していくために必要なことだと考えています。

事業の特性上、販売した製品の使用時からのGHG排出量を含む、バリューチェーンからの排出量が大きいことにより、スコープ3を算定・開示することが重要と考えています。したがって、Hondaからの直接排出(スコープ1)、間接排出(スコープ2)に加えて、バリューチェーンからの排出(スコープ3)を算定し開示しています。

今後もデータの把握・管理を進め、GHG排出量低減施策の実践に活かしていきます。

(t-CO₂e) 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
バリューチェーン
全体の排出
3億312万 2億5,448万 2億8,002万 2億8,823万 2億7,049万
スコープ1 124万 112万 116万 109万 107万
スコープ2 379万 338万 314万 273万 207万
スコープ3 2億9,809万 2億4,998万 2億7,572万 2億8,441万 2億6,735万
  • スコープ1・2・3はGHGプロトコルにて定義されている。
  • スコープ1・2:本田技研工業株式会社および国内外の連結子会社・関連会社の企業活動からの直接・間接GHG排出量。一部小規模な会社は除く。詳細についてはHonda ESG Data Book 2024 p.149(PDF:13.7MB)を参照。
  • スコープ3:カテゴリー1・2・3・4・5・6・7・9・10・11・12・15の合計。

2021年度からスコープ3カテゴリー11は算定方法を変更。詳細についてはHonda ESG Data Book 2024 p.148(PDF:13.7MB)を参照。


レポート