Monkey Stories
オフロード好きの開発者の遊び心が生み出した
BAJAレースをオマージュしたモンキー
1991年、モンキーの仲間に新たに加わったのは、遊び心にあふれたオフロードバイクイメージのモンキーBAJAでした。
BAJAとは、メキシコのバハ・カリフォルニア半島を縦断するデザートレースのこと。複数のレースが行われますが、なかでも1000マイルを一気に走るBAJA 1000が知られています。アメリカンホンダはこのレースに積極的に参加して、二輪車クラスで何度も優勝しているのです。
1987年に発売されたモンキーRがロードレーサーのスタイリングであるのと対照的に、このモンキーBAJAのスタイリングはオフロードのBAJAレースマシンをイメージしたものでした。
BAJAレースは真っ暗な荒野を一晩中走るため、車体には光量が大きいデュアルヘッドライトの装備が必須でした。そのため、モンキーをベースにしたこの車体にも、アイコニックなデュアルヘッドライトを装備しました。他にはシャープなデザインの燃料タンクとシートを装備。デュアルヘッドライトの上部には、ゼッケンプレート兼用のメーターバイザーを採用しました。アップハンドルには、小石などから手を守るナックルガードを装着するなど、さまざまな装備から本格的なオフロードモデルを思わせる仕様にしました。
さらにオフロードモデルに近づけるべく、ベース車のモンキーに対して、車両重量の軽減も図りました。
モンキーBAJAの開発は、オフロードバイクが大好きな開発メンバーによって手掛けられました。彼ら自身が、数あるオフロードのなかでもHondaとゆかりの深いBAJAレースに出場したマシンをオマージュ対象の候補に挙げて実現したのです。Hondaでは以前1987年に250ccのXLR BAJAを発売したので、このモデルもモンキーBAJAのイメージづくりに役立ちました。
モンキーBAJAは、歴史と伝統のあるBAJAレースをイメージした異色のキャラクターとしてモンキーファンに愛用されました。1992年には、カラーリングを変更したモデルが発売されました。
そして、1993年に細部を変更したモデルが最終となりました。
モンキーシリーズのなかでも、ひと際目立つスタイリングのモンキーBAJAは、カタログにおいても遊び心にあふれたものになりました。
HondaとBAJAレース誕生の関係
1962年、Hondaは本格的なオフロード仕様のドリーム CL72スクランブラーを発売しました。このCL72は、250ccロードスポーツのドリーム CB72 スーパースポーツのエンジンを流用しながら、専用設計のセミダブルクレードルフレームやサスペンションの採用などで、オフロード走行に対応したモデルでした。
オフロードスポーツが盛んなアメリカでは、このCL72を使った耐久テストの企画が練られました。メキシコのバハ・カリフォルニア半島を一気に縦断するという壮大な計画でした。この計画にライダーとして参画したのが、Hondaディーラーに務める2人の青年だったのです。
そしてCL72による耐久テストで彼らは、963マイル(約1541km)を39時間59分で走破したのです。
このテストを機にCL72の耐久性は広く知られることになり、バハ・カリフォルニア半島を舞台に行うレースの開催への期待が膨らんでいきました。こうして、1967年に第1回目となるBAJA 1000が開催されました。