ライダーを第一に
「CBR-RR」という新たなジャンルのバイクへの進化
宮城
皆さんのお話から、新時代に向けて走り出した「CBR-RR」の進化を、存分に感じることができました。
初代CBR900RRの誕生から四半世紀。モーターサイクルを取り巻く環境はもちろんですが、コンピューターやネットワークの発達により、モビリティーのあり方そのものも大きく変化しようとしています。
Hondaは、これからの時代の「スーパースポーツ」という存在を、どのように進化させていくべきだと考えているのでしょうか?
細川
やがて、自動運転のクルマなども道を走り始めるようになると考えられています。その中で、人間が操る「バイク」……中でも、スーパースポーツという「人間が操る」ことに価値のある乗り物が、うまく他の交通と共存していくためには、今回チャレンジした電子制御技術がさらに重要になると思います。その上でもっと進化のスピードも上げていかなくてはならないと考えています。
「CES2017」に出展した「Honda Riding Assist」もいいかもしれませんし、たとえばですが、街中や高速道路は自動操縦で移動してくれて、ワインディングでは操ることを思い切り楽しめるようにするというのもいいかもしれません。
◆Honda Riding Assist世界最大の家電見本市「CES2017」に出展したコンセプトモデル。ASIMOに代表されるヒューマノイドロボット研究で培ったバランス制御技術を二輪車に応用し、ライダーが乗っていても、いなくても自立が可能で、ライダーが少しバランスを崩しても、バイク自体がバランスを保つ。これにより低速時や停止時のふらつきや取り回しの際の転倒リスクを軽減することが期待できる。
宮城
「Honda Riding Assist」が、街中のような極低速での安定性をカバーしてくれたら、もっとスーパースポーツという存在が身近になりますよ。これは私としては一日も早く実現してほしいですね!一日も早く(笑)。
細川
これからもライダーが「操る喜び」を味わえるようにするために、既存の価値観にとらわれずに進化をさせていく。各メーカー間での競争も激しいですが、これは我々がやらなくてはならないことだと考えています。
宮城
いまの時代、CBR1000RRのライバルはたくさんいると思うんです。国内外のスーパースポーツだけではありませんよ。
例えば、バイクを買うお金で海外旅行に出かけたら一生の思い出になるような美しい景色を見られるかもしれませんし、いい楽器やカメラを手に入れれば、自分が本当に表現したいものを、世の中に発信できるかもしれない。ジュエリーやクロノグラフだって相当に選択肢が広がって、本当に自分に相応しいものが選べるでしょう。
CBR1000RRは、これらに匹敵する価値をライダーに提供できなくてはいけませんよね。開発陣としては、この「数百万円分の価値」というのを、どのように考えているのでしょう。
CBR1000RR 開発責任者 佐藤 方哉(さとう まさとし)以下・佐藤
私たちも、そのことを常に考えながら開発をしてきました。
その上で、CBR1000RRが提供できるのは、やはり思いのままにバイクを操り、スポーツを楽しむ「操る喜び」だと強く思うのです。それも、四半世紀にわたって常に磨かれ続け、私たちだけがかたちにできる、CBR-RRならではの「操る喜び」──「トータルコントロール」性能です。
CBR1000RRを手にすれば、この喜びをお好きなときに毎日でも、お好きな場所で、お好きなだけ楽しんでいただけます。自在にバイクを操る喜びのある生活が、日常になるんです。
細川
だからこそ、市街地からサーキットまで、幅広いシーンで楽しめるようにすることにこだわりましたし、電子制御を活用して、ライダーが成長していけるように「ライダーが主役」となれる制御を緻密に作り込んでいったんです。
佐藤
それと、これは胸を張って言えますが、今回のCBR1000RRは、圧倒的に完成度の高いスーパースポーツになったと自信を持っています。走行性能を磨くだけではなく、配管やハーネスの取り回し、ボルトの見え方は徹底してこだわりましたし、カウル末端の造形に至るまでクオリティを追求しました。塗装の質感もさらなるレベルに引き上げましたから、たとえ10年乗り続けたとしても、変わりなくお乗りいただけると思います。なにしろ、長い時間をかけて楽しめるバイクですからね。
宮城
なるほど。佐藤さん、開発責任者として今回の開発を振り返って、総括をしてみていただけますか?
佐藤
このCBR1000RRは、「スーパースポーツ」というジャンルを創出したモデルだと言われています。でも、今回の開発を終えて強く感じているのは、多くのライバルが居並び、パフォーマンスを第一に競い合う一群から抜けだし、あくまでもライダーを第一に考えた「Fireblade」という新しい乗り物になったんじゃないか、ということです。
バイクを操るということに喜びを覚え、毎日、毎週末でも楽しみたい。さらなる高みを目指していきたい──そう考えるライダーの方には、最善の一台になると確信しています。
宮城
わかりました。25年を経て、変わらぬコンセプトの元に新たなステップへと踏み出したCBR-RR。これからのさらなる進化も楽しみにしています。ありがとうございました。