Honda OBで組織されたボランティアクラブ。
現役時代に開発の最前線で多くの実績を
残してきた技術者たちが、
公益社団法人自動車技術会が主催する
学生フォーミュラ日本大会に
出場するチームを対象に
「学生フォーミュラチャレンジ講座」を
開講するなど 「モノづくり」の技術支援を実施。
Hondaで学んできた“活きた技術”を熱心に、
そして温かく学生たちに伝え続けている。
県立鹿児島工業高校機械科を卒業後、1960年4月に本田技研工業株式会社入社。同年、7月に株式会社本田技術研究所独立に伴い転属し、試作部門に約10年従事、エンジン設計部門へ転属。二輪車の開発に従事し、主にレース用エンジンの設計を担当する。後に株式会社ホンダレーシングに転属し、ワークスレース活動の管理業務、二輪市販レース車開発管理などを担当。1998年10月、本田技研工業株式会社総務部に転属。企業内の創造性向上施策の研究を担当する。定年退職後、2001年10月よりモノづくり支援組織「マイスタークラブ」に参加。
Hondaの創業者・本田宗一郎さんの言葉です。これが私の原点。だからこそ、学生たちに「そんなことやっても無駄だよ」とは絶対に言いません。アイデアの芽は決して摘まず、学生たちが挑戦できる環境を大事にしたいからです。例え失敗したとしても、挑戦は必ず自分のチカラになります。
宮田さん(左)が本田宗一郎社長(当時)をサイドカーに
乗せて
スタントをする様子(研友会の運動会にて/1967
年頃、和光研究
所のグランド)
写真提供:宮田 卓英
私がモノづくりの本当の楽しさに気付いたのは、Hondaに入社直後、配属先の試作課で部品加工を担当していた時です。本田宗一郎社長(当時)が試作中の部品に設計ミスを発見し、怒りのあまり加工途中の部品を床へ投げつけるという出来事がありました。私は大事な試作品を壊された事に納得できず、社長への抗議を上司に提案。上司はすぐに抗議してくれ、社長は素直に過ちを認めてくれました。その上で「モノをつくる人は設計図を鵜呑みにせず、設計者のミスに気づき、指摘してあげなさい。それがモノづくりのプロだよ」とのアドバイスもいただきました。上司と社長の誠実な対応とモノづくりのプロの心得に感動したことを今も強く覚えています。それからは自分が描いたモノだけでなく、人が描くモノに対しても興味を持つようになり、みんなでモノづくりをする楽しさをより感じるようになりました。
学生フォーミュラ活動は“共創”を経験できる素晴らしい機会でもあります。共創とは、厳格な上下関係のない、みんなが平等の組織で、それぞれが影響し合い、一緒にモノづくりをしている状態です。例えるなら「おでん」。一つの鍋の中にこんにゃくや大根などいろんな食材が入っていて、お互いに影響し合っておいしくなりますよね。学生フォーミュラのチームも、興味を持ったいろいろな人たちが参加し、それぞれが得意分野を持ちながら互いに影響し合っています。私もHonda時代を振り返ると、共創できていたおかげで生き生きとモノづくりに取り組めていました。学生たちにも共創の楽しさを実感してほしいと思っています。
共創は「おでん」に似ている
大会中止はとても残念ですが、自分たちで企画し、仲間とともに車1台を作り上げたことは素晴らしい経験です。自信を持って前に進んでください。また、見方を変えれば、今年作った車をさらに1年熟成できるチャンスが生まれたとも言えます。プラスに考えて、これからも挑戦を続けてください。
学生フォーミュラ活動支援における
エンジン整備講座の様子
学生フォーミュラ支援で知り合った若者たちと、今もSNSを通じてつながっています。社会人になった彼らがモノづくりの現場で活躍している様子や夢が実現した話を聞くと嬉しくなりますね。学生たちには、自分の創意のもと、多くの人が喜んでくれる新しい「モノ」や「コト」を楽しみながら実現できる、創造力を持った技術者になって欲しいと思います。そのために大切なのが“挑戦”です。成功すれば素晴らしい感動が得られ、仮に失敗したとしても、きっと新たな目標が生まれることでしょう。私自身、Hondaがモーターサイクルのレースに参加していない時代に有志でレースに参戦したり、Honda初の2サイクルエンジンを開発するなど、多くのチャレンジをしてきました。良い結果が出れば、みんなで喜びを共有してきました。まさに共創です。モノづくりには苦労はありますが、喜びの方がずっと大きいということを、実体験を通してこれからも伝え続けます。
Hondaはマイスタークラブの活動を通して、
机上の研究だけでは学べない
「次世代への技術の伝承」を実践してきた。
技術に裏打ちされた経験、知識、知恵を駆使し、
モノづくりの喜びも伝え続けてきた。
そして今、コロナ禍という逆境に立ち向かいながら
学生たちの活動を支援し続け
るという新たなチャレンジの真っ最中だ。
モノづくりの大切さを誰よりも知っているからこそ
Hondaは次世代への技術の伝承を決して止めない。
私たちはこれからも学生たちの
夢や挑戦をサポートし続けます。