リソースサーキュレーション

製品の電動化にともなう希少資源の採掘がもたらす環境負荷

私たちの生活は生産・消費・廃棄をともない、さまざまな資源によって成り立っています。世界人口の増加や経済発展を背景に、
資源需要は伸び続けており、大量の資源採掘は社会課題となっています。これは、限りある資源を大量に消費するということに加えて、
資源採掘がエネルギー消費・CO₂排出や土地改変をともない、自然資本に依存・影響を与える環境負荷となるためです。

製品の電動化は、製品使用のCO₂排出を削減する有効な手段ですが、従来の内燃機関搭載車に対し、
電気自動車では銅やニッケル・コバルト・リチウム・レアアースなど希少資源を多く使用します。

希少資源の採掘には、膨大なエネルギーの消費と大量のCO₂排出が発生します。
そのため低エネルギーで循環を可能とする、資源の効率利用(以下、リソースサーキュレーション)が重要となります。

新車製造時は約9割が新たに採掘した資源に依存している一方、
解体後の資源の約7割はリサイクルされ再利用されるものの他産業にカスケード利用され、
残りの約3割は焼却による熱利用または埋め立てられているのが実態です。また、現状の自動車は素材に求める品質レベルが高いため、
再生材を使用するとコストが高くなります。加えて、製品の電動化を進めると、希少資源を大量に必要とするため、
資源価格上昇と調達のリスクを招き、商品やサービスが提供できなくなる可能性があります。
そのため、再生材に経済合理性を持たせるリソースサーキュレーションが重要です。

生産・廃棄を前提とする売り切り型ビジネスでは、リサイクルプロセスがこれまでのサプライチェーンに含まれていません。
従来のビジネスの枠を超え、関連する業界との連携を図りながら、リソースサーキュレーションを実現していきます。
カーボンニュートラルと併せて資源利用に関する社会課題にも向き合い、
モビリティを通して「自由な移動の喜び」を永続的に提供し続けるため取り組んでいきます。

  • 従来の物質フロー

  • ありたき循環型の物質フロー


使い切った製品を最大限活用する水平リサイクルの実現

Hondaが目指すリソースサーキュレーションは、製品価値を使い切った車両(以下、ELV:End of Life Vehicle)を最大限活用する
水平リサイクルによる資源利用です。水平リサイクルの実現には新たな「循環型バリューチェーン」が必要です。
この構築のため、これまでの企業活動の枠を超え自社に不足するケイパビリティを獲得していきます。
この取り組みを通して得られる知見や技術は循環を前提とした新たな事業・製品、
そしてそれらを実現する革新技術の仕込みになると考え、大量消費型から循環型への「ビジネス変革」も見据えて取り組んでいます。


リソースサーキュレーションにおける経済合理性の創出

リソースサーキュレーションには、ライフサイクルを通して製品・部品価値を使い切ること、使用済み製品を高効率に再資源化すること、
それらを通じて製品1台分で経済合理性を生み出していくことが重要です。

製品や部品の価値を使い切るために、製品・部品のリユース・リパーパスに取り組んでいきます。
また製品ライフサイクルにおける「価値を見える化」するデータを活用し、
法規制対応の証明や製品・部品の適正取引および利用促進につなげていきます。

使用済み製品を高効率に再資源化するために、製品へ「循環を前提とした材料・設計」を取り入れることが重要となります。
現在開発中の製品は、循環を前提とした材料への置換や材料種の統合を進めるとともに、
再生材の適用を可能とする材料仕様・製法などに変更していきます。
また、ELVを高効率に解体するための易分離設計を拡大し、複数の材料から構成される部品については、単一材料まで容易に分離できる構造、
再資源化の際に不純物となる素材を混入させない構造に転換していきます。

このような製品への仕込みに加えて、将来の水平リサイクルを拡大するために、
環境負荷の軽減と経済合理性を両立する「先進的なリサイクル技術」として、
解体・破砕・選別・再資源化などの技術開発を協力パートナーとともに取り組んでいきます。


リソースサーキュレーション 5つの要諦

リソースサーキュレーション概念図

  • Business Innovation

    ライフサイクル全体を通した製品・部品の使い切りと高効率な再資源化を実現する循環型ビジネスへの転換に取り組みます。

    Advanced Recycling

    省エネルギー、低炭素、低コストでのリサイクルを可能にする先進技術の研究・開発に取り組みます。

    Data Traceability

    法規制対応の証明や、再生材の適正取引や利用促進のため、ライフサイクルCO₂排出量やリサイクル率などの「社会的価値」の見える化に取り組みます。デジタル技術の幅広い活用を通じて、メンテナンス履歴の証明や資源回収率の向上などに取り組みます。

  • Circular Design

    循環を前提とし、循環に適した材料の選定、良質なスクラップを容易に取り出せる易解体・易分離設計、安定的な再生材調達の仕組みづくりに取り組みます。

    Circular Value Chain

    素材メーカーや解体・破砕業など資源循環に関わるサプライチェーン全体でスペックを最適化し、経済合理性を最大化する循環型バリューチェーンの構築に取り組みます。


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