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【特別対談】Hondaが描くコネクテッドの未来──“挑戦”こそが原動力だ

HondaがDrivemode, Inc.(以下Drivemode社)を完全子会社化したのは、2019年のこと。それ以来両社は思い描くビジョンの達成を目指し挑戦を続けています。今回は、Hondaのコネクテッド事業統括部を率いる京光 達哉とDrivemode社 CEOの古賀 洋吉氏が特別対談を実施。コネクテッドの未来や連携のリアルを語ります。

京光 達哉Tatsuya Kyomitsu

モビリティサービス事業本部 コネクテッド事業統括部 統括部長

1998年大学院卒業後に新卒入社。本田技術研究所に配属となり、北米向けナビ・音声認識システムの研究開発やF1運動性能解析などに従事。その後、2011年にアメリカシリコンバレーに駐在し、最先端のIT技術開発を推進。2015年に帰任し、四輪ボディ電装開発室長、新領域の開発戦略室長などを経て、2020年4月から現職を務める。

古賀 洋吉Yokichi Koga

Drivemode, Inc. CEO

2000年に大学を卒業後、アクセンチュア株式会社に入社し、戦略グループに配属。2008年アメリカのビジネス・スクールでMBAを取得。同国でベンチャーキャピタルファンド、カーシェアリングサービスの世界戦略、スタートアップ創業を手がける。2014年にDrivemode社を設立し、ソフトウェア開発を担う。

Honda史上初!グローバルなアプリ開発をDrivemode社との協業で達成

Hondaはデジタル・コネクテッド領域においてさらなる新しい価値の創造を行うため、2019年9月にシリコンバレーに本社を置くDrivemode社を完全子会社化しました。2015年から「Honda Xcelerator(ホンダ・エクセラレーター)*」にて共同開発を行い、2021年11月現在は、Honda二輪の一部で利用できるコンパニオンアプリ「Honda RoadSync」に関わる業務をメインで進めています。

*スタートアップ企業とHondaのコラボレーションを促進するオープンイノベーションプログラム。本田技術研究所の子会社で、米国・シリコンバレーを中心として活動を行っているHonda R&D Innovations, Inc.が中心となり、グローバルに推進している

ほかにも、ドライビングシステムをいかに良くしていくか考えたり、コネクテッドサービスのなかでもHondaの独自性を発揮できるようなアプリケーションを企画したりもしています。

京光 「Hondaが策定した2030年ビジョンの達成に向けて、Hondaの尖った部分をさらに尖らせるために、スタートアップの知見と人材を活かした協業を進めています。2021年4月に三部が打ち出したHondaの方針に対して、我々コネクテッド領域がいかに貢献できるのかを考えて、実行しているところですね。

Hondaは前提として、人々の暮らしを豊かに楽しくしていくことにこだわっています。社会的責任や環境、安全の新目標を達成することはもちろん、人々のモビリティライフを楽しくしていく方向で事業を進めています。そこからさらに、クールな体験を提供するイメージですね」

Roadsyncのリリース時に大変だったのはプロダクトの中身ではなく、Hondaの組織構造のなかでグローバルに使えるアプリを作ることでした。製品開発ではなくアプリの領域においては、Honda内に前例がなかったためです。

古賀 「以前のHondaには、スマホのアプリに関してグローバルに意思決定をするプロセスがなく、それを承認する仕組みもありませんでした。しかし、各地域がソフトウェアをバラバラに作っている会社は見たことがありません。中央で開発したものを、各地でローカライズするしかないのです。

そのために、国ごとのローカライズに耐えられるソフトウェアの開発や、現地で納得してもらうための知見が必要でした。解決策を見出すという意味では、技術面だけではなく、さまざまな取り組みが必要でしたが、京光さんや私、チームのみんなで一緒にクリアしていきましたね」

京光 「コネクテッドの領域は、国境があまり関係ない新しい文化です。アプリを共通化することで、新しい機能やサービスをいち早くグローバルのお客様に届けられるメリットがあります。Roadsyncのリリースは極めて特殊なプロジェクトだったので、いろいろな部署と連携しながら進めました。すべてをやり切ったことにより、次につながる土台を作ることができたと思います」

2021年現在、コネクテッド領域の協業は、日本にあるHondaの開発部隊とシリコンバレーにあるDrivemode社の部隊が一緒に取り組んでいます。在宅勤務が基本だったコロナ禍では対面の会議が難しかったものの、基本的にはHondaの若手エンジニアがDrivemode社で業務に取り組むスタイルを取っていました。

ハードウェアとソフトウェア。 対極にある両者でも“良いものを作る”想いは同じ

Drivemode社CEOの古賀は、自社とHondaの共通点はテクノロジーとプロダクトの会社であることだと考えています。

古賀 「Hondaは世界トップクラスのハードウェアを作る会社で、Drivemode社はソフトウェアに関してはかなり優秀な技術を持ったエンジニアやデザイナーがいる会社です。実現方法や経験スキルなどが違う分野であるだけで、両社の考えはとても似ていると思います。

確実に安全性が求められるハードウェアと、いち早くリリースしてユーザーフィードバックやユーザーの行動データに基づいてスピード感を持って改善していくソフトウェアは、対極的な面があることも事実です。しかし、根底にある『良いものを作りたい』という想いは両社に共通しています。

考え方の違いが大変なこともありますが、お互いのチームを信頼し尊敬しているので、異なる分野の混合チームで良いものが作れるのではないかと考えています。現場ではエキサイティングな気持ちが、共有されていると感じますね」

Hondaは長い歴史のなかで、何よりも安全性に重きを置き、お客様に信頼していただけるしっかりとした製品を出すという文化を根付かせてきました。いわば、石橋を叩いて渡るような安全開発を行うため、IT業界の考え方と大きなギャップがあるのは事実です。

京光 「Hondaにとって譲れない考え方がある一方で、今までのやり方が本当に正しいのかはきちんと見極めなければならないと思っています。私は入社以来ずっとHondaにいますが、他社の方と一緒に仕事をする機会が多く、Hondaの常識とされていることが世間ではそうではなかったというケースも見てきました。それを自覚したうえで、必要な部分はアップデートしていかなければなりません。

Drivemode社との協業では、文化の違う人たちとともに仕事をすることでギャップに気づき、修正していくことを意識しています。実際によりよい方向に改善できていることもありますし、現場レベルではかなりスピーディに仕事ができるようになりました。会社として見たときには、まだ十分でないところはあると思うので、さらなる改善を進めていきたいですね」

Hondaに確実に良い影響を与えているDrivemode社ですが、2014年に古賀が会社を立ち上げた頃は、2019年にHondaに買収されることは想定していませんでした。現在はHondaと進めるコネクテッド領域の仕事を、「答えがないからこそおもしろい」と感じています。

古賀 「おそらくこれから運転におけるソフトウェアの位置付けはどんどん高まっていき、もっと安全かつスマートに、ハードウェアとソフトウェアの融合ができると私は心の底から信じています。まずはスマートフォンのアプリであるRoadSyncからはじめましたが、制約はあります。クルマと融合したソリューションにはなっていないので、もっと深くつなげていこうとHondaと一緒に取り組みはじめたばかりです。

コネクテッド領域は決まった舞台がない分野なので、正解がないなかで答えを一緒に作っている最中です。それが難しくもありおもしろく、チャレンジが非常に大事だと考えています」

「本当の」モビリティ革命に向け、従来の業界の動き方を大きく変える

自動車産業は何十年もの歴史があるためオペレーションがある程度固まっており、そこから外れることは簡単ではありません。一方、コネクテッド領域は不確実性が高いので、従来のオペレーション通りに進めていくわけにはいきません。京光は、Drivemode社との協業がこれまでの常識を見直すための起爆剤になると期待しています。

京光 「移動と暮らしがシームレスにつながるモビリティライフを安全かつ楽しいものにしていく活動は、まだまだスコープ範囲が狭くスピードも遅いと感じています。また、スピードと柔軟性を持って取り組まなければ不確実性には対応できません。

失敗することも当然あるので、アップデートを繰り返して組織としての底力を上げていくことが求められます。『お客様に本当に良いものをお届けする』ことを、スピーディに進めていくことが大事だと思いますね」

自動運転技術が開発され、自動車業界は今100年に1度の変革期にあります。実際に今の自動車業界は、数年前とは大きく異なる発展を見せています。しかし、古賀は本当の意味でのモビリティ革命が起こるのはこれからだと考えているのです。

古賀 「現在取り組んでいる自動運転は、産業革命の延長線上にあります。情報革命のレベルにまで上がるためには、インフラ自体を再設計する必要があります。いつかソフトウェアが安全性や効率性を担保できるようになっても、今の道路や運転免許制度はどこかで限界を迎えるでしょう。そのときに、インフラを再定義する必要があるのです。

現在行われているコネクテッドの取り組みは、ソフトウェア革命のはじまりです。インフラ自体を再設計していくための答えは誰も持っていません。それでも私たちの未来はとても明るいですし、この取り組みには将来性があると感じています」

先がわからないからこそ、動くことが大切。それでも従来の自動車業界では、業界の特性上、不確実な状態で動くのが難しいこともあります。そこでHondaはDrivemode社との取り組みを進めることにより、不確実ななかで動く姿勢をいち早く取り入れ、ブラッシュアップしようとしています。

京光 「スタートアップのスピード感や物事の考え方、取り組み方は私たち自動車業界とはやはり大きく異なります。あまりにも違うので現場のエンジニアは当初戸惑っていたと思いますが、ともに仕事をするなかでお互いにリスペクトの感情が生まれました。良いところは良いと認めたうえで進めているので、Drivemode社が子会社となってから2年でHondaに良い影響が出ていると思います。

また、技術面でもプラスになっています。Drivemode社には優れたエンジニアが多くいるため、そのような方々と仕事をすることで『自分もエンジニアとしてもっと成長しなくてはならない』と考える社員が増えているのです」

正解のないなかでもチャレンジし、グローバルに活躍できる環境

Hondaの子会社となったあとも、Drivemode社はスタートアップのカルチャーをそのまま継続しています。多様性や自社の風土を維持したまま、それをHondaに入れ込んでいくのが自分たちの役割であると古賀は考えているのです。

古賀 「新たな人材の採用も、引き続きスタートアップらしいやんちゃさを持ちながら行いたいと考えています。私たちは『良いものを作れる人』を採用したいと考えているのですが、これはユーザーが喜んで使うものを作れる人という意味です。

良いものを作りたいと考えている人は、止められません。仕事時間ではなくても、たとえ駄目と言われてもアプリを作るような人たちがうちには集まっています。これから先もそういう人たちとともに仕事をしたいですね」

さらに、コネクテッド領域は、Honda社内での注目度が高まっている分野です。グローバル企業のHondaにインパクトを与えておもしろい仕事をするチャンスだと古賀は考えています。

古賀 「不確実性の高い仕事のほうが、自分の力を出しやすいです。言われたことだけをやる人ではなく、『これまでのHondaを壊してやる』というほどの強い想いを持っている人たちが集まって戦ってもらえたらいいと思いますし、そういう人たちが活躍できるとても稀な分野だと思います。キャリア的にもポジティブですし、ぜひ多くの方に集まっていただきたいですね」

Hondaのコネクテッド領域は今後も成長を続けるため、ともに働く仲間を募集しています。

京光 「モノの開発がハードウェアからソフトウェアにシフトしているなかで、両方を考えながら開発ができるのはHondaのコネクテッド領域の強みです。転換期を迎えているモビリティ業界で、不確実性の裏側にある取り組みへのチャレンジや楽しさがあるため、それをモチベーションにできる人たちに集まっていただきたいですね。

また、私たちのもうひとつの強みは、グローバル企業であり世界中で製品やサービスを展開していることです。日本に留まらない仕事ができるのがとても魅力的なので、グローバルに働く経験をしたい方にとってHondaはとても良い会社だと思います。

私は入社当初は英語も話せませんでしたが、ある日突然英語で仕事をするように言われました。そして他国の方と組んで仕事をするなかで多様性を学び、さまざまな気づきを得ることができたと思います。文化や習慣の違う人たちと、ぶつかりながら共通の目標を達成することはとてもおもしろいですね」

HondaとDrivemode社の協業は双方にポジティブな効果をもたらしています。
Hondaが描く未来を、どのように達成していくのか。これからのコネクテッド領域の進化や成長に、期待が高まります。

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