Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える

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生成AI×レガシーが新たな技術を生む。Hondaにしかできない自動車開発のプロセス変革

自動車開発においても生成AI活用の可能性が広がるなか、HondaではAIとの対話から歩行者保護性能を満たした3Dデザイン形状を生成する技術を構築しました。2025年度の業務表彰において社長賞を受賞したこのプロジェクトに携わった5人が、プロジェクトを振り返りながら「Hondaだからこそできた挑戦」を語ります。

伊藤 修Osamu Ito

コーポレート管理本部 デジタル統括部 先進AI戦略企画課

2005年Hondaにキャリア入社。本田技術研究所でバイオメカニクス研究に従事した後、歩行者保護技術の開発や交通事故リスク予測モデルの研究を担当。2024年にデジタル統括部に異動し、現在は生成AIを中心としたAI技術の研究開発および社内DXの推進を統括している。本プロジェクトではマネジメントとしてプロジェクト全体のバックアップを担当。

片桐 章彦Akihiko Katagiri

コーポレート管理本部 デジタル統括部 先進AI戦略企画課

2014年Hondaに新卒入社し、自動車開発における振動・騒音やボディ剛性のテストやシミュレーション業務に従事。2024年にデジタル統括部に異動後は、生成AI技術のPoC推進や技術開発を通じ、全社的な生成AI活用戦略の具体化と業務適用拡大に取り組んでいる。本プロジェクトの実現手法の検討とシステム構築を担当。

中川 善和Yoshikazu Nakagawa

四輪開発本部 開発改革統括部 開発プロセス改革部 開発DX推進課

2005年Hondaにキャリア入社。以降、一貫して衝突CAE(コンピュータ上での性能シミュレーション)の技術開発業務に従事。2022年に現在の部署に異動し、これまでの経験を活かしてAI技術を機種開発に活用する研究テーマを推進している。本プロジェクトではプロジェクトリーダーとして上位層へのレポーティングなどを担当。

佐々木 真人Masato Sasaki

四輪開発本部 完成車開発統括部 車両開発一部 衝突安全開発課

2009年Hondaにキャリア入社し、歩行者保護・軽衝突担当として機種開発に従事。アメリカ駐在時には、歩行者保護・軽衝突・室内衝撃分野の技術責任者を務めた。現在はグループリーダーとして、歩行者保護・軽衝突・ホワイトボディ強度に関する技術統括および開発マネジメントを担当。本プロジェクトの企画を立ち上げた。

佐伯 晋Shin Saeki

四輪開発本部 完成車開発統括部 車両開発一部 衝突安全開発課

2013年Hondaに新卒入社。一貫して、歩行者保護および衝突CAE業務に従事。現在は、CAE・CADの定型作業自動化から、AIを活用したデザイン・部品仕様検討支援まで、自動車開発の効率化を幅幅広く担当し、効率化ツールの構築とツールの現場展開にも注力している。本プロジェクトにおいては現場へのシステム導入、定着を推進。

社長賞について

業務表彰の中でも最も栄誉ある賞が「社長賞」です。高い技術的価値や新価値の提供を行い、Hondaの事業に大きく貢献したテーマに贈られます。
※社長賞受賞テーマには、表彰金300万円が授与されます。

〈業務表彰の目的〉
業務における優れた成果や模範となる取り組みを行った社員を称えるため、社内表彰制度を設けています。この制度は、社員のチャレンジ精神や成長意欲を後押しするとともに、会社全体の活力向上につなげることを目的としています。

AI活用推進部門と開発部門。異なる部門がタッグを組み、プロジェクトに挑戦

生成AIが急速に進展するなか、Hondaでは自動車開発における生成AI活用の可能性を広げるさまざまな挑戦を進めています。今回のプロジェクトは、部門の異なるメンバーが協働したことも特徴のひとつ。

管理職としてプロジェクト全体をバックアップしてきた伊藤と、AI技術の開発に取り組んだ片桐。ふたりは現在、AIの研究開発や全社でのAI活用推進を行う部署に所属していますが、それぞれクルマの研究開発に携わってきたキャリアがあります。

伊藤

「前職は別の完成車メーカーのグループ会社でシミュレーションのエンジニアをしていました。Hondaに入社後、はじめに取り組んだのは、どのような交通事故の場合にどういった傷害のパターンがあるか、それをどう防ぐかというバイオメカニクスの研究です。

その後は、衝突安全領域で歩行者保護性能の量産開発に取り組むようになり、そのなかでAIを使った開発効率化に挑戦し始めたんです。次第にAIの研究開発に軸足をおくようになり、今では全社のAI活用を推進する立場になっています」

片桐

「私は新卒でHondaに入社し、最初はクルマの振動・騒音の低減や操縦安定性の向上を担当するダイナミクス領域で仕事をしていました。そのなかでは量産開発に取り組みながら、とくにシミュレーション技術の研究に注力していました。2024年に現在の部署に異動してからは、AIを使った会社全体の業務改革に取り組んだり、AIの技術開発によって業務を効率化したり、AI技術自体を全社に広げていく業務を担当しています」

一方、プロジェクトの管理を担当した中川と、プロジェクトを発案した佐々木、現場にツールを展開・定着させる役割を担った佐伯の3人は、四輪開発本部の所属です。

中川

「私も前職は別の完成車メーカーに勤めていて、衝突のシミュレーションを担当していました。Hondaに入ってからも同じ衝突シミュレーションに取り組んでいて、とくにシミュレーションの精度向上やモデリングの効率化といった技術開発に注力してきました。最近は、これまでの経験を活かして、衝突シミュレーションの予測精度向上のためのAI活用などに挑戦しています」

佐々木

「私はHondaにキャリア入社して以来、一貫して衝突安全領域での開発に携わっています。なかでも、歩行者保護性能という万が一クルマが人にぶつかってしまった際に、歩行者へのダメージを小さくできるクルマの開発を続けてきました。

途中、アメリカ駐在も経験し、帰国後管理職となり、今は歩行者保護に加え、軽衝突、ホワイトボディ強度開発も担当するグループのとりまとめ役を担っています。また、AI活用についても皆と協力しながら推進しています」

佐伯

「私は新卒で入社してからずっと、佐々木と同じく歩行者保護を担当していて、なかでも衝突現象を解析するシミュレーションの技術向上や、その運用のための環境構築に取り組んできました。社内で業務の効率化やDXの機運が高まるなか、2023年頃からはAIに関する業務にも挑戦しています」

歩行者保護性能とデザイン性。両方を満たすデザインを作るための議論を効率化

今回のプロジェクトで開発したのは、AIとの対話から歩行者保護性能を満たした3Dデザイン形状を生成する技術。たとえば、「ベースデザインのモチーフを保ちつつ、歩行者保護性能を満たしたデザインにして」と指示すると、AIが条件を満たす3Dデザインを複数提案してくれます。これにより、デザイナーとリアルタイムに議論ができるようになります。

プロジェクトが生まれた背景には、デザインの完成までに幾度も発生する「擦り合わせ」の時間を効率化したいという課題がありました。

佐々木

「Hondaはすべての人の安全をめざすという理念のもと、万一の際に歩行者へのダメージを小さくできるクルマの開発に取り組んでいます。私たちは歩行者保護の観点から、人に優しいバンパーやボンネット形状が設計できるフロントデザインにしたいと考えています。

一方で、デザイナーは『スポーティーで挑戦的なデザインにしたい』など、“クルマのコンセプトを表すデザイン”を重視するため、両者の希望をかなえたデザインになるまで議論を重ねていく必要があるのです。

従来は、デザイナーから提案デザインが上がってきたら、私たちが過去の知見やコンピューターシミュレーションをもとに性能を確認して形状の変更案を作成していたのですが、専門的な知識が必要で、変更案を提案するまでに時間がかかってしまっていました。そこに何か手を打ちたいと考えていたことと、世界的にAIが進化するなかで私たちもAI活用を進めていかなければ遅れをとってしまうという危機感を持っていたことから、歩行者保護領域に知見があり、AIにも詳しい伊藤さんに相談したことがプロジェクト発足のきっかけです」

佐々木から相談を受けた伊藤の反応は、「それならできると思う」だったと言います。伊藤が培ってきたノウハウがあったからです。

伊藤

「生成AIが注目される以前から、設計された部品の性能を予測できるAIツールなどを作っていたので、私自身がリードして積み重ねてきた資産がありました。加えて、『Gen-AIエキスパート制度(※)』を創設するなど会社としてAI活用を推進する機運が高まっている。今の生成AI技術を組み合わせればうまくいきそうだという手応えはありましたね」

そこで、クルマの開発領域へのAI活用を検討していた片桐、AIを使った研究テーマに取り組んでいた中川にも声をかけてチームを結成。さらに、開発業務の効率化に取り組むなかで、伊藤が構築したツールの活用方法を模索していた佐伯が加わりました。

当初から実現に向けた手応えを感じていた伊藤とは対照的に、他のメンバーは「最初はどうなるかまったくわからなかった」と話します。

片桐

「生成AIで3Dモデルを作る技術はありますが、そこにクルマの性能を紐づける技術は世の中にまだ多くなく、実用には至っていませんでした。『きちんとクルマの開発に使える技術』を自分たちで実現しなければならず、かなりハードルが高かったですね」

佐伯

「そうですね。AIを開発プロセスの中心に据えることに前例がなかったので、『絶対に成功させるためにはどうするか』という観点から、早い段階で設計やデザインを担当する関係者に意見をもらいながら進めていく必要がありました」

プロジェクトリーダーを務めた中川は、研究テーマとして承認を得るための提案に苦労したと振り返ります。

中川

「当初の研究テーマの内容は、データの蓄積や検索の高速化など、さまざまなことを満遍なく取り入れたものを検討していたので、今考えると中途半端なテーマになってしまっていたんです。『何のためにやるのか?目的・目標をもっと明確に』という上位者からの指摘を何度も受け、皆と相談しながらブラッシュアップしていくなかで、伊藤さんのチャレンジングなアイデアにたどりつきました。『本当にそんなことできるのだろうか』と半信半疑な気持ちがありつつも上位者を説き伏せ、プロジェクト立ち上げの承認が得られたのです」

※ 生成AIエンジニアを3段階のレベルで「Gen-AIエキスパート」に認定し、専任もしくは現在の業務と兼任しながら会社指定の生成AIプロジェクトに従事してもらう制度。プロジェクトに参加するエキスパートに対しては、認定レベルと関与度に応じた手当を支給する

ひとりでも欠けていたらできなかった──現場と膝を突き合わせたから作れた実用的なツール

このシステムの構築を中心となって進めた片桐は、前例のないなかで必要な要素やツールをどう組み合わせれば実現できるかを考えることに苦労したと話します。

片桐

「今回の技術には3つの要素があります。1つめは、誰でも簡単に使えるように自然言語の指示で自律的にデザインや設計を考えてくれる技術。2つめは、歩行者保護性能を瞬時に予測する技術。3つめは、デザイン形状を作るモーフィングという技術です。

一番苦労した点は、実際の開発現場で使えるものに仕上げる部分でした。『技術がすごい』『おもしろい』だけでは現場では使えません。たとえば、モーフィングはAIではなく従来の技術です。現在の生成AIでは開発に必要なミリ単位の調整は難しいため、『生成AIプラス従来の技術』という組み合わせで、開発現場で使えるように落とし込んでいく必要があり、そのバランスを考えるのが大変でした」

さらに、開発期間として想定されたのは半年ほどの短い時間。「ひとりでも欠けていたら、この難題は解決できなかった」と言います。

片桐

「伊藤さんが作り上げた予測AIのノウハウ、佐伯さんや佐々木さんの現場での知識、私が持っていた生成AIやモーフィングの技術など、皆のアセットが良い形で組み合わさったからこそ実現できました。プロジェクトを進めていく上では上位層へのレポーティングも求められますが、そこも中川さんのおかげでスムーズに理解を得ることができました。

AIの専門家だけでは、本当のニーズはわかりません。現場と膝を突き合わせて進められたことが成功の要因です」

佐伯

「デザイナーや衝突安全の担当者がAIをどう捉えているか、今の悩みは何か、どんなものなら魅力的に感じるのかを聞き取りながら磨き上げていきました。片桐さん自身に開発の経験があるので、現場の細かいニュアンスのやりとりがとてもスムーズでしたね」

システムができたとはいえ、肝心なのは現場で浸透すること。その役割を担った佐伯は、まずは自身が成果を出すことを心がけたと話します。

佐伯

「以前から伊藤さんの作ったAIツールなどはあったものの、AIを仕事で使うというマインドや、『AIはシミュレーションの代替品ではなく思考の効率化やサポート役である』という認識が弱かったために、あまり定着していない状況がありました。

そこで今回私が真っ先に取り組んだのは、実績を作ること。私も歩行者保護性能のエンジニアなので、率先してツールを使い、『こんなに効率的に進められるようになった』と示したのです。それをきっかけに、『自分も使ってみたい』という声が上がるようになりましたし、デザイナーからも『狙っていた通りのものができたね』という反応がありました。

何より『良いものができたから、一緒に育てていこう』という雰囲気が生まれたことが大きな変化です。AIツールを使う文化を醸成していこうという意識が芽生えたことに驚くとともに、とてもうれしかったですね」

AI活用を進めていかなければ遅れをとってしまうという危機感からプロジェクトを発案した佐々木も、その変化に手応えを感じていると言います。

佐々木

「今回作ってもらったシステムは、まさに自分が欲しいと考えていたもの。私自身は、日々の困りごとに対して効率化を行う案は思いつきますが、その解決策となるAIツールを作り上げることはできません。けれど、伊藤さんや片桐さんといったAIのスペシャリストとともに、現場のニーズに合ったものを提供できたことが大きいと思います」

ビッグテックには作れない、Hondaならではの技術でいいクルマを届けていきたい

まさに「現場主導の改革」で、生成AI技術を量産開発プロセスに取り入れたことが評価され、2025年度の社長賞を受賞した今回のプロジェクト。受賞が決まったことを知った時は驚いたと口をそろえます。

佐伯

「現場での課題解決に必死で、社内表彰のことまで考えていませんでした。けれど結果として注目を浴びることになったので、これを新しい開発のメインストリームにする覚悟が決まりました。こういったノウハウをHondaの一つのビジネスとして扱えるようになれば、新しい強みが生まれると思います」

佐々木

「社長賞となると、『それに値する技術なのか?』という目で見られることもあると思うんです。プレッシャーも感じますが、この技術をさらに発展させていくのが自分の仕事だと思えるようになりましたし、新しいフィールドにチャレンジできるきっかけになりました」

片桐

「大規模な製品開発や社会的に注目を集めるプロジェクトがあるなかで、技術そのものにスポットライトが当たったことはうれしかったですね」

また、このプロジェクトを通して、Hondaで働くことの魅力も再確認したと続けます。

片桐

「Hondaには『技術の前では皆平等』という言葉があります。今回も、マネジメント層を含めた皆が同じ土俵で意見を聞いてくれて、フラットに議論ができました。この文化はHondaの強みだと思います」

佐伯

「うまくいくかわからない段階でも、筋を通して説明すれば時間を割いてアドバイスをくれますよね。マネジメント層も一緒に戦ってくれる心強さがありました」

佐々木

「私は、少人数でも社長賞を受賞できたという事実が、Hondaの良さを物語っていると思います。『お客様のために本当に必要なものだ』と周囲に説明し、理解してもらえれば目標達成に向けて挑戦させてもらえる環境がある。自分のめざす価値を社会に発信できる会社だと感じます」

伊藤

「私は以前、上司に反対されてもこっそり続けていた研究がありました。おそらく、上司は気づいていたのですが(笑)止められることはなかったんです。『絶対にやるべきだ』という意志があれば続けられる環境は、他社にない魅力だと思います」

中川

「それに加えて、度量の大きさがHondaらしいと思いました。提案が通った後は信頼して任せてくれる。自分の裁量でリソースをどう使って進めるかを考えられるやりがいがあります」

皆のアセットが良い形で組み合わさったからできた──そう語った片桐は、「HondaだからできるAI活用」を進めていきたいと意気込みます。

片桐

「Hondaには、これまでの歴史のなかで培ってきたクルマのデータや開発ノウハウという膨大なレガシーがあります。今回のプロジェクトも、そういったレガシーや実務経験があるメンバーが取り組んだからこそ実現できたもので、ビッグテックだけでは作れないシステムだと思っています。

今後も、Hondaだからこそできることに挑戦し、その技術を製品にフィードバックしていくことで、お客様にいいクルマを届けていきたいですね」

最新技術と積み重ねてきた歴史を組み合わせ、完成車メーカーにしかできない新たな技術を作る。現場の意思が、Hondaのさらなる変革を生み出します。

※ 記載内容は2026年1月時点のものです
※ 撮影場所: WeWork メトロポリタンプラザビル

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