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技術を追究するほどわかる人間のすごさ──生成AIエキスパート制度で見えたHondaの力

ビジネス環境における生成AI(Generative AI)の急速な普及を受け、HondaではAI活用のエキスパートを認定する社内制度「Gen-AIエキスパート制度」を開始。この制度の始まりは、2,400人を超える社内ITコミュニティ「Borders」を創出したひとりの社員からの提案でした。企画者である佐野が、この制度に込めた想いとは。

佐野 雄樹Yuki Sano

コーポレート管理本部 デジタル統括部 先進AI戦略企画課

2008年Hondaに新卒入社。長年、四輪領域でCIVICなどのエンジン開発に従事。その傍ら、自らのスキルアップのためにプログラミングやAIについて学び始めたことをきっかけに、社内でITコミュニティ「Borders」を立ち上げ。さらに、AIエンジニア育成のため「Gen-AIエキスパート制度」を企画。2024年5月からは、デジタル統括部にて同制度をリード。

社内に点在するAIエンジニアが部署の垣根を超えて活躍できる仕組みを作る

大きく変化する社会情勢に対応するため、高度な専門性を持つ人材が活躍できる場を広げていく──その一環として2024年6月にスタートした「Gen-AIエキスパート制度」。これまで社内に点在していた生成AIエンジニアを3段階のレベルで「Gen-AIエキスパート」に認定し、専任もしくは現在の業務と兼任しながら会社指定の生成AIプロジェクトに従事してもらう制度です。

佐野「この制度の大きな特徴は、認定されたエキスパートたちが部署の垣根を越えて生成AIプロジェクトに参加できることです。これまでHondaでは、業務を兼任できるような制度はありませんでしたが、部署の枠にとらわれずに参加することが可能です。

また、プロジェクトは会社として定めたものですから、質の高いアウトプットをすることで会社の成果にしっかりと結びつけていくことができます」

もう1つの特徴は、プロジェクトに従事している期間は、認定レベルに応じて給与にエキスパート手当が付与されること。認定と手当がセットになっていることが重要だと佐野は続けます。

佐野「現在認定されているメンバーには、これまで自己学習でAIスキルを身につけていた社員も多くいます。私自身もそのひとり。それが正式な業務として認められる環境を整えることで、希少性の高いAIエンジニアが社内で認知され、活躍できる場を広げていくことが大切だと考えています」

2回の認定試験を終えた2024年12月時点で、Gen-AIエキスパートに認定された社員は約100人に上ります。自動運転やロボットの開発など、日頃からAIになじみのある社員はもちろん、幅広い部署の社員がGen-AIエキスパートとしてプロジェクトに参加しています。

佐野「現在取り組んでいるプロジェクトはおよそ40。たとえば、『〇〇について教えて』とリクエストすると、社内の膨大な知識が詰まったデータベースにアクセスして情報を取ってきてくれるAIエージェント。言葉から自動車の形状を最適化していく設計AIなど、開発から生産、営業、人事まで、社員の仕事をサポートするシステムを構築しています。

エキスパートに認定された社員からは、『周りから理解してもらうことでモチベーションが上がった』『正式にプロジェクトとして動けることで自分たちのスキルや取り組みに感謝してもらえる機会が増えた』という喜びの声をたくさんもらっています」

自分はエンジンしか知らない──制度発案のきっかけは、成長への危機感

佐野が新卒でHondaに入社したのは2008年のこと。Hondaを選んだのは、「夢や挑戦を大切にする企業文化に惹かれた」からでした。入社後は、CIVICなどに搭載する四輪のエンジン開発など、エンジン一筋にキャリアを歩みます。

佐野「エンジン開発では、さまざまな技術に積極的に挑戦してきました。自らプロジェクトを立ち上げて、周りの人たちを巻き込みながら新しい技術にトライしたこともあります。振り返ってみると、エンジニアの技術レベルは高く、とてもチャレンジングな日々を過ごしてきたと感じます」

難しい技術や新しい技術にも果敢に挑戦するなかで、エンジン開発に活かせるようにと機械学習や最適化などを含めたAIについても独学で少しずつ習得。それでも「自分はこのままエンジン開発を続けていくのだろう」と考えていた矢先、転機となったのは2つの出来事でした。

佐野「1つめは、入社9年目を迎えた頃に参加した社内のプロセス改革を行う企業プロジェクトです。効率化に向けた取り組みを検討・運用していく過程で、開発、生産、営業、物流などさまざまな部門のメンバーと関わる機会を得たのです。

その時に、自分はエンジン以外のことをあまりに知らないと痛感しました。もっと周りのことを知らなければ、自分もHondaも成長しない。そう強く感じました」

プロジェクトで感じた危機感をきっかけに、エンジン開発の現場でも学びの場を作りはじめ、プライベートでは本格的にプログラミングの勉強を開始。コロナ禍にITの進化が加速するなか、さらに学習を深めた佐野は、自らが感じた課題を解決するため、社内でITコミュニティ「Borders」(ボーダーズ)を立ち上げます。それが、2つめの転機でした。

佐野「Hondaのエンジニアを強くするためには、部署の垣根を超えてITのノウハウを共有する仕組みが必要だと考えたのです。じつは当初、上司に内緒でこっそり始めたのですが、立ち上げてみたら一気につながりが増えたことが、とてもおもしろくて。

私と同じように、ITや新しい技術に興味を持ち、自己学習をしている社員はたくさんいるんですよね。今では、Borders には2,400人もの社員が参加しています」

スピード感を持って進めなければ意味がない。わずか3カ月で制度設計を実現

Bordersでのやりとりを通じ、AIについて学習している社員が多いことを知った佐野。それが、Gen-AIエキスパート制度を企画するきっかけとなります。

佐野「私自身も、部署内でAIを活用したプロジェクトなどを提案していたものの、なかなか形にならない日々が続きました。でも、社内に潜在的にいるAIエンジニアが、日の目を見ないままでいるのはもったいないと感じたのです」

そんなタイミングで、佐野の活動が現在所属するデジタル統括部の上司の目に留まります。それをきっかけに、制度構築に向け一気に動きが加速します。

佐野「2023年10月に生成AI活用に向けたタスクフォースを組み、何度か経営層に掛け合う機会をもらいました。当初私は、対価にこだわらず『社内に埋もれている生成AIエンジニアを認知してほしい』『その技術を会社のために使える場がほしい』という想いだったのですが、経営層から『市場価値の高い人材に、しっかりと対価と評価を与えるべき』という逆提案をもらったことで、より包括的な制度を構築することになりました。

さらに、『組織改編を待っていては世の中の変化に追いつけない。スピード感を持って進めなければ意味がない』と、2024年6月のスタートをめざすことになったのです。経営層のその判断には驚きましたが、生成AIエンジニアの希少性やHondaの未来のためには必要な人材であることを理解してもらい、共感してもらえたのだと思います。

エンジンを開発しているエンジニアがAI人材に関する制度を経営層に直接提案することができ、『おもしろいからやってみよう』と背中を押してもらえる。それが、挑戦や人を大事にしているHondaらしいと感じましたし、『これがHondaだ』とあらためて実感しました」

2024年2月に承認を受けると、人事統括部と共に6月の開始に向けてわずか3カ月で制度設計を完了。佐野自身は5月からデジタル統括部に異動し、急ピッチで制度構築に向けて奔走してきました。

佐野「この制度が確実に有効だと思ったのは、10名のメンバーが社内チャレンジ公募で集まり、活躍してくれていることです。それぞれ元の部署もバラバラだからこそ、違った社内のネットワークを持っていて、いろいろな立場の人の気持ちやプロセス、データがわかる。それが、AI活用を進める上でも大きなメリットになっていると感じます」

あらためて感じる人の力。この制度を、人が挑戦を続けていくための礎に

Gen-AIエキスパート制度は、社内表彰で社長賞を受賞。「縦」の組織だけではなく「横」のコミュニティを通じたつながりが主体的に結合して織りなす風が吹いていると佐野は話します。そして、すでに次の展開も見据えています。

佐野「認定された社員たちがさまざまな部署で成果を出し、適切な評価を受けられる環境を作ること。そして、エキスパートたちの能力をHonda全体で最大限に活用できるマネジメント体制を構築していくことが目標です。現在、海外の拠点を含めてそれぞれにコミュニティがあるので、それらをつなげてアウトプットを最大化していきたいですね。

また、この制度は生成AIエンジニアの希少性がなくなったら終了すると決めています。たとえば、生成AIでカバーできる領域がさらに広くなるのであれば、拡大路線や新しい技術に挑戦することも必要です。しかし、マーケットが小さくなった時には、Gen-AIエキスパート制度は廃止して、この制度の認知、活用、評価のエッセンスを他の新しいスキルに応用していくべきだと考えています」

諦めることなく自らのスキルを磨き続け、前例のない制度まで生み出した佐野。その原動力は、成長することへの意欲にあると言います。

佐野「自分の成長が会社の成長につながらなければ、やりたいことができないと知ったんです。でも、ひとりでは成長できません。いろいろな人たちと接することで成長してきましたし、Hondaはその成長をきちんと認めてくれます。それが私のモチベーションになっているのだと思います」

エンジニアに関する技術やAIに関する技術。佐野は、技術に深く関わってきたからこそ、なぜHondaが「人」や「挑戦」を尊重するのかがわかると話します。

佐野「技術を追究すればするほど、人間のすごさ、人の素晴らしさがわかります。これは本田 宗一郎の理念につながることですが、技術の研究、価値の研究をすればするほど、人を知るということに向かっていくんです。

表に出ていなかった社員のスキルを認めること、そのために制度を作る素早い決断をすること、そして、その制度を構築し活用していくのも人。あらためて、Hondaの人の力を感じましたし、人っておもしろいなと思います」

ひとりの社員の想いから始まった制度は、多くの人たちに助けられながら、Hondaに埋もれていたスキルを輝かせる礎に──人の力を最大限に活かし、Hondaに新たな力をもたらします。

※ 記載内容は2024年12月時点のものです

撮影場所:WeWork メトロポリタンプラザビル

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