Other 2026/02/09
【前編】本気で挑戦したから見えた、ものづくりの楽しさ。ホンダコライドンと共に見る夢
Hondaの技術力で、伝説のポケモンをこの世界にモビリティの形で再現したい──そんな想いからスタートした「ホンダコライドンプロジェクト」。2025年度の社長賞を受賞したこのプロジェクトに参加したメンバーに、ホンダコライドン開発を通してあらためて感じたものづくりの醍醐味やHondaで働く魅力を聞きました。
遊座 嘉秀Yoshihide Yuza
二輪・パワープロダクツ事業本部 二輪・パワープロダクツ開発生産統括部 ものづくり企画・開発部材料開発課
2007年Hondaに新卒入社。二輪の試作車やレーサー、展示用などのプラスチック部品の製作に携わった後、カーボン繊維強化プラスチックなどの研究開発に従事。2023年から有機材料を担当し、2025年4月からホンダコライドンプロジェクトのLPL(開発責任者)を務める。
尾辻 美紅Miku Otsuji
二輪・パワープロダクツ事業本部 二輪・パワープロダクツ開発生産統括部 システム開発部 システム開発1課
2007年Hondaに新卒入社。二輪の電装部品の品質解析業務を経て、大型二輪車の電装設計業務に従事。その後、二輪・パワープロダクツ開発のプロジェクト進捗管理を担当。ホンダコライドンプロジェクトではチーム運営業務を担当。現在は再び電装設計業務に従事している。
住岡 忠使Tadashi Sumioka
本田技術研究所 先進技術研究所(フロンティアロボティクス)
2012年Hondaに新卒入社。社内アプリケーションシステムの開発や自動運転車の軌道生成研究などに従事した後、歩行アシスト装置の歩容推定器や二輪車をはじめとするバランスアシストモビリティの研究を行う。ホンダコライドンプロジェクトでは、ダイナミクス制御開発を担当。
辻村 拓弥Takuya Tsujimura
本田技術研究所 先進技術研究所(フロンティアロボティクス)
2014年Hondaに新卒入社。二足歩行ロボットの対人安全性検討や二輪車をはじめとするバランスアシストモビリティ研究のハードウェア設計を担当した後、ライディングアシスト設計に従事。ホンダコライドンプロジェクトでは、技術面の取りまとめや手足・前後輪可動部の設計を担当。
紺谷 知代Tomoyo Konya
本田技術研究所 先進技術研究所(フロンティアロボティクス)
2020年Hondaに新卒入社。二輪車の取り回し課題を解決するための技術やUNI-ONEの制御に従事。現在はLPL代行として新価値の探索テーマを推進。ホンダコライドンプロジェクトでは顔の動きの制御を担い、モーションの作成や展示状態での動作を担当。
石川 翔大Shota Ishikawa
二輪・パワープロダクツ事業本部 二輪・パワープロダクツ電動事業統括部 電動開発部 パワープロダクツ商品開発課
完成機メーカーや部品メーカーを経て、2022年Hondaにキャリア入社。電動乗用芝刈り機のシステム設計や自動運転用のGPSユニットや衝突防止センサーの電装設計を担当。ホンダコライドンプロジェクトでは回路設計、電装部品の製作、電装関連のテストを担当。
業務表彰の中でも最も栄誉ある賞が「社長賞」です。高い技術的価値や新価値の提供を行い、Hondaの事業に大きく貢献したテーマに贈られます。
※社長賞受賞テーマには、表彰金300万円が授与されます。
〈業務表彰の目的〉
業務における優れた成果や模範となる取り組みを行った社員を称えるため、社内表彰制度を設けています。この制度は、社員のチャレンジ精神や成長意欲を後押しするとともに、会社全体の活力向上につなげることを目的としています。
プロジェクトメンバーは、二輪の部品、電装、姿勢制御のスペシャリストたち
ゲーム『ポケットモンスター スカーレット』に登場する伝説のポケモン「コライドン」。Hondaでは株式会社ポケモン監修のもと、2024年の夏から1/1スケールでコライドンの“しっそうけいたい” の姿を映したモビリティ「ホンダコライドン」の開発に取り組んでいます。
メンバーは、二輪・パワープロダクツ事業本部と先進技術研究所から社内公募などで集まった有志たち。遊座、尾辻、石川の3人は、二輪・パワープロダクツ事業本部に所属しています。
遊座
「入社以来、二輪の試作車用のプラスチック部品の製作や、バイクのレーサー(レース用車両)で使うカーボン繊維強化プラスチックの研究開発など、部品や材料を担当してきました。ホンダコライドンプロジェクトに参加したのは、上司に声をかけてもらったことがきっかけです。もともとゲームやアニメ好きで、それを知っていた上司が『やってみないか』と誘ってくれたのです。現在は、2代目のLPL(開発責任者)を務めています」
尾辻
「私は、入社後しばらくは二輪の電装領域の仕事をしていました。故障した部品の解析をする品質保証業務から始まり、設計へ。その後、研究開発に携わるメンバーのサポートをしたいと考えるようになり、電装から離れてプロジェクト推進を担当していました。ホンダコライドンプロジェクトが発足することを知り、ぜひ私も挑戦したいと、プロジェクト推進PL(プロジェクトリーダー)としてチーム運営業務を行っています」
石川
「私はキャリア入社で、以前は完成機メーカーや部品メーカーに務めていました。Hondaに入社してからは、電動芝刈り機の自動運転に必要な部品の電装設計や電気システムの設計を担当していて、ホンダコライドンプロジェクトには2024年の秋の2次募集から参画しました。
もともとポケモンが大好きだったので、このプロジェクトに参加したかったのですが、メンバー2次募集のタイミングが海外出張の時期と重なっていて、危うく情報を逃してしまうところでした。私のポケモン好きを知っている同僚が声をかけてくれたおかげで、ギリギリ間に合ったんです」
住岡、辻村、紺谷の3人は先進技術研究所の所属。ホンダコライドンにも使われているバイクの自立制御機能や歩行アシスト装置の研究開発などに取り組んでいます。
住岡
「入社当初は、社内システムの開発や四輪の自動運転制御開発、横滑り防止機能を担当しました。ただ、もともとはロボットの制御開発をしたくて入社したこともあり、異動の希望を出し続けていたのです。希望がかない本田技術研究所へ異動になった後は、歩行アシスト装置の開発などを経て、低速走行時や停止時にバイクを自立させる機能『Honda Riding Assist』の研究開発に携わっています」
辻村
「私は、人間型ロボット『ASIMO』の基礎研究からキャリアが始まりました。その後、ASIMOで培ったバランス制御技術をモビリティに搭載するプロジェクトが始まり、Honda Riding Assistのハードウェア設計を担当。その技術をホンダコライドンにも活かしたいという要望があり、ホンダコライドンプロジェクトではLPL代行として技術面のとりまとめを担当しています」
紺谷
「私は入社してからずっと、現在の部署で研究開発に取り組んでいます。最初は、Honda Riding Assistの制御や座ったまま直感的な操作で移動できるモビリティ『UNI-ONE』の制御を担当し、その後は将来に向けた研究テーマの探索などをしています。
ホンダコライドンプロジェクトには、プロジェクトが立ち上がる際の社内資料作成に関わったことをきっかけに参画することになりました。私もポケモンが好きなので、『絶対に参加したい!』と上司に懇願したんです(笑)」
二輪姿勢制御『Honda Riding Assist』についてはこちら▶︎
https://global.honda/jp/tech/Honda_Riding_Assist/
Hondaでも作れるはず──「トヨタミライドン」の意思を受け継ぎプロジェクトがスタート
ホンダコライドンプロジェクトが立ち上がったきっかけは、2023年11月に初披露された「トヨタミライドン」。トヨタ自動車の技術者らによる有志団体であるトヨタ技術会と株式会社ポケモンによる共同プロジェクトで誕生しました。
このプロジェクトの「大人の本気が子どもの夢になる」というメッセージと、ものづくりへの想いを受け継ぐ形で、「Hondaらしいコライドンを作ろう」とスタートしたのがホンダコライドンプロジェクト。それぞれ、当時をこう振り返ります。
紺谷
「じつは、トヨタミライドンが初披露された時に見に行っていて、『これをHondaで作りたかったな』と悔しさを感じたのです。社内向けの記事でその想いを発信していたことが、上司から声をかけてもらうきっかけになりました」
辻村
「私もトヨタミライドンを見た時に、『Hondaでも良いものが作れるはずだ』と思いました。Hondaがロボットで培ってきた手足を動かす技術を使えば、『動くモビリティ』にできるのではないかと考えたのです」
遊座
「当初の社内資料は、まだ詳細が書かれていないシンプルなものでしたよね。私は、『おもしろそうだから、やってみよう』というくらいの気持ちで参加しました」
尾辻
「私も、『なんだか楽しそう』と感じたことと、今後の自分の役に立つ経験ができる予感があって、誘われた時はすぐに参加を決めました」
住岡
「プロジェクトが立ち上がった当時、私はHonda Riding AssistのLPLを務めていたこともあり、『ぜひ参加したい』と思いました。テーマパークなどに行っても、動物を模したロボットなどを見ては『どうやって動いているのだろう』と考えていたので、自分でも挑戦できることがうれしかったですね」
石川
「私は、『なんて運がいいのだろう!』と思いました。ポケモン愛が強すぎて、Hondaに入社する時と同じくらいの熱量で応募資料を作成したのを覚えています。メンバーに決まった時は、飛び上がって喜びました(笑)」
何をどうやって作るのか。「コライドンらしさ」と技術の両立が大きな壁に
詳細は決まっていなかったものの、プロジェクトのメッセージに賛同したメンバーが集まり、2024年夏に開発がスタート。2025年3月にはHonda ウエルカムプラザ青山(当時)に展示されることが決まっていたため、急ピッチで開発を進めていく必要がありました。
しかし、はじめの数カ月は思うように進まなかったと振り返ります。
遊座
「通常の二輪の開発は、販売の価格帯に合わせてどういった味付けをしていくかというパターンがある程度決まっています。けれど、ホンダコライドンに関しては、『何をどうやって作るのか』という研究や議論をしている間に時間が進んでしまって……」
辻村
「自立走行することは決まっていたので、走るために必要なモーターのスペックを決定しようと、サイズはどのくらいか、どの部分がどのくらいのスピードで動くのかを決めましょう、という話から始まりましたよね。
四足歩行できる機構も検討したのですが、そのためにはとても大きなモーターが必要ですし、二輪ではなく四足歩行ロボットになってしまう。そこで、Hondaの二輪姿勢制御を活かしながら、手足を動かして走るモーションにすることに決まりました」
LPL代行として技術面のとりまとめ役を担う辻村。まずは、どこにどんな部品を置くかというスケッチを手書きで起こし、手足や前後輪といった可動部の設計を進めていきました。設計を進めるなかでは、「コライドンらしさ」をどのように生み出すかに苦労したと話します。
辻村
「コライドンのプロポーションを保ちつつ、手足が動いてなおかつ自立するための機構をどうやって成立させるか──そこが一番大きなチャレンジでした。サイズを大きくすれば解決するのかもしれませんが、それではコライドンのプロポーションが保てません。『ここをあと何mm削って……』というような調整をひたすら繰り返しました。
解決策を見つけるために、皆でワイワイとアイデアを出し合い、誰かが何気なく言った案がヒントになることもよくありましたね」
開発リソースの確保に奔走。「他に道はない」と追い込まれながら、制御ソフトを追求
仕様が決まり、開発が進み出しても、当初の予定通りには進まなかったと言います。
尾辻
「じつは当初、2025年3月に展示するタイミングで『走る姿』も披露する予定だったのです。けれど、スケジュールを組んでいくとテスト走行を実施する時間がないことがわかり断念しました。再度計画を練り直し、8月に開催される鈴鹿8耐でお披露目することに決めました」
プロジェクト推進PLとしてチーム運営を担っていた尾辻は、目標に向けて皆が開発に集中できるように所属部署に掛け合うほか、予算管理や搬送時の輸送手配などに奔走したと続けます。
尾辻
「皆、所属部署で担当している業務もあります。でも、それを部署の他のメンバーに任せてホンダコライドンプロジェクトに時間を割かなくては間に合わない時期もあり、どのくらいの工数が必要なのかをそれぞれの上長に説明して回りました。そういった交渉ごとは普段あまりしていないので、私にとっては新たなチャレンジでしたね。
もちろん、二つ返事で許可が出るわけではありませんが、マネジメント層も応援してくれていることを感じました」
ホンダコライドンの要とも言える自立制御機能を担当した住岡。“本業”で研究開発してきた領域ではあるものの、大きな壁にぶつかっていました。
住岡
「通常のモーターサイクルと比べて重心が高いことや手足の重さがあることが影響して、自立制御がうまくいかない時期が続きました。『これがベストだ』と思って積み重ねてきたものの、このままだと先がないことが見えてきてしまったのです。
そこで、途中で制御ソフトをガラッと入れ替える決断をしました。『これでうまくいかなかったら、もうアイデアは残っていない』というところまで追い込まれましたね」
遊座
「この領域は、住岡さんが第一人者です。住岡さんが『これしかない』というなら、他に選択肢はありません。自立制御以外のことは皆で進めるから、思うようにやってほしいと伝えました。結果的に新しい制御ソフトがうまく機能した時はうれしかったですね」
【後編】はこちら▶︎
https://global.honda/jp/career/184.html
※ 記載内容は2025年11月時点のものです