Sustainable impacts 2022/07/11
お客様の満足度向上に向けて──不具合ゼロを目指し解析に取り組む挑戦の日々
Hondaの市場品質監理課では、製品の不具合報告があるとすぐに情報収集や対策推進を行い、再発防止に努めています。複数あるグループを率いているのは、入社以来解析に携わってきた社員たちです。日頃からグループを超えて連携しながらHondaを支える社員3名が、市場品質監理課の仕事の魅力を語ります。
石原 智幸Tomoyuki Ishihara
日本本部 お客様部市場品質監理課
前職で半導体の開発を経験したのち、2005年Hondaに転職。シャーシ電装系の解析など、入社以来解析に携わる。現在は監理分析グループに所属。
明石 雅弘Masahiro Akashi
日本本部 お客様部市場品質監理課
前職でオーディオメーカーの市場品質の監理業務に従事したのち、2005年Hondaに転職。シャーシ電装系の解析など、入社以来解析に携わる。現在は管理グループに所属。
竹本 宜弘Norihiro Takemoto
日本本部 お客様部市場品質監理課
自動車の部品を扱うメーカーで働いたのち、2007年Hondaに転職。入社以来、エンジン系の解析に携わる。現在は、先進電装・車体グループに所属している。
不具合が再発しないよう、問題を顕在化して速やかに解析や判断を進める
Hondaの市場品質監理課では、国内市場における重要品質問題を早期に顕在化し、進捗監理や官公庁の問い合わせ対応を行っています。お客様の困りごとを速やかに解決し、再発を防ぐ役割を担っているのです。
「お客様が不具合に気づかれて販売店に持ち込まれたクルマを販売店が修理します。その際に交換した部品と不具合の詳細を記載したレポートが販売店から当課に送られてきます。私たちはそれらをもとに調査解析するか判断し、レポートを内容ごとに仕分けします。
調査解析が必要なものは解析部門に回してレポートを受け取り、最終的にリコールするかしないかを判断するのが私たちの役割です」
市場品質監理課には4つのグループがあり、石原・明石・竹本の3名はそれぞれ所属が異なります。ただし、ジョブローテーションが盛んで全員が解析経験者なので、密に連携しながら仕事を進めているのです。
Hondaでは高品質な製品をお客様に届けることを心がけ、品質担保には万全を期していますが、これまでと違う機能が付いた新製品を出した場合、想定外の不具合が発生してしまうケースも0ではありません。その不具合の原因を確実に突き止めて再発防止策につなげるのが、市場品質監理課の役割です。
「たとえば部品から異音がするという事象について、お客様からお声をいただいた場合、販売店がどの部品が原因か確認して交換します。当課はその交換した部品の再現確認をして、実際に異音がするかどうかを調査するんです。
異音が出ていれば不具合品と良品を比較し、どこに問題があるのかを突き止めます。数値的なおかしさがあればさらに分解し、どの部品に問題があったのかを調査します。部品を特定できたら、製造時に問題があったのか使用方法が正しくなかったのか、強度が弱かったのかといったさまざまな観点で確認を行い、それぞれの対策につなげるのが品質対応の流れです」
クルマには数多くの部品が使われるため、解析対象として扱う部品数は多く領域も多岐にわたります。あらゆる部品の知識や多岐にわたる領域の知見があるからこそ、スピーディな解析が可能になります。
「部品単体で不具合が出るケースもあれば、組み合わせによって問題が起こるケースもあるので、原因を究明したり対策を講じたりする場合はひとつの部品の知識だけでは進められません。
私は学生時代から電気を専門としてきましたが、原因究明には化学や統計学などの知識も必要です。ひとつの部品を専門とするのではなく、多くの部品を解析して多様な解決手法を身につける必要があります。Hondaに転職してから幅広い部品に関わって知識を増やすことができたので、自分が成長できている実感もありますね」
「お客様第一」の姿勢をさらに強化したことで判断スピードも向上
市場品質監理課では、2013年に組織改編が行われました。Hondaとしてお客様目線をより大切にするため、解析を行う部門と措置判断する部門を分けることになったのです。
「解析メンバーが自ら措置判断すると、無意識のうちにHonda側の目線に立ってしまう懸念がありました。お客様目線を大切にするためには、より市場に近くお客様の声をダイレクトに反映する部門が必要だとして、解析部門をふたつに分けることにしたんです。
そこで、お客様の声を第一に扱う市場の代弁者であり解析も行うサービスメンバーとして、市場品質監理課が誕生しました。もうひとつの部門は解析に特化して素早く進めることで、市場措置対応までの判断を短くしようとしたという経緯があります」
組織改編によってお客様の声を近くですくい上げられるようになり、2013年以降は措置対応までの判断が段違いに速くなりました。
「情報の吸い上げ精度が上がったことと役割を明確にしたことで、スピードが速くなりましたね。Hondaは品質部門の技術意識も高く、不具合があったらすごく深掘りしたがるんです。再発防止のために原因を突き詰める必要はありますが、あまり深掘りしすぎると解析日数が長くなってしまいます。
最終的な再発防止は、市場措置後に深掘りして確実に行えばよくなりました。そこで私たちが日数と解析のバランスを取り、メカニズムと対策品の見極めができた時点でリコールの届出をすることにしたので、かかる日数が短くなりました」
「部門が分かれて情報が充実したことも良かったですね。どんな情報が必要か、販売店の方に伝えやすくなりました。その結果、解析部に渡すレポートがより充実して、どのような状況なのか共有しやすくなったんです」
現在は市場情報の収集と措置提案を行う部門でそれぞれマネジメントを務めている3人。Hondaに入社してから長年解析に携わってきました。
「私は前職で半導体の開発をしていましたが、自分が開発したものが市場に出て貢献している実感があまり湧かなかったんです。できれば顧客や市場に近いところで仕事がしたいと考え、完成品を作るメーカーへの転職を希望しました。
Hondaに入社してからは希望どおりお客様の声に近いところで働けているので、転職して正解だったと思います」
「私は以前、オーディオメーカーで市場品質の監理業務に従事していました。扱うのは音響技術のみで電装領域で見ると非常に狭かったため、もっと大きなシステムや多数の部品を使って解析するような技術を身につけたいと考えたんです。
自動車は大きなシステムや多様な部品で構成されているので、自動車メーカーのHondaを選びました。入社してからは電装の知識を活かしながら幅広い部品の解析ができるようになったので、希望どおりの仕事ができています」
「私は前職がクルマの部品を扱うメーカーで、完成した製品がお客様にどのように使われていくかをなかなか目にする機会がありませんでした。よりお客様に近い立場で仕事がしたいと思い、Hondaに転職した形です。
品質部門は実際にお客様に製品をお渡しする仕事だからこそ、よりお客様の反応をダイレクトに感じて自分ごととしてとらえやすいと思います」
「120%の良品」を目指し、熱い想いでチャレンジする
Hondaに転職してきてから、3名は上司や創業者の言葉を受け、現在の仕事にも役立つ基本を身につけたと振り返ります。
「入社初日に当時の室長と話したとき、『とにかく嘘はつくな』と言われたのが印象的でした。『1件でも怪我をするおそれのある不具合を見つけたら、100億円を使ってでも対策しなさい』と言われましたね。すごく正直な会社だと感じましたし、新人が入ってきたら私もその意思を伝えています」
「本田 宗一郎の言葉で『120%の良品』というものがあります。全体の市場にとっては1%の不具合だったとしても、そのクルマを買ったお客様にとっては100%の不具合です。それはHondaで強く意識されている言葉だと思いますし、良品を届けようという意識が強い会社だと感じますね」
中途採用でHondaに入社した3名は、チャレンジを応援してくれるHondaの風土が気に入っています。
「今はテレマティクス*技術によりクルマからデータを吸い上げられるようになりましたが、これまではお客様や販売店からの情報を私たちが受け取り、それを第一報として不具合情報の解析が進行していくという流れでした。
私はテレマティクス技術を通じて得られる情報を品質情報として扱いたいと提案しましたが、これまでのやり方と違うので当初は反対意見があがったんです。品質データとして扱うと、データを得た以上解析をして対策しなければならない。それが本当にできるのか、不安な面もあったんですよね。
しかし、将来性や想いを伝えた結果、当初反対していたメンバーも含めて、周囲が後押ししてくれるようになりました。Hondaはテレマティクスデータを品質データのひとつとして扱うと国土交通省に宣言し報告もしましたが、他社に先駆けた試みでした。国交省の担当の方からも『お客様目線ですごくHondaらしいですね』と言われましたね」
*自動車などの移動体に搭載した通信システムを通じて、情報サービスをリアルタイムで提供すること
「テレマティクスサービスがはじまるとき、新たなサービスということもあり、機能の不具合が出た場合に開発部門がどのように対応すればいいかというノウハウがないという状況が発生しました。そのため、市場品質監理の私たちが関係する規定などを伝える必要があったんです。はじめて市場品質に関わる開発部門と円滑にコミュニケーションを取るために、新たなフローを部門連携で作り上げました。
市場品質を知らないとコネクテッドの不具合への対応が難しいのではないかと考えて細かなフローと使用する帳票を提案したことは、グループリーダーになってからの経験を活かしてチャレンジできた事例だと思います」
「ある不具合の対応で、エンジンのなかの構成部品を変えるという大きな修理をしなければならなくなりました。販売店からするとかなり大掛かりな作業をしなければならず、お客様も2〜3日は確実にクルマを使えなくなってしまうということで、次に同じような不具合が出たら作業を改善したいという話になったんです。
そこで、洗浄機と薬品を使って部品をきれいにすることで改善を図る取り組みを実施しました。対策品に交換するのがセオリーであり、開発部門からすると良品に変えてほしいという声があって非常にハードルが高かったのですが、研究所の方に協力してもらって検証や作業用のソフト作りを進めたんです。
最終的にトラブルなく市場に供給できましたし、お客様のために正しいもの、よいものを届けるという共通の目的があれば新たな取り組みに協力してくれる方がたくさんいる会社だと実感できました」
お客様の喜びにつなげるため、不具合ゼロを実現させたい
大きな責任を担う市場品質監理課ですが、メンバーは皆明るく仕事をしています。自分たちの責任やミッションを日々実感しているからこそ、前向きに仕事ができているのです。そんな市場品質監理課でどのような人と一緒に働きたいか、3名は次のように話します。
「なんでも前向きにとらえて、明るく楽しく元気よく業務ができる人にはうってつけだと思います。Hondaは自分から手を挙げてなんでもやりたい人には最適な会社だと思うので、そのような方に来てほしいですね」
「業務改革を率先して実行してくれる方と一緒に働きたいと思います。いかに早く的確な情報をもらって対応につなげるかがこの仕事の肝でもあるので、効率を上げることは大切です。効率化のひとつの手段として、HondaでもDXが取り入れられています。
市場品質監理課でもDXは取り入れていますが、まだ活用の可能性があると思っています。DXに限った話ではありませんが、改革するためのアイデアを発信して積極的に行動に移してくれるような前向きな方がいいですね」
「専門としてきた分野が違うメンバーが集まると、お互いいい刺激になって新しい発想につながるので、バックグラウンドは多様でいいと思います。
お客様に対する視点を持ったうえで、世の中やお客様のために何をしていくべきか一緒に考えられるような方であれば、Hondaで楽しく仕事ができそうですね。自分から発案したことを実行できる環境も整っているので、やりがいも感じられるでしょう」
市場品質監理課を支える3名は、自身や課のこれからについても真剣に考えています。
「製品が壊れなければお客様に満足していただける訳ではないと思うので、不具合の改善活動は今後もなくならないと思います。今はお客様から不具合の声をいただいてはじめて製品を直していますが、今後は今あるデータの活用や分析によって“お客様が気づいてらっしゃらない”潜在的な不満を拾い上げて改善することに価値が出てくると考えています。
そのために技術やDXを活用して、常に新たなものに取り組んでいく部門でありたいと思いますし、自分もそうありたいですね」
「私は広い技術を習得したいと考えてHondaに転職し、結果的に多くの部品に携わることができました。10年間は解析業務を行い、その後は官公庁対応や監視を行うグループのリーダー、その後は市場品質監理するグループのリーダーとなって、今は予算管理のチームリーダーをしています。
市場全体を見られるような多くの業務を経験してきたので、今後はそれをもとにして品質フロー全体を俯瞰し、Honda側から情報を積極的に取得できるよう改革していきたいと思います。最終的には、関係する方々やお客様の喜びにつなげられたらいいですね」
「お客様第一で考えると、世の中から不具合をなくしたいんです。源流改善をしっかり行い“不具合は出さない”というのを課として目指したいと考えています。
お客様は新車を買うとき、性能やデザイン、価格などを第一に考えますが、次またHonda車に乗りたいと思うのは品質が良かったときだと思うんです。そのため、品質部門として価値を見出して、市場で出る不具合をゼロにしたいと感じています。
できないと考えるのではなく、どうやってできるようにするかをまず考え、それを品質部門に置き換えて今後の業務として取り組んでいきたいですね」
お客様の近くで不具合対応というサービスを提供するからこそ、やりがいを持って働けている市場品質監理課のメンバーたち。
すべてのお客様に安心・安全を届けるため、これからも連携しながらそれぞれのグループを率いていきます。