二輪事業戦略

Hondaらしい魅力ある二輪車を世界中のお客様に

Hondaらしい魅力ある二輪車を世界中のお客様に

Hondaの祖業であり、ものづくりの原点である二輪事業は、75年にわたる歴史のなかで、世界各国・地域の多様な用途やニーズに応える数々の商品を生み出し、現在ではグローバルでの販売店数は約3万店、世界販売台数は年間2千万台規模となり、二輪業界でのトップメーカーへと成長しました。
カテゴリー別にグローバルで統一されたプラットフォームと最適な供給体制によって世界最大規模の生産量が支えられており、Hondaらしい魅力と高効率な事業が維持されています。
Hondaは今後も世界中のお客様にバイクのある豊かな暮らしを提供していきます。実用性のみならず、風を切って走る楽しさ、コミュニティづくりなどバイクライフの喜びを広げ、お客様の安全性・信頼性への期待に応えながら、二輪車市場の新たな可能性を切り拓き、リーディングカンパニーとして世界を牽引していきます。

二輪事業の収益ハイライト

二輪事業の収益ハイライト

電動車の需要拡大と地域格差

今後も若年層人口比率の高い国々を中心に、二輪市場は成長を続けることが見込まれています。Hondaはこの成長市場において、ICE(内燃機関)車の高い競争力と高効率な事業体質により、さらなる収益基盤の拡大を目指していきます。
一方で、世界最大の二輪車市場であるインドでは政策の後押しもあり、電動車の需要も急速に拡大しています。その他の国々でも、電力の安定供給や充電ネットワークの整備といったインフラ面では国ごとに異なる課題があり、政府の販売支援策や産業育成策の実行力にも違いがあるものの、長期的には電動車の拡大トレンドが継続すると考えています。Hondaはこのような状況を踏まえ、ICE車と電動車の拡大ペースを市場ごとに見極めながら、リソースの効果的な配分を行うとともに、躍進する電動新興メーカーに対しHondaの強みを活かしながら対応策を展開していきます。
先進国に加え、中国やアジア新興国でもFUNバイクの需要が拡大しています。バイクライフをより豊かにし、MT車の操る楽しさとAT車の快適なツーリング性を両立する新価値技術として投入した世界初二輪車用電子制御クラッチ「Honda E-Clutch」は市場から高い評価を得ており、今後適用モデルを拡大していく計画です。

環境と安全をリードして「より便利に・より自由に」

二輪車は、アジア地域をはじめとする新興国において、人々の生活を支える重要な移動手段であり、社会インフラとしての中心的な役割を果たしています。
そのため、安全・安心なモビリティ社会の実現に向けて、先進ブレーキやライダーの視認性/被視認性を高めるLED灯火器などの安全技術を採用した機種を拡大し、同時に安全運転教育をグローバルで継続していきます。
また、環境課題の解決に向けては、地域の特性に合わせ、ICE領域における燃費の向上や、ガソリンの代替燃料となるバイオエタノール燃料への対応技術の開発、バイオマス樹脂材料を使用した機種の拡大、地域性を考慮したカーボンニュートラル工場の実現など、パワーユニットの電動化以外においてもカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを加速させ、環境のフロントランナーを目指します。

電動化戦略の方向性

Hondaは、2024年を電動二輪車のグローバル展開元年と位置付け、電動二輪市場への参入を本格化します。2026年までを市場参入期、2026年から2030年を事業拡大期、2030年以降を事業本格拡大期と位置付け、戦略的に電動二輪車の市場投入を推進します。
直近では、電動二輪市場規模が急激に拡大するインドとASEAN各国を中心に、「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパックイー、MPP)」搭載のバッテリー交換式モデルを投入し、電動二輪市場への参入、販売拡大を目指します。2025年にはバッテリー固定式モデルの投入を計画しており、商品ラインアップの拡充を図っていく予定です。
電動商品は、ICE車で培った強みと電動車の魅力を掛け合わせ、Hondaならではの魅力的な電動二輪車を創出していきます。
生産、調達、開発においては、ICE車向けの既存アセットを活用するとともに、積極的な投資を推し進めます。3万店に及ぶグローバル販売網に加え、オンライン販売により顧客利便性を高め、電動化時代においても販売台数No.1を目指していきます。

中長期目標

2030年のグローバルでの電動二輪車販売台数の目標値として、2023年に公表した350万台から50万台増となる、400万台を目指します。この販売台数を実現するため、2030年までに発表済みの商品含めて約30の電動モデルをグローバル市場に投入していきます。
同時に、ICE車を含めた生産規模によるスケールメリットを活用したコストダウンの取り組みを加速します。完成車体コストの削減に向けて、バッテリーの仕様や調達および、車体部品のモジュールプラットフォーム化、生産・調達の最適化に取り組み、2030年までに完成車体コストを現行から約50%削減します。
これらの実現に向けて、2030年までに約5,000億円の投資を実施し、収益面においては、2031年3月期までに電動二輪事業単独でROS(売上高営業利益率)5%以上、2030年代には10%以上を目指していきます。

電動化における5つの戦略

①商品戦略

2024年には、MPPを2つ搭載したICE車110ccクラスに相当するモデルを投入します。IVI1などの先進装備に加えて、量販モデルの使い勝手を踏襲したインド専用モデルと、グローバルに展開するモデルをそれぞれ投入します。グローバルモデルについては、インドネシアを皮切りに、日本や欧州などでも順次発売していきます。

2025年以降は、FUNモデルや、プラグイン充電式のコミューターモデルなど、電動二輪車のバリエーションを増やしていきます。
これによりグローバルにおける電動二輪車のシェアを拡大し、電動二輪車のリーディングカンパニーを目指します。

  • ※1IVI:In-Vehicle Infotainment、車載インフォテインメント
SC e: Concept

SC e: Concept

②電動プラットフォーム戦略

短期的には、電動二輪車の開発に既存のICE部品の一部を活用することでスピーディーな商品開発を実現します。
長期的には世界各国のさまざまなニーズに対応した多様な電動二輪車を、スピーディーかつ効率良く市場に投入するために、プラットフォームの共有化など既存のICE車の開発で培ったノウハウを積極的に活用していきます。バッテリー、パワーユニット、そして車体をそれぞれモジュール化し、モジュールの共有化によってコストメリットを創出するとともに多様なバリエーションを展開していきます。

③コネクティビティ戦略

電動化で大きく進化する装備の一つが、コネクティビティです。ICE車で培ったHondaの強みに加え、コネクティビティによって快適性と利便性を拡充し、ソフトウエア技術によって車両を購入したあともOTA※2で進化する電動二輪車を提供します。
2024年に投入するバッテリー交換式モデルでは、充電ステーションの情報をわかりやすく提供する「提案型ナビ機能」を付加したIVIを搭載します。将来的には、ICE車と電動車双方のデータを活用し、車両の利用状況などからお客様の特性を理解することで、お客様一人ひとりに合わせた新機能や体験を提供するなど、Hondaならではのコネクティビティを進化させていきます。

  • ※2OTA:Over-The-Air、無線通信によるソフトウエアアップデート

④バッテリー戦略

電動二輪車の要ともいえるのがバッテリーです。二輪・パワープロダクツ事業を含め、アジアを中心としたセル調達とパック生産アロケーションを戦略的に展開します。
現行モデルに採用されている「三元系リチウムイオン電池(NCM)」に加え、「リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)」のセルを搭載したバッテリーシステムの開発を加速し、2025年発売モデルからの適用を目指しています。それぞれ得意とする領域、コストに違いがあるバッテリーのバリエーションを持つことで、さまざまなニーズに応える商品展開につなげます。
さらに2030年前後には、より進化した次世代バッテリーを搭載したモデルを投入します。供給の安定と商品魅力・コスト競争力の向上を実現し、さらなる電動二輪車の普及・拡販を図っていきます。

⑤調達・生産戦略

電動二輪車の生産においては、まず市場参入期(~2026年)には既存のICE事業のアセットを最大活用し、コスト競争力を確保します。次に事業拡大期である2026年以降は、2030年の販売台数400万台の実現に向けて、電動二輪車の生産に最適な専用工場での生産をグローバルで開始します。同工場では、モジュールプラットフォーム化技術などの導入により、組み立てラインの長さを既存工場に対して約40%削減するなど、効率化と自動化に取り組んでいきます。
調達においては、これまで完成部品で調達していたものを、加工、組み立て、物流などを内製化も含めて各工程を見直すことで、より競争力のある体制を構築し、 完成車1台当たりのコスト競争力の向上を実現します。

環境変化に柔軟に対応するための体質強化

原材料やエネルギー価格の高騰、環境や安全に対する社会的要請の高まりなど、市場環境が大きく変化するなか、Hondaは環境変化に柔軟に対応できる体質の強化に取り組んでいます。
世界の二輪市場シェアNo.1メーカーとしての規模を活かしながら、インド・インドネシア・ブラジルなど成長市場への軸足シフトを契機に、生産拠点や調達構造の再編、量産開発による経費削減と期間短縮、高コスト素材を使用しない触媒の開発などに取り組み、市場変化への対応力を強化します。
将来に向けては、部品の統合化や開発効率化によるバリューチェーン全体での効率化・スリム化を図り、さらなる事業体質強化に努めます。
加えてICEや電動共通部品においても、仕様や調達、生産技術の一括部品企画により、原価を低減する活動を継続していきます。
これらの取り組みを通じて高効率な事業体質を維持し、電動領域においてもリーディングカンパニーとなれるよう、さらに強固な基盤を築いていきます。