さらなる電動化の加速に向けた取り組み
Honda Mobile Power Pack
Honda Mobile Power Pack
カーボンニュートラル実現に向け、モビリティをはじめとしたさまざまな製品の電動化を推進する上で、「充電時間」「航続距離/稼働時間」「バッテリーのコスト」といった課題が存在しています。これらの課題を解決し、電動製品の普及を後押しするための一つのアプローチとして、着脱式可搬バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパックイー、MPP)」を開発し、自社製品にとどまらず、他社製品への適用も積極的に推進しています。
充電済みのバッテリーに簡単に交換できることで、充電待ち時間から解放され、航続距離や稼働時間を確保するために製品へ大量のバッテリーを搭載する必要がなくなります。また、MPPを異なる製品間で共用したり、バッテリー交換ステーションを通じてお客様同士でシェアしたりすることで、お客様のバッテリーコスト負担が低減されます。さらにバッテリーを有効活用し稼働率が上がることで、社会全体のバッテリー生産量の削減にもつながります。
また、カーボンニュートラルの実現には再生可能エネルギーの利用促進が必要ですが、再生可能エネルギーの多くは発電量が自然条件に依存し、電力供給を調整できない問題があります。しかし、バッテリー交換ステーションを電力ストレージとして活用し余剰電力を蓄電しておくことで、クリーンな電気をいつでもムダなくシェアできるようになり、再生可能エネルギーの活用促進が可能となります。
Hondaは、電動製品とエネルギーサービスをつなぎ「自由な移動の提供」と「再生可能エネルギーの利用拡大」に貢献する「Honda eMaaS(イーマース)」コンセプトを掲げており、「MPPの活用拡大」が主要な取り組みの一つとなっています。MPPと適用製品を開発するだけでなく、着脱式可搬バッテリーの標準化をリードし、その共用システムネットワークを構築することにより、自社製品のみならず他社製品でも幅広く活用していただき、エネルギーインフラとしての役割も果たしていくことを目指します。
Honda eMaaSの全体像およびMPP適用事例
エネルギーサービス
HondaはEVの普及を加速する上で、魅力的な商品を提供するだけでなく、エネルギーサービスを通じて、お客様にEVを安心して楽しく使っていただける環境を整えることも重要だと考えています。そのため、「電欠不安や充電の不便解消」、「自宅で充電できる便利さ」、「電気代の節約やいざというときの活用」、「CO2を出さないエコな生活の提供」の4つを、重要テーマとして捉え、事業開発を進めています。
また、EV普及と同時に、走行するエネルギー源をクリーンな再生可能エネルギーに置き換えることも重要です。社会全体で再生可能エネルギー導入を加速するには、不安定な再生可能エネルギー発電に対し、電力網を安定化させる需給バランス調整が必要となります。Hondaはこの課題解決のため、EVが電力網と融合し、電力需給調整に貢献するVGI(Vehicle Grid Integration)の研究に取り組んできました。そのノウハウを活かして欧州ではe:PROGRESS、米国ではSmart Chargeといったエネルギーサービス事業を展開しています。
現在も、家庭や外出先での充電サービスに加え、EVと家庭全体を連携させたV2H※1、電力網と連携させたV2G※2、そしてそこに再生可能エネルギーを届ける取り組みなど、多様なサービス開発を推進しています。また、その実現のため、志を同じくするパートナーとの協業も積極的に進めています。
2023年に発表した「IONNA」の設立は、北米における高出力充電網を整備し、お客様の電欠不安や充電の不便を解消することを目的とした自動車メーカー8社合同での取り組みです。都市部や高速道路に3万ヵ所以上の充電ポイントを整備し、高い顧客体験の提供を目指しており、2024年中に設置を開始する予定です。
同様に、EVを活用した電力網安定化に貢献するサービス提供を目的とし、BMWグループおよびフォード・モーターと「ChargeScape」を設立しました。自動車メーカーと、米国及びカナダに数多く存在する電力会社を結ぶ情報プラットフォームを提供し、台数規模による広範な電力調整力で電力網の安定化を目指します。また、その安定化を通じて再生可能エネルギーの活用を最大化するとともに、お客様の充電料金の負担軽減や電力会社のコスト削減にも貢献します。
日本においては、EVの総保有コストを低減する新たなモビリティサービスと、EVバッテリーを長期に活用する新たな電力事業の構築に向けて、三菱商事株式会社と合弁で「ALTNA(オルタナ)株式会社」を設立しました。ALTNA株式会社では、EVの充電エネルギーサービスであるV1Gスマートチャージを提供しお客様の充電コストを削減するとともに、将来的にはEVの蓄電池と電力網との間で充給電するV2Gサービスの提供を目指します。また、車載利用を終えたバッテリーを回収して電力網用の蓄電池として活用し、調整力を供給することで、希少資源の国内循環と、さらなる再生可能エネルギーの普及拡大へ貢献していきます。
Hondaは、EVをモビリティとしてだけでなく、お客様や社会にとってのエネルギーシステムの進化をもたらす商品と捉え、エネルギーマネジメントサービスの開発を進めていきます。
- ※1V2H:Vehicle to Home、住宅にEVから電力を供給する技術
- ※2V2G:Vehicle to Grid、電力網からEVへの充電のみならず、EVに蓄えられた電力を電力網に供給する技術
- ※3V1G:単方向の充電制御、電力網からEVへの充電