危ない場面に出くわしそうになるマモル君とマイちゃんを「ちょいとお待ち!」と呼び止め、安全な道路の渡り方などをわかりやすく伝えてくれる「おまちばあちゃん」の紙芝居──。
これは交通安全指導員の方が、その地域に暮らす方のために作った交通安全プログラムの一例です。地元の話題を取り入れたり、無意識のうちに取りがちな行動をテーマにしたりすることで、交通安全を「自分のこと」として実践していただけるよう、様々な工夫が凝らされています。

高齢者の方の「横断」に危険が迫っている

地域の安全に貢献する交通安全指導員の方々と一緒に、いまHondaが取り組みたいと考えているのは、高齢者の歩行中の事故を減らすための対策。
なぜなら、交通事故の死者数は平成13年以降減少しているものの、近年は全体の死者数の約半数を65歳以上の高齢者が占めており、中でも歩行中の事故が約半数にも上るからです。
歩行中の高齢者の事故、その内訳を見ると、76%が横断中の事故です。より詳しくデータを見てみると、「渡り始め」よりも「渡り終わり」の方に負傷者や死者が集中していることがわかります。
Hondaが目指す「交通事故ゼロ」の社会を作るためには、高齢者の方の「横断」に迫る危険を取り除くのが急務なのです。

大事なのは「自分で体験してもらう」こと

横断で事故が起こる原因はさまざまですが、「渡れるはずだと思ったが、横断に時間が掛かって渡りきれなかった」「クルマが来ていないのを確認したつもりだったが、実際は確認できていなかった」といった、「思い込み」によるものが多く見られます。
この事から「『自分が思い込みをしている』ということを体験によって自覚してもらう」ことが重要だと考えました。

「このくらいなら渡れるだろう」そんな思い込みの危なさ

そこで制作することにした交通安全教材が、道路横断シミュレーションの映像です。映像は、幅10m、片道一車線の道の向こう側からクルマが走ってくるというものですが、特徴となるのはその使い方。
映像をプロジェクターでスクリーンに投影し、プログラムに参加する高齢者の方には、合図と同時に5m横からスクリーンに向かって歩き始め、道路を「横断」してもらうのです。
横断を始めた時点でクルマは120m離れていて、60km/hでこちらに向かってきています。「このくらいなら渡れそう」と考える方も多い状況ですが、一般的な高齢者の方の歩行ペースは「1メートルあたり1秒」。対して60km/hで走るクルマが120mを進むのにかかる時間は7秒。10mの道を渡りきることはできず、道路の真ん中あたりでぶつかってしまうことになります。
さらに、クルマのドライバーからは歩行者がどのように見えているのかが分かる映像と組み合わせることで「危険」を「安全」に体験していただき、日常の何気ない行動がいかに危ないものなのかを知ってもらおうというのです。

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