SCENE 86住宅街の暗めの道コンビニの前を通過するところです。
夜間、あなたは住宅街の暗めの道を走っています。
左側にはコンビニがあり、路地から赤い車が出ようとしています。
前方には自転車が走っており、対向車が来ています。
この時、あなたは何に注意しますか?
交通事故死者数で最も多いのは「歩行中」で、
「65歳以上」が7割を占める!
令和5年の交通事故死者数(2,678人)のうち、最も多いのは「歩行中」の死者数(973人)で、全体の約36%を占めます。しかも、歩行中死者数は令和3年(941人)までは減少傾向でしたが、ここ2年増加しています。歩行中死者数を年齢層別で見ると、「65歳以上(687人)」が最も多く、全体の7割を占めています。
歩行中の事故で多いのは「横断中」で、特に65歳以上の高齢者では「横断歩道以外横断中(約51%)」と「横断歩道横断中(約23%)」を合わせると7割を超えており、高齢者が道路を横断する際に事故に遭うケースが非常に多いことがわかります。
そして、これらの横断中事故における第1当事者(過失割合が大きい当事者)の多くは乗用車です。つまり、今回のような事故は乗用車を運転する一般ドライバーにとって最も注意すべきケースと言え、高齢者が道路を横断してくることを予測して、周囲への注意や安全な速度にドライバーは配慮する必要があります。
(資料=警察庁交通局)
65歳以上の歩行者は「買物」や「散歩」で事故に。
散歩では「夜間」が6割近くを占める。
65歳以上の歩行中死者数を通行目的別で調べると「買物」と「散歩」が多く、全体の4割近くを占めます。「散歩」を昼夜別で見ると夜間が6割近くと、昼間より多くなっています。夜間事故に遭った人(62人)の反射材着用状況を調べたところ、「なし(60人)」「あり(0人)」「不明(2人)」と、反射材を着用していなかった人が圧倒的に多くなっています。
今回、右側から渡ってきた歩行者は反射材を着用していなかったうえ、対向車のライトで眩惑され、歩行者の姿はほとんど認識できませんでした。このように対向車のライトで歩行者が見えづらくなることは「蒸発現象」と呼ばれています。蒸発現象とは、夜間対向車のライトに眩惑され、横断してくる歩行者や自転車などが一時的に見えにくくなる現象です。夜間の歩行者事故の原因となりやすく、歩行者の服の色や反射材の有無で、さらに危険が増します。夜間、対向車とすれ違う際は、ライトに眩惑されないように目線を少しずらし、横断歩行者がいる可能性を考えて、速度を落として走るようにしましょう。
(資料=警察庁交通局)
「横断歩道」でも歩行中事故は発生!
対向車が横断歩道前で停止しているときは注意。
横断中事故の発生場所は「横断歩道以外」が最も多いものの、「横断歩道」でも起きています。横断歩道では歩行者が優先されるため、横断歩道がある場合、ドライバーは歩行者の存在に注意を払う必要があります。一方、歩行者側には優先意識があるため、ドライバー側の見落としが事故に直結する危険性があります。
横断歩道を渡ろうとしている歩行者等がいたら、止まって道を譲る必要があるのはもちろん、もし横断歩道の手前で対向車が減速したり、停止したりしている場合、「歩行者がいるのかもしれない」と考えて、不用意に通過しないことが大切です。
なお、道路に図のようなひし形の路面標示があることがあります。これは“横断歩道または自転車横断帯あり”を示す路面標示なので、これを見たら前方に横断歩道等があって歩行者等が横断している可能性を考えて、速度を十分落として走るようにしましょう。特に雨天時やカーブの先に横断歩道がある場所では、横断歩道の発見が遅れがちなので、この路面標示に十分注意しましょう。
横断歩行者からの視点上は道路を渡ろうとしている歩行者から見たものです。車のライトは明るいため、ドライバーから自分の姿はよく見えていると思いがちですが、運転中のドライバーはあなたがいる道路の右側ばかり見ているわけではありませんし、漫然運転や脇見運転をしている危険性もあります。とくに夜間は暗くて見えづらいうえ、対向車のライトに眩惑されて、歩行者を見落とす危険性があります。
歩行者側も夜間は車の速度や距離を判断するのが難しくなり、たとえ車が遠くに見えても、実際の距離は思ったより近く、すぐ接近してしまう危険性があります。車が見えたら不用意に渡らず、通過してから渡るようにしましょう。
令和5年の歩行者の法令違反別事故件数(1当・2当合計)でも、「横断不適」が2,205件、「走行車両の直前直後横断」が1,249件と、歩行者側の危険な横断による事故が多く起きています。
また、黒や茶などの暗い色はもちろん、昼間は目立つ赤や青も夜間は沈んで見えづらくなるので、夜間、買物や散歩する際はドライバーからより認識されやすいように明るい白っぽい服を着たり、反射材を身に付けたりすることも大切です。
(資料=交通事故総合分析センター)