SCENE 85渋滞路での右折右側にあるコンビニに右折して入るところです。
あなたは片側1車線の道を走っています。
対向車線は交通量が多く、渋滞しています。
右側のコンビニに寄るためウインカーを点けて停止していると、
対向車がパッシングして道を譲ってくれました。
この時、あなたは何に注意しますか?
四輪車×二輪車の事故で最も多いのは、
四輪が右折、二輪が直進の「右直事故」!
2023年に四輪×二輪の事故は3万5,116件発生しており、そのうち四輪が第1当事者(事故の過失が重い側)となったケースは3万865件と9割近くを占めています。どのような事故が多いのか行動類型別で見ると、四輪が右折、二輪が直進する形態の「右直事故」が8,793件(約28%)と最も多くなっています。
右直事故の多くは交差点で起きますが、今回のように渋滞車列を横切って右折する四輪車と二輪車が衝突する事故も多く、二輪車の運転者が死傷するケースが少なくありません。
事故原因にはドライバー側の安全確認不足が多いため、最も注意すべき事故事例の一つと言えます。
(資料=交通事故総合分析センター)
渋滞車列を横切って右折する場合、
「サンキュー事故」に注意!
渋滞中の道路では対向車が停止して右折を促してくれることがありますが、不用意に曲がると事故の危険があります。道を譲られて相手に「ありがとう」とお礼をしてから曲がることから、このような事故は“サンキュー事故”と呼ばれ、渋滞時の右直事故の典型的な事例です。
この事故の危険な点は、対向車からパッシングや手による合図で右折を促されると、「曲がれる」と思って、そのまま安全確認せずに曲がってしまう点です。対向車のドライバーはあくまでも右折を促しているだけで、安全な右折まで保証しているわけではありません。サンキュー事故のことを想定し、必ず「車の陰からバイクや自転車が来ているかもしれない」と考えることが大切です。
譲られても急いで曲がらない!
二輪車を予測して、少しずつ慎重に曲がる。
サンキュー事故がさらに危険なのは、譲ってくれた相手に気兼ねして、早く曲がろうとしてしまう点です。たとえサンキュー事故のことを知っていても、つい急いでしまい安全確認が不十分になります。しかし、対向車線は渋滞中なので慌てて曲がる必要はありませんし、相手も譲ったことで事故が起きるのは避けたいはずです。「譲ってくれたのだから、安全に曲がろう」という気持ちで、ゆっくり慎重に曲がりましょう。
譲った車両がミニバンやトラックのように車体が大きいと死角が大きく、目視できる位置まで一気に車を進めてしまいがちですが、そうすると二輪車の進路を塞いで事故に直結します。
このような場合は図のように少しずつ車を進め、まず二輪車の進路を塞がない位置で停止し(図@)、次に車の先端を進路に少し出した位置で停止します(図A)。ここで停止すれば、まだ進路を完全に塞いでいないので、相手に注意を促し、相手が停止したり、歩道側に避けたりすることができます。この位置でバイクのクラクションや走行音がしなければ、そのまま目視できる位置まで車を進め、安全を確認してから曲がります(図B)。
なお、対向車が自分ではなく、右側から出る車などに道を譲ることもあるので、できるだけ対向車のドライバーの目を見て、本当に自分に譲ってくれたのか確認することも大切です。
二輪車からの視点
上は車両の側方を通過しているバイクから見たものです。渋滞で車が停止していると、車の側方をすり抜けて走るバイクが少なくありませんが、そのような「すり抜け」は道交法違反に当たることがありますし、事故の危険性も高くなるので注意が必要です。今回のように車両の間から対向車が右折してくるケースは、お互いの姿が直前まで見えないため、ブレーキ等の回避操作が間に合わず、事故の危険性がとても高くなります。
左側に店舗や路地など車の出入りがある場所を通過する際、さらに渋滞車列に車が曲がれそうなスペースがある場所では、対向車が右折してくる可能性を予測し、速度を十分抑えて通過します。
なお、完全に停止している車の左側方をすり抜けることは基本的に問題ありませんが、動いている車を左から追い越すと「左追い越し禁止」の道交法違反になります。また、車が停止していても、速度を出してすり抜けを行えば、車が急に左折したり、車のドアが急に開いたりした際に対応できません。「安全運転義務違反」に問われる可能性もありますし、場所によっては、車列の間から歩行者が横断してくることもあります。「すり抜け」は事故の危険性が高いので、できるだけ控えるようにしましょう。
また、図のように歩道がなく白線で区切られた路側帯がある場合、そこを二輪車は通行できません。すり抜け時に白線の内側を走行すると違反になるので注意が必要です。