SCENE 84雨天時の横断歩道雨が降る夕方、横断歩道を通過しようとしています。
夕方、あなたは駅前を抜ける道を走っています。
雨が強く視界が悪くなっています。
信号のない横断歩道の手前で停止しており、
歩行者が渡り終えるので発進しようと思います。
この時、あなたは何に注意しますか?
歩行者の横断中事故のうち、
「横断歩道での事故」が6割!横断歩道は歩行者が安全に横断するために設置されているものですが、その横断歩道で事故が多く発生しています。2023年の横断中事故のうち、車両側の運転者が第1当事者(事故の責任が重い側)になった事故は2万1,586件。そのうち最も多かったのが横断歩道での事故(1万3,093件)で、約61%を占めます。
事故の原因となった運転者側の法令違反を調べると、「歩行者妨害等(8,692件)」と「安全不確認(2,327件)」が多くなっています。
暗くなり始める夕方は視認性が低下するうえ、雨天時には窓の水滴やワイパーの動きによって視界が妨げられます。雨が強くなると水滴が多くなり、周囲の車が巻き上げる水煙によって視認性は一層悪化するため、歩行者の見落としや発見の遅れが起こりやすくなります。横断歩道に近づく際はそんな危険性を考えて、「歩行者を見落としていないか?」「さらに渡ってくる人がいるかも?」という認識で運転するようにしましょう。
(資料=交通事故総合分析センター)
雨天時はワイパーの拭き残しで死角が増える。
左右から渡ってくる歩行者を見落としやすい!今回のように横断歩道で安全確認する際、フロントガラスとサイドウインドーの間にあるピラー(柱)が死角をつくり、左右から渡ってくる歩行者を見落とすことがあります。さらに雨天時は、フロントガラスの両側にワイパーが拭き取れない部分があり、そこに水滴が残るため、さらに死角が増えます。
今回、右側の歩道から横断歩道を渡ろうとする女性がいましたが、問題の場面ではピラーの死角に入り、女性のスカートと足元しか見ることができませんでした。事前に左右の歩道など周囲をよく見て、横断歩道を渡ろうとする人がいないか、チェックしておくことが重要です。
なお、ワイパーのゴム部分などが古くなると、拭き取りが悪くなり、拭き残しが生じます。視認性も低下するので、定期的に点検して交換することが大切です。
夕方の雨天時は被視認性も低下。
早めのライト点灯で歩行者に注意喚起を!雨天時は歩行者の視認性も低下します。とくに雨が強かったり、風が強かったりすると、傘を目深にさして前方が見えづらくなり、雨音で車の走行音などもかき消されます。また、濡れないように急いでしまうことが多いため、横断歩道の手前から斜め横断したり、車が近づいていても無理に渡ったりするなど慎重さを欠いた行動も増えます。その結果、ドライバー側の見落としや発見の遅れが事故に直結してしまうので、より注意が必要です。
また、横断歩道での事故が発生した時間帯を調べると、16〜19時が多くなっています。夕方から夜間に差し掛かるこの時間帯は、目が暗さに慣れておらず視認性が低下するので、ヘッドライトを早めに点灯して速度を抑えて走ります。ライトを点灯すれば、歩行者などが見えやすくなるだけでなく、歩行者や周囲の車両からもこちらがよく見えるため、相手に注意を促すことができます。
なお、2020年4月から販売されている乗用車(新型車)には、周囲の明るさを検知して自動的にヘッドライトを点灯/消灯する機能「オートライト」の搭載が義務付けられていますが、周囲の明るさやオートライトの設定によって点灯しないこともあるので注意しましょう。
横断する女性からの視点
上は横断歩道を渡ろうとしている女性から見たものです。こちらからは停止している車はよく見えるので、ドライバーからも自分のことがよく見えていると思いがちですが、ドライバーは別の歩行者のことを見ている可能性があります。さらに雨天時はガラスの水滴などでドライバーの視認性が低下しているので、あなたの存在を確認できているとは限りません。
一方、歩行者も雨天時は濡れないように先を急いで無理に横断したり、雨が強いと傘を目深にさしたりして視界も悪くなります。道路を渡る際はお互いにそのような危険があり、ドライバーから見落とされている可能性を考えて、車の停止をしっかり確認して慎重に渡ることが大切です。ドライバーのみでなく、歩行者も安全意識を高く持つことで、事故のリスクを減らすことができます。
また、雨天時の夜間は黒や紺など暗めの色は背景にとけ込んでしまうので、できるだけ白や黄色などの明るい服や傘を身に付けるようにするといいでしょう。