SCENE 79住宅街の生活道路公園の前を通過しようとしています。
あなたは住宅街の生活道路を走っています。
道路の左右には、下校時の小学生や
幼児を連れた母親の姿が見えます。
左側に公園があり、女性が自転車を止めようとしています。
その先から小学生が出てきて道路を渡りました。
この時、あなたは何に注意しますか?
減少幅が小さい「生活道路」での交通事故。
時速30q以下なら、死亡事故率が大幅に低下!生活道路は「主として地域住民の日常生活に利用される道路で、自動車の通行よりも歩行者・自転車の安全確保が優先されるべき道路」とされています。住宅街にあるような片側1車線ほどの狭い道が多く、横断歩道もないところが多いうえに見通しの悪い路地もあるため、歩行者や自転車との事故の危険性も高くなります。近年、交通事故件数は減少傾向にあるものの、幹線道路(幅員5.5m以上)と比べて生活道路(幅員5.5m未満)の事故件数の減少幅が小さくなっています。
令和元年の生活道路での死傷事故件数(人口10万人あたり)を年代別に調べたところ、最も多いのが小学生(15.2人)で、次が75歳以上(10.5人)でした。こどもや高齢者は周囲を気にせず道路を横断したり、道路に飛び出したりする危険性もあるため、見かけたら速度を落とし、警戒して走行しましょう。なお、生活道路での速度別の死亡事故率(令和2年)を調べると、車の速度が30km/hを超えると1.7%になるのに対し、速度が30q/h以下では0.34%と、約5分の1と大幅に減少することがわかっています。速度が低いほど歩行者や自転車を発見しやすく、飛び出された場合の回避操作にも余裕が生まれるため、生活道路や通学路を走行する際は30km/h以下を意識することが死亡事故防止につながります。
(資料=国交省Webサイト「生活道路の交通安全対策ポータル」)
小学生の歩行中死傷者数が多いのは、14〜17時台。
とくに通学路では、こどもとの事故に注意!令和4年の小学生の歩行中死傷者数(330人)を通行目的別で見ると、下校中(86人)が最も多く、遊戯(68人)、登校中(43人)と続きます。時間帯別でも、下校中と遊戯に当たる14〜17時台が220人と最も多くなっています。学校からの帰り道や帰宅後に友人と遊んでいるときは緊張が緩み、不用意な行動も多くなりがちです。つまり、問題のような状況は、小学生の事故で最も多いケースと言えます。
また、問題場面をみると「学校、幼稚園、保育所などあり」を示す警戒標識がありました。小学生が歩いていることからも通学路であることがわかるため、こどもの急な飛び出しなどに備える必要があります。通学路によっては、時間で車の進入を規制しているところもあります。規制がなくても、事故を避けるため、こどもが多い登下校時は別の道へ迂回することも検討しましょう。
なお、地域によっては「ゾーン30」や「ゾーン30プラス」(※)といった、生活道路における歩行者や自転車の安全な通行を確保することを目的とした交通安全対策を行っている区域もあります。
※「ゾーン30」は、警察が最高速度を30km/hに規制する区域。「ゾーン30プラス」は、さらに道路管理者が車両の速度を抑制したり、時間帯等で車両の進入を抑止したりするための物理的デバイス(ハンプや昇降ポールなど)を設置する区域。
(資料=交通事故総合分析センター)
低学年のこどもは衝動的な行動を取りがち。
判断力も未熟なので、急な飛び出しに注意!歩行中の交通事故死傷者数(令和3年、人口10万人あたり)を年齢別で調べると、最も多いのが7歳です。また、小学校低学年の法令違反では「飛び出し」が多くなります。低学年のこどもは興味を惹かれたものに衝動的に反応してしまい、1つのことに注意が向くと周りが見えなくなる傾向があります。
問題の場面をよく見ると、左側に止められた自転車のサドル付近に手を上げているこどもが見えます。道路の反対側(右側)には別のこどもの存在もあります。それが兄弟や遊び仲間だったりすると、反対側に早く行きたい気持ちが強くなって周囲へ注意を払うことができず、安全確認を忘れて道路に飛び出してしまうことがあります。また、低学年のこどもは車の速度や距離から安全に横断できるかを判断する力が不十分なうえ、大人に比べて視野が狭く、危険が迫っていることに気付かないケースもあります。
一度こちらを見て立ち止まったとしても、そのまま渡り始めてしまうことがあります。また、「手を上げれば、車は止まってくれる」と考えてしまうことも少なくありません。「こちらを見ているから大丈夫だろう」と安易に思い込まず、こどもの動きから目を離さず、急な飛び出しに備えてすぐに止まれるように徐行しながら通過することが大切です。
(資料=交通事故総合分析センター)
こどもからの視点上は道路を渡ろうとしているこどもから見たものです。車は比較的よく見えていることからドライバーからも自分がよく見えていると思いがちですが、こどもの身体は自転車の陰に隠れて見えにくくなっているため、ドライバーから十分認識されていない可能性があります。
道路を渡るときは、車道にはみ出さない所で一度止まり、ドライバーからよく見える位置に一歩踏み出し、手を大きく上げて渡る意思をドライバーに伝えましょう。そして、右左右を観て車やバイクなどが来ていないか確認しましょう。手は右手より左手を上げるほうが右側の視界が遮られず、近づいてくる車がよく確認できます。ただ、手を上げたからといって車が止まるのを確認せずに渡り始めるのはたいへん危険です。ドライバーが見落としていることもあるからです。とくに今回のように道路の反対側にもこどもがいる場合、ドライバーの注意はそちらに向いている可能性があります。できるだけドライバーの目を見て、目と目を合わせてアイコンタクトをとって、必ず止まってくれたのを確認してから渡りましょう。
なお、低学年のこどもの歩行中事故死傷者数は、入学当初の4月より5月、6月のほうが多くなる傾向があります。入学当初は保護者といっしょに登校するなど安全に気を配っていますが、5月以降、少しずつ1人で行動することが増え、行動範囲も徐々に広がっていく一方、単独行動に慣れていないため事故が増えると考えられています。通学に慣れた頃、油断して事故に遭わないよう、改めてこどもの行動範囲を把握し、どこに危険があるのか、親子で確認しながら安全に行動できる方法を話し合っておくことも大切です。