交通エコシステム
刻々と変化する交通環境に適応するための活動と技術開発
交通エコシステムは、道路を利用する人々やモビリティが相互に関係し合いながら、交通の流れをつく り出す概念です。交通環境は、大雪などの天候の変化、観光シーズンにおける混雑、またはラッシュアワー の渋滞など、さまざまな要因により常に変化していますが、Hondaは、これらの状況下で事故を防ぐため に、交通参加者の動きや状態を踏まえながら、それぞれが円滑に連携できるような取り組みが必要である と考えています。
同時にこうした取り組みは、人々の身体の安全をまもるだけでなく、交通社会全体の質 にも関与することを認識しています。 Hondaは、自由に移動できる社会を目指していますが、それには安全であるだけでなく、人々が移動し たいと思えるような温かさが感じられることが大切です。そして、その社会を築くために、人の意思を介 在させないまま技術により自動的に安全を創り出すのではなく、人々の意思を原動力とし、技術を用いて 交通参加者が本来持っているお互いを尊重する意識に働き掛け、協力しやすくなるよう後押しすることで 安全を創り出せるようにしたいという想いがあります。
そのため、Hondaにおける交通エコシステムの 取り組みは、二輪車や四輪車、自転車、都市型モビリティなどさまざまなモビリティや、子どもから高齢 者までさまざまな人が行きかうなかで、すべての交通参加者がお互いに協力して、交通をスムーズにし安 全を高めていく仕組みづくりと位置付けることができます。
これまでの歩み
1998年、Hondaは車から収集した走行データを活用し、安全運転を支援する通信機能を備えたカーナビゲーションシステム「インターナビ」の提供を始めました。その後、この「インターナビ」で得られた急ブレーキ情報などを解析し、Hondaのホームページ上であらかじめ事故多発エリアなどを知ることのできる「SAFETY MAP」のサービスも進め、さらにはリアルタイムに危険箇所を地図上に表示する「Honda Drive Data Service」として、防災、交通 事故防止などの社会課題解決につながるデータサービスを開始するに至りました。そして2020年には、Honda車専用車載通信モジュール「Honda CONNECT」を各車に順次適用を開始し、ドライバーのカーライフをより安心、快適にするサービスを提供しています。こうした取り組みは、海外でも地域特性にあわせ展開されています。
主な技術・活動
2030年に向かって、スマートフォン等の通信端末や、IoT化した設備・モビリティが普及、進化することにより、交通環境を構成するインフラは高度に発展していきます。Hondaは、こうしたインフラの発展と併せ、交通安全のための最適な技術開発や活動を進めています。
新世代コネクテッド技術 「Honda CONNECT」
自動車のデータを、もっと皆様のお役に 「Honda Drive Data Service」
将来に向けて
安全・安心ネットワーク技術
集中力の低下など運転中の人のリスク状態を推定、事故の予兆として早期に察知し、周囲の交通参加者へ通信を活用してこれらの情報を提供することで、事故リスク発生前に各自で備え対処するためのサポートを行う「安全・安心ネットワーク技術」の開発や、産官学連携によるインフラ基盤づくりなど社会実装に向けた取り組みを進めています。この技術により、交通弱者を含めたすべての交通参加者は、相手の動きに注意を払いつつ、協調した行動を取ることができるようになり、事故を未然に防ぐことが可能となります。
安全・安心ネットワーク技術
<3つの要素技術>安全・安心ネットワーク技術は、「人特性理解」「予知予測」「共話型コミュニケーション」の3つの要素技術から成り、現在、それぞれの研究開発を進めています。
人特性理解
バイタルセンシングなどの技術でドライバーの状態をリアルタイムに把握することで、運転行動への影響を統計的に解析、具体的なリスク要因を体系的に把握する
予知予測
デジタルツイン技術と総合リスク判断アルゴリズムで、交通事故発生の予知予測を行う
共話型コミュニケーション
交通参加者が、事故の発生前に構えることができるように潜在的に潜むリスクの理解を促進する
<実証実験>交通社会での安全・安心ネットワーク技術の円滑な導入を実現するため、さまざまな検証も実施しています。
内閣府とのプロジェクト
「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期/スマートモビリティプラットフォームの構築/リスクの事前通知による交通事故の未然防止支援の研究開発」に参画、Hondaは、交通弱者の安全を実現するために必要な交通事故の未然防止支援策の検討に向けたユースケース検証を計画しています(2023年10月・日本)
地方自治体とのプロジェクト
ICT(情報通信技術)を手段としてさまざまな分野に活用し、地域課題の解決や市民生活の利便性向上を実現するスマートシティに向けた取り組みに参画、Hondaは、社会受容性の検証を計画しています(2023年10月・日本)
企業とのプロジェクト
ソフトバンク株式会社と連携し中日本高速道路株式会社が新東名高速道路の建設中区間で行う「高速道路の自動運転時代に向けた路車協調実証実験」に参画し、ユースケース検証を実施しています(2024年6月・日本)
安全・安心ネットワーク技術は、社会実装に向けて、2020年代後半に標準化し、2030年からグローバルで展開することを目指しています。