若年ドライバーの安全運転をサポート

キービジュアル
日付:2022年09月

American Honda 
北米安全戦略・技術計画 責任者
ブライアン・ハート

広大な国でありかつ州の数も多く、州ごとに交通法規が異なるため、様々な交通環境が生まれている米国。
今回は、その米国での活動内容をAmerican Hondaブライアン・ハートより紹介します。

課題は若年ドライバーへの安全運転教育

クルマは安全技術が進歩してきているにも関わらず、依然として毎年4万人のアメリカ人が交通事故で亡くなっており、その約3分の1が25歳未満の若年層であることが分かっています。若年層は新車を買う余裕がなく、比較的安価な古いクルマを購入する傾向があります。それらのクルマの多くは衝突被害軽減ブレーキなどの最新の安全機能を装備していないため、万が一の事故の時には、重大な負傷につながるリスクがより高くなっています。こうした背景からAmerican Hondaでは、若年ドライバ―への教育に焦点を合わせ、運転技術の向上や安全運転マインドの確立を図り、また、注意散漫な運転やスピード違反などの危険な行動を減らしたいと考えています。

  • 交通教育センターで使われているCIVIC。スキッドカーと呼ばれ、雪道や凍結した路面で起きる横滑りなどの状態を作り出すことができる。
    交通教育センターで使われているCIVIC。スキッドカーと呼ばれ、雪道や凍結した路面で起きる横滑りなどの状態を作り出すことができる。
  • NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration:米国運輸省道路交通安全局)から公表された年齢別の死亡事故割合を示すグラフ。青が男性、オレンジが女性、黄緑が男女の合計での免許保有者10万人当たりの死亡者数をそれぞれ示し、中でも15~20歳、21~24歳の死亡者数が多いことが確認できる。
    NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration:米国運輸省道路交通安全局)から公表された年齢別の死亡事故割合を示すグラフ。青が男性、オレンジが女性、黄緑が男女の合計での免許保有者10万人当たりの死亡者数をそれぞれ示し、中でも15~20歳、21~24歳の死亡者数が多いことが確認できる。

ドライバーの安全性向上のためのさまざまな連携

また、オハイオやインディアナにある自動車工場では従業員やその家族を対象としたクルマの安全運転教育プログラムを制作しました。この取り組みを起点として、アメリカにある他の事業所でもこうした安全教育活動が波及していくことを願っています。

これらは地域限定の小規模なプログラムのため、より多くの若年ドライバーに安全運転教育活動を将来的に届けていける方法と連携先を現在模索しています。2021年末、Hondaはドライバーの安全性向上のためのアイデアを募集し、若年ドライバーを対象として様々な取り組みを行っている27の非営利団体を選定しました。その後2022年にこれらの組織に資金援助を行いました。例を挙げると、資金援助によってドライビングシミュレーターを導入できている組織もあります。導入されたドライビングシミュレーターを活用し、若年ドライバーたちに潜在的な危険を安全に体験してもらい、安全意識の向上に取り組んでいます。こうした取り組みがどのような効果があったのかを彼らの活動から学び、私たちの活動に活かしていきたいと考えています。

  • インディアナの工場でSTART (Safety Training Awareness and Responsibility for Teens)と呼ばれる安全運転トレーニングを企画したチーム
    インディアナの工場でSTART (Safety Training Awareness and Responsibility for Teens)と呼ばれる安全運転トレーニングを企画したチーム
  • American Hondaではクルマ・バイクの教育以外にも、ATV(All Terrain Vehicle)やSxS (サイド・バイ・サイド:2名または4名が乗車できるオフロード車両)の教育も行っている。写真はATVの教習風景。
    American Hondaではクルマ・バイクの教育以外にも、ATV(All Terrain Vehicle)やSxS (サイド・バイ・サイド:2名または4名が乗車できるオフロード車両)の教育も行っている。写真はATVの教習風景。

「2050年に全世界でHondaの二輪車・四輪車が関与する交通死者ゼロを目指す」にあたって

長年安全工学に携わってきた私は、2050年までに交通事故死者ゼロを目指すという社長の発表に興奮しました。これは歩行者を含む全ての道路利用者に焦点を当て、2003年にAmerican Hondaがリリースしたスローガン「Safety for Everyone」と合致しています。達成困難な目標のように思われるかもしれませんが、Hondaのグローバルチーム全体に将来の明確な目標を与え、Hondaの各組織間のより強固な連携を促進すると思います。

Hondaの目標は、世界保健機関(WHO)など国際的な機関が設定した目標とも一致しています。Honda単独で取り組んでいくのには限界があるので、こうした機関と呼応・連携し取り組んでいくことは重要です。そしてこの目標達成に向けては、自動車製造業関連企業・団体および連邦・地方政府機関とも連携していくことが必要だと思っています。しかし、そうした連携が進んでいくのを2050年まで待っているだけではいられません。そこで私たちは、若年ドライバー教育に取り組むための準備を現在進めており、ドライバーの行動にすぐに良い影響が出ることを最も楽しみにしています。私たちの取り組みが上手く進めば、若い人たちを一生安全なドライバーにすることができると思います。

American Honda ブライアン・ハート Bryan Hourt

American Hondaブライアン・ハートBryan Hourt

1996年1月、車の衝突実験などを行う安全分野のエンジニアとしてキャリアをスタート。
2017年に北米安全戦略・技術計画の責任者として安全分野を担当。